NECはサーバ仮想化技術開発で何を狙うのか仮想マシン環境最新事情(1)(1/2 ページ)

システムベンダなどが、自ら仮想マシン環境を開発する動きが広がっている。これを追う新連載の第1回として、NECにおける自社製仮想マシン環境開発に関する戦略を取り上げる

» 2006年09月09日 12時00分 公開
[谷川 耕一(ブレインハーツ),@IT]

 インテルが新しいItanium2プロセッサやXeonプロセッサに搭載した「インテルVirtualization Technology」(VT)や、AMDがOpteronプロセッサに搭載した「AMD Virtualization」は、ハードウェアレベルで仮想化をアシストする機能だ。これらのプロセッサによる仮想化支援技術の登場は、注目を浴びつつある仮想マシンのさらなる普及、発展を強力に後押しすることとなるだろう。

 国内のハードウェアベンダも相次いで仮想マシンの提供を開始あるいは表明している。本連載では、さまざまなプレイヤーによる仮想マシン環境への取り組みについて、その狙いや方向性を検証する。第1回としては、2007年の提供に向け、サーバ用に自社製仮想マシン環境を開発中のNECに焦点を当てる。

なぜ自社製仮想マシンを提供するのか

 NECでは、サーバ仮想化についてすでにVMwareのOEM販売に実績がある。ではなぜ新たに仮想マシン環境を開発しなければならないのか。同社の自社製仮想マシン環境は、「VMwareなどと機能面で競争するために開発しているのではない」とNEC 第二コンピュータソフトウェア事業部 統括マネージャーの新屋敷孝氏はいう。

 「ユーザーにとっては、どんな技術で仮想化が実現されているかではなく、仮想化によって柔軟なシステム環境が提供されるのか。仮想化の柔軟性を活用すると、どのようなメリットがもたらされるのかといった、付加価値の部分が重要となる」(新屋敷氏)。顧客の業務に影響を与えないようにリソースを追加する、あるいは障害が起きた際にリソースを入れ替える。これらを実現できることが、顧客にとっての付加価値となる。

 単に仮想化するだけであれば、VMwareなどの既存の仮想マシンでも自社開発のものでも、基本的な機能が大きく変わるというわけではない。しかし、既成の仮想マシンでは実現できないところがあり、それを可能にするためにはハードウェアベンダ自らが作る仮想マシンが必要となる。例えば、現時点でVMwareはItaniumプロセッサファミリに対応していない。最新のマシンで仮想化を実現しようとすれば、自社製の仮想マシンが必須となる。

 ベンダ独自のハードウェア仕様に対応するためにも、自社製の仮想マシンが必要だ。ヴイエムウェアの正式なサポートを得るには、ハードウェアの認証が必要になる。この作業は、ヴイエムウェアがコントロールする部分であり、ワールドワイドで広く展開されるハードウェアでは率先して認証されることだろうが、市場が日本を中心にしていたり、ベンダ独自の仕様を含むハードウェアで認証を得るには、相当な時間がかかることをベンダは覚悟しなければならない。

 独自仕様の部分こそがハードウェアの付加価値であり、その部分の能力を仮想環境でも十分に発揮できなければ、付加価値サーバの意味をなさない。NECの開発する仮想化環境では、NECのハードに最適化したドライバの提供などが、VMwareなどとは異なる大きなポイントとなるだろう。このような状況が、国内ハードウェアベンダを自社製の仮想マシン提供に走らせる要因となっている。「ハードウェアを売るために必要な自社製仮想マシンであり、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたときに、最大限の価値を生むようにするのがその目的」と新屋敷氏はいう。

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