複数OSからなるサーバ群を仮想化で統合特集:仮想化構築・運用のポイントを探る(4)(1/2 ページ)

教育や研究、学生向けのサポートを高度化していく一方で、増え続ける物理サーバの設置スペースや電力消費に悩まされていた湘北短期大学。学内での議論の末、仮想化技術によるサーバ集約を選択したが、その理由とは

» 2010年09月01日 12時00分 公開
[伏見学,@IT情報マネジメント編集部]

 実技を通じて知識のみでなく、世の中を生きていく、人を率いていける人柄を身に付ける教育を――。ソニーの創設者である井深大氏らがこうした理念を掲げて設立したのが、学校法人ソニー学園 湘北短期大学である。1974年の開学当初からのこの理念を守り、幅広いカリキュラムを展開するなど常に教育を進化させている同大学は、文部科学省のGP(Good Practice:優れた取り組み)にも選定されている。

 GPとは、文科省が推進する事業で、大学、短期大学、高等専門学校などが実施する大学教育改革の優れた取り組みを財政支援するとともに、その取り組みについて広く情報提供することを目的としている。同大学は、全国に数百ある短期大学において単独申請で最多となる6度(2009年時点)の選定を受けている。

 こうした同大学の先鋭的な教育を支えるのがIT基盤である。企業の情報システム部門に当たるICT教育センターでは、システムの構築から運用、管理、ネットワークインフラの整備など学内のITにかかわるさまざまな業務を担当している。そうした中、同センターが一昨年から注力するのが、仮想化技術によるサーバの集約だ。

仮想化を選択したワケとは

 同大学では2003年にシステムおよびネットワークの再構築を行ったが、その後、教職員が利用する業務向けサーバや、講義および研究で活用する教育向けサーバ、GPなど特別用途でのサーバと、新しいサーバが次々と増えていった。加えて、これまで情報メディア学科で管理していたサーバも学内で管理を一元化することとなり、全体のサーバ台数はシステム再構築時の1.5倍に当たる約50台に膨れ上がっていた。「サーバ管理室に物理サーバを入れたくても、もはや場所、電力ともに足りない状態だった」と同大学の情報メディア学科准教授で、ICT教育センターのセンター長を務める内海太祐氏は振り返る。

 そこでサーバ集約を目的にその手段を検討し始めたが、必ずしも最初から仮想化が唯一の選択肢というわけではなかった。内海氏は「仮に高速処理のサーバが必要だとしたら、仮想化技術を選ばなかったかもしれない。たまたま当大学のサーバ1台1台がパフォーマンスをそれほど要求するものではなかったため、仮想化で十分に運用できると判断したわけだ」と説明する。

ALT 湘北短期大学のシステム全体を支えるICT教育センター。左から内海太祐センター長、福井宗明氏、岡原武主任≫

 システム管理の面では、仮想化は最適な選択肢だった。ICT教育センター主任の岡原武氏は「仮想化すれば複数のサーバを単一のブレードシステムで管理できる。その枠組みの中でハードウェアの保守を適切に行っていれば、(サーバの保守や運用に関する)リスクを軽減できる」と理由を述べる。過去にベンダやシステムインテグレータの管理責任に翻弄させられた経験があるため、仮想化によるメリットを強く感じていたという。

 さらに、サーバの短期間の運用に対して、柔軟に資源を配分できることも仮想化を選んだ理由だ。例えば、新規システムを試験的に運用したいと考えたとき、そのために数百万円の物理サーバを新たに購入するのではコスト効率が悪い。仮想化プラットフォームがあれば、コストを掛けずにテスト環境を容易に構築することが可能である。加えて、短期的なプロジェクトが終了した後に「残された物理サーバの処遇」について考えることからも開放されるという。

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