連載
ビジネスWeb 2.0事例 (1)


利用客のナレッジを取り込むポータルブログ
[阪急電鉄]

柏木 恵子

2006/5/20

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ブログを横断的に検索できる全体共通カテゴリー

画面1 ブログdeバーチャル駅長(クリックで拡大)
 多人数型のポータルブログであることによって、単独型とは異なる機能がもう1つある。全体共通カテゴリーだ。ブログの1つの特徴として、記事を書く場合に自分で設定したカテゴリーを選んで、読者がカテゴリーごとに記事をピックアップできるようになっている。バーチャル駅長でも、各駅長が個別に設定しているカテゴリーがある。しかしそれだけではなく、全体カテゴリーも同時に設定してもらうようにしている。

 ポータルであるトップページ(画面1)の左側に「カテゴリーで記事を探す」と表示されているのが、その全体共通カテゴリーだ。これにより、全ブログを横断的に検索できる。つまり読者は、目指す駅長の記事を読んだりその中だけで検索するだけでなく、この全体カテゴリから検索することで、バーチャル駅長の全ブログの記事の中から検索できるのである。例えば、「駅はどこでもいいからおいしいカフェがないかな」といった探し方ができる。

 バーチャル駅長のトップページには、各駅長のブログのほかにパートナー企業などの情報を提供するスペシャルブログのエリアがあるが、それに加えてこの全体共通カテゴリーによる記事を表示することで、サイト全体のボリュームはかなり膨らむ。Web 2.0の適用として注目されているキーワードに、さまざまなコンテンツを連動させることで充実させるマッシュアップがあるが、いくつもの切り口でコンテンツをまとめ上げるこの手法は、まさにマッシュアップの実例であると言えよう。

記事の品質向上の秘訣は管理し過ぎないこと

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 バーチャル駅長のようなスタイルで、ライターを一般公募するサイトはほかにもないわけではない。しかしそれらのすべてがバーチャル駅長のように成功しているわけではない。成功の秘訣はライターの選び方と運用上の方針の2つにある。ライターの選定についての基本的スタンスは、職業ライターではなく一般の人から公募しているという点だ。「書きたい人に書いてもらう。お金もうけのためにではなく、自己表現のために書くという人に書いてもらうのが理想」(藤井氏)として、ノルマを課したり記事の量に応じた謝礼を出すという方法は取っていない。

 かつては1年間の掲載記事をコンペにして豪華な賞品を提供するという試みもあったが、現在謝礼として提供しているのは1カ月で5000円分の交通乗車カードである。その代わり、毎日書く人も週に一度しか書かない人も、あるいは脱落する人がいても、それはよしとする。書いていない人に「書いてください」と言うのではなく、「どうしたんですか、何か悩みでもあるんですか」といったフォローをしていくという。それは、ライターは「電車に乗っていただいているお客さんなので、上下関係は作りたくないというのが基本」(同氏)だからだ。

 記事の内容が魅力的になるもう1つの重要な要因は、阪急電鉄が内容を検閲しないということだろう。各ライターが記事を投稿すると、そのままインターネット上に公開され、会社側のチェックは公開されてからになる。また、各ブログのコメントやトラックバックは承認制になっているが、その承認作業も各ライターによって行われる。これは、一見かなりの冒険のように見えるかもしれない。書き手側も、文章を書き慣れていない人の場合は、最初はチェックしてほしいということもあるという。しかし、そのうち自分のいいたいことをいえるという自由度に気付き、モチベーションが上がるのだ。

 ただし、そのためにはライターの選定は慎重にする必要がある。Web上で公募しており、応募動機などを書いて送ってもらっているが、いまはすでにブログを持っている人という条件を付けている。それによって、どのようなものを書く人かを判断できるからだ。そして、応募動機やブログの文章によって選別した後に、面談によって決定する。中には、ブログ未経験者でも面談で駅長になった人もいるが、面談によって信頼の置ける人だと判断した人にのびのび書いてもらうことで、内容が充実しているという良い結果になっているのである。

 また、面白い試みとして、ライターになった人にはバーチャル駅長の名刺を渡している。阪急電鉄が作っているこの名刺によってある程度信用され、お店の厨房まで見せてもらうといったことも可能だそうだ。既に5年以上の歴史があるバーチャル駅長だけに、沿線の店舗から「今度はうちのことを書いて」と声を掛けられることもあるという。

今後の目標はライターの充実と地図情報との連携

 日記形式からブログへとシステムを新しくしたことで、バーチャル駅長のアクセス数も順調に伸びている。ライターの募集も継続中で、さらに充実を目指しているところだ。今後、機能として追加したいものとして、藤井氏はGoogleマップのような地図機能との連携を挙げた。たとえば、沿線地図上に複数のフラグが立っていて、読者がそこをクリックするとその店の情報が吹き出しで出てくる。そこにはバーチャル駅長によるブログにもリンクが張られていて、クリックすることでその記事を読むことができるというものだ。

 ハードルとなるのは、ブログに記事を投稿する際に地図とのリンクを張るユーザーインターフェイスだろう。駅長としてライターをする人の中にはコンピュータには詳しくないという人もいるため、座標を数値で入力するようなものではライターの負担が大きくなり過ぎる。しかし、阪急沿線という限られた地域であることから、ブログと地図の連携は可能だろう。

■要約■
ユーザーによるコンテンツの作成は、Web 2.0の特徴の1つとなっている。これを2000年ごろから実践していたのが阪急電鉄だ。

ブログもない時代に、オンライン日記のCGIを利用して作成した「バーチャル駅長室」。沿線情報を提供するにも、沿線のことを知っているのは長年住んでいる利用客であるというシンプルな発想からそれは始まった。

その後ブログが登場した。そのコミュニケーション機能を生かし、より多くのユーザーの声を取り込むべく、「バーチャル駅長室」は「ブログdeバーチャル駅長」に進化した。ブログ版では検索機能も充実している。

ブログdeバーチャル駅長の運用の秘訣は、掲載内容について、場を提供する側が管理し過ぎないようにすることだという。

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利用客のナレッジを取り込むポータルブログ[阪急電鉄]
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企業情報以外の沿線情報提供は2000年から
コミュニケーション機能が充実しているブログへの移行
複数のブログを統合するためポータルブログを採用
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ブログを横断的に検索できる全体共通カテゴリー
記事の品質向上の秘訣は管理し過ぎないこと
今後の目標はライターの充実と地図情報との連携


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