サーバ仮想化技術はどう使えるのかサーバ仮想化技術の可能性と限界(2)(1/2 ページ)

前回は、サーバ仮想化技術の概要を紹介した。サーバ仮想化技術には、一般的なサーバ統合効果のほかにも多くのメリットが存在する。今回は、こうしたメリットを詳しく紹介する。

» 2006年03月14日 12時00分 公開
[松本 健(野村総合研究所 情報技術本部技術開発部 上級テクニカルエンジニア),@IT]

 サーバ仮想化技術は、サーバ統合によるコスト削減・システムリソースの有効活用ニーズを背景に、サーバリソースの柔軟な利用を行うために発展してきた技術である。

 これらを実現するためには、単純なシステムリソースの仮想化だけではなく、動的ワークロード管理に関する技術も必要である。ここではそうしたサーバ仮想化技術のさまざまな活用方法について考えてみる。

開発環境の迅速な構築と統一

 仮想化されたサーバは、すべて同一の仮想デバイスで構成することが可能である。つまり、同一のデバイス、ハードウェア構成を持つサーバとなる(もちろん割り当てられている物理リソースの量によって、CPU処理能力、ネットワーク帯域、ディスク容量などは異なる)。各仮想マシン上にあるゲストOSは、すべて同一のデバイスドライバや設定で制御することが可能となる。

ALT 図1 サブシステム単位で分割したシステム開発が容易になる

 通常、ある程度の規模のソフトウェアシステムはサブシステムに分割して構築することが多い。サブシステムごとにそれぞれのアプリケーションチームが開発をすることになるが、その際にチームごとに開発機を使用し、アプリケーション開発を行っている。

 開発機は各チームで共通のスペックのマシンを購入できればよいが、多数のチームで同一スペックのマシンを購入することはコストや期間的にも難しく、個別に既存の開発マシンを流用して開発を行うことが多い。そうした場合、開発環境の違いによる動作の差異が発生し得る。仮想サーバを利用することで、同一の仮想デバイスを利用できるため、まったく同じ構成の開発機を提供することが可能になり、環境の違いを埋められる。 

 また、サーバの仮想化は、環境の構築にかかわるコストの削減にも有効である。開発機の調達には、発注から納入、セッティング、OSのインストールなど、数日からものによっては1カ月以上かかることもある。開発が終了するなどで開発機の必要がなくなった場合にも、償却の問題から簡単に捨てることができないなど、手間が掛かるという問題がある。

 仮想サーバであれば、仮想サーバ自体が物理マシン上ではファイルとして存在しており、必要なときに仮想サーバの管理ツールからGUIなどを利用して即時に作成・削除・コピーを実行することができるため、このような問題も大幅に軽減することが可能となる。

本番機の環境を用いた検証作業

 通常、本番機でエラーが発生した場合、業務を止めるわけにはいかないので、システム稼働中にエラー原因追求のための作業は行えない。本番機が仮想マシンで構築してあれば、本番仮想マシンをコピーあるいはバックアップしておき、ほかの物理マシン上に展開することで、本番とほぼ同じ環境を容易に構築することができる。従って、エラー状況の再現やデバッグなどを、稼働中の本番機とは異なる場所で、業務に影響を与えずに行うことが可能になる。

ALT 図2 エラーやパッチの検証を本番機と同一の環境で実行できる

 サーバの仮想化は、OSのセキュリティパッチによる影響をテストする際にも活用できる。OSのセキュリティパッチはセキュリティ上のリスクを抑えるためには必須であるが、各システム上で稼働しているアプリケーションへの影響については、ベンダ側では把握し切れない。そのため、セキュリティパッチを当ててみてアプリケーションの動作を検証しなければならないが、本番機と同様の物理マシンを用意して運用中に調整が行われるソフトやハードの設定内容を含めて常に本番機と同じ環境を維持するのは非常にコストが掛かる。

 仮想マシンであれば、最新の本番仮想マシンをコピーし、別の物理マシン上に展開することで、容易にセキュリティパッチの適用による影響を検証することができる。もちろんセキュリティパッチに限らず、ほかのアプリケーションの導入テストでも同様の効果がある。

古い物理サーバの円滑的な移行と削減

 コンピュータのハードウェアスペックはすさまじい勢いで進化しており、高級なスペックのサーバも、数年たたないうちに普通のパソコンと同じレベルになってしまうことが考えられる。古いサーバ上のアプリケーションを、新しいサーバの仮想サーバに移行して、1台の物理サーバマシン上で同時に稼働させることで、複数の古い物理サーバを削減することができる。現時点でのサーバは、数年前のサーバと比較して性能的に高速であるので、仮想サーバを動作させるオーバヘッドを差し引いても無理のない稼働ができる。

ALT 図3 保守コストのかかる古いハードウェアを削減できる

 また、古いサーバで動くOSのベンダサポートがすでに切れている場合、物理サーバのスペックが不足したので新しいマシンに載せ替えようとしても、デバイスドライバが古いOSに対応していないことが多い。この場合でも、仮想サーバ上の仮想デバイスさえ古いOSに対応していれば、新しい物理サーバ上で稼働させることが可能になる。理想的にはシステムを新しいOS上で稼働するように移行すべきであるが、事情によりすぐにできない場合などには有効であるといえる。

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