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連載
IT共通基盤を整備せよ(4)


企業はなぜ“情報活用”ができないのか?

生井 俊

2010/3/9

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アウトプット基盤を作れ!

 ウイングアーク テクノロジーズが提唱するOPM(Output Performance Management)とは、業務アプリケーションごとに個別最適で設計されたアウトプット環境を一元的に整理し直し、管理・運用できるようにする無償のコンサルテーションサービスだ。大まかには3ステップからなる。

OPM(Output Performance Management)の3ステップへ
図1 OPMの基本ステップ。STEP 1で現状の把握、STEP 2で改善策の策定を行ってから、STEP 3でIT導入を行う形になっている

 STEP 1はコスト削減診断サービスで、アセスメントを行って課題分析と最適化の仕組み、およびコスト削減のシミュレーション(ROIの算出)を行う。これは前回も触れたが、ペーパーレス化の推進、ホストプリンタの撤廃などが中心となる。ウイングアークの岡氏は、「企業によって価値観が違うので、そのアウトプットは要るのか要らないのかという判断は難しいものがあります。われわれとしては過去の経験から標準的なたたき台を提供し、それに基づいてお客さまと一緒になって完成度を上げていくという形になります。アウトプットの観点から課題を精査して、お客さま自身が主体的に課題解決を見付けていく――そのお手伝いをしていくというステップです」と語る。

 STEP 2はアウトプット環境の基盤化を行う段階で、アセスメントで抽出された課題を解決するアウトプット基盤にどのような機能やサービスがあればいいのかをまとめていく。これは具体的なシステム提案ではなく、いわばRFPを作る作業である。ソフトウェアベンダとしてのウイングアークは、このRFPに対して自社製品を用いたソリューション提案を行う。この提案が受け入れられて初めて「売上が立つ」のだという。

 STEP 3は導入診断サービス、定期診断サービス。アプトプット基盤は社内のあらゆるシステムと接続することになるで、負荷の増加については特に注意が必要だ。そうしたことがないようにコンサルテーションを行うのがこのステップである。

 OPMではユーザー企業に電子帳票などの既存システムがあれば、できる限りそれを生かしていくという。従ってウイングアーク製品が必須というわけではないが、OPMは同社の経験の中から生まれてきた考え方であるので、プロダクトの面から見ていくと分かりやすい。

 基盤化において発想の原点になっているのが、「SVF(Super Visual Formade)」と「Dr.Sum EA」である。前者は帳票作成や出力をつかさどる帳票ツール群、後者は業務ユーザーのデータ集計・検索ツール群である。もともと別々のブランドとして作られた別製品だが、OPMに適用する場合は統合化したソリューションとして提供される。

SVFX-Designerのイメー
図2 SVFX-Designerの画面イメージ。SVF環境で用いる帳票フォーム作成ツールで、共通基盤化されたアウトプット環境で複数のシステムに共通の帳票をデザインできる

Dr.Sum EA Visualizerのイメージ
図3 Dr.Sum EA Visualizerの画面イメージ。Dr.Sum EAで集計したデータを可視化する

 ウイングアーク テクノロジーズ 事業統括本部 事業開発部長 部長の森脇匡紀氏は「ここ5年ぐらいはパートナー企業とのアライアンスを強化してきており、データをホストからSVF/Dr.Sumに持ってくる機能などは他社製品を活用したり、パートナー企業の製品と連携して、OPMで目指すシステムを安く早く実装できるようにしています」と語る。

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 連携の一例としては、JFEシステムズの電子帳票システム「FileVolante」の画面にボタンを設置してDr.Sumにリンクできる仕組みがある。つまり「FileVolante」の固定帳票からDr.Sum EA Visualizerの画面を呼び出して明細情報にドリルダウンをし、原因追究を図るといったこともできるという。

 「わたしたちとしては、お客さま――ビジネス現場の方々が欲しい情報とは何か、それを提供するには何が必要か、そしてそのためにはIT部門は何をしなければいけないのかに着目してOPMを進めています。プロダクトに関しても、これらを実現する仕組みの1つですから今後、恐らく変化していくはずです」(岡氏)。

 企業に求められる情報活用の度合いは高まりこそすれ、低くなることはない。アウトプットは情報活用の最前線であり、まずここから手掛けていく。その第1歩なしに会社全体で情報活用の成熟度を高めていくことはできないのだ。

 岡氏は「今後、企業の情報システム部門が提供しなければならない情報システムというのは、自社が保有している/いないにかかわらず、現場に必要な情報をアウトプットするという軸で考えていくべきです。グローバル企業であれば、国内情報だけではなく、北米や欧州、中国、アジア太平洋の情報を見たい軸でそろえて見られるようにするといったものではないでしょうか。ちょっとハードルは高いですが、次はそういったものが課題になってくると思います」と語った。

筆者プロフィール
生井 俊(いくい しゅん)
1975年生まれ、東京都出身。同志社大学留学、早稲田大学第一文学部卒業。株式会社リコー、都立高校教師を経て、現在、ライターとして活動中。著書に『ディズニーランド「また行きたくなる」7つの秘密』『本当にあった ホテルの素敵なサービス物語』(ともにこう書房)。
■要約■
企業が莫大なコストを掛けて情報システムを整備するのは、情報をビジネスに活用するためだ。実際のビジネスシーンで求められる情報のほとんどは「詳細データが見たい」「時系列の推移を知りたい」「AとBを比較したい」といった簡単なものだ。

こうした情報は「判断したい」というときに求められる情報である。それが数週間後に届いたのでは意思決定が手遅れになるかもしれず、また思考も中断されてしまう。従って見たいものが見たいときに見られる環境、即座に情報が見られる環境を整備することが情報活用を進めるファーストステップとなる。

作業指示などの伝達はIT化が進んでいるように思えるが、まだまだ紙伝票に依存したプロセスになっている企業も少なくない。紙による情報伝達は大幅に伝達スピードが遅くなり、業務が遅くなる。情報伝達の方法を改善して情報が早く届くようにするだけで現場の仕事の流れが変わり、ビジネススピードや生産性、あるいは企業競争力が変わってくる。紙の電子化は弊害もあるが、それを踏まえて情報の流れを再定義することが必要だ。

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