運用自動化は、システムの可視化が大前提──日本ヒューレット・パッカード特集:仮想環境はここまで管理できる(3)(1/2 ページ)

少ない運用管理者によるシステムの集中管理、システム構築の標準化といった仮想化のメリットを引き出すためには運用自動化がカギとなる。ただ、「効率的な自動化のオペレーションを考えるためには、システムの可視化が大前提となる」と日本HPは強調する。

» 2010年02月08日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]

システム構成の可視化に対するニーズが目立つ

 オープン系システム仮想化の流れは欧米が先行しているが、それら先行企業のニーズから課題を吸い上げ、運用管理製品に生かしているのがヒューレット・パッカードだ。日本ヒューレット・パッカードが現在提供している仮想化対応の運用管理製品は以下の通りである。

  • ハードウェア/ソフトウェア資産自動検出ツール「HP Discovery and Dependency Mapping
  • 構成管理データベース「HP universal CMDB software
  • ハードウェア/ソフトウェア 統合管理ツール「HP Operations Manager software
  • 運用オペレーション自動化ツール「HP Operations Orchestration software
  • IT資産管理ツール「HP Asset Manager 5.1 software
  • サーバ運用管理自動化ツール「HP Server Automation software
  • バックアップオペレーションツール「HP Data Protector 6.11 software

 以下、順次対応状況を見ていこう。

uCMDBを情報基盤として、可視化、自動化の機能を充実

ハードウェア/ソフトウェア資産自動検出ツール「HP Discovery and Dependency Mapping」

 「HP Discovery and Dependency Mapping」(以下、DDM)は、ネットワークに接続されたハードウェア、そこで稼働するソフトウェアの情報を収集するIT資産検知ソフトウェアだ。2008年10月にVMware ESXに対応しており、いわば“老舗”といえよう。

 収集する資産情報は、サーバ、CPUコア、メモリ、ネットワーク・インターフェイス、物理/仮想ストレージといったシステムリソースから、ルータ、物理/仮想スイッチ、ロードバランサ、スイッチポートといったネットワークデバイス、またハイパーバイザーやOS、アプリケーションなどのインストール済みの製品のほか、OSや修正パッチの適用状況などを収集する。

 物理/仮想の混在した環境ではシステム構成が複雑化することに配慮し、物理サーバ?仮想サーバ?アプリケーションの依存関係を含めて情報収集することが1つのポイントだ。

構成管理データベース「HP universal CMDB software」

 DDMが集めた情報は、構成管理データベース「HP universal CMDB software」(以下、uCMDB)にDDMが自動的に転送し、格納する。uCMDBはDDMからの情報を基に各構成要素の依存関係をひも付け、障害が発生した場合の影響範囲も参照できる状態で情報を管理する。構成アイテム間の依存関係をマップの形に可視化する構成ビュー機能もある。

 このuCMDBが、以下で紹介する稼働状況監視ツール「HP Operations Manager software」や資産管理ツール「HP Asset Manager 5.1 software」、変更管理機能を持つサービスデスクツール「HP Service Manager software」など、ほかの製品と構成情報を交換する情報基盤となる。

ハードウェア/ソフトウェア稼働状況監視ツール「HP Operations Manager software」

 「HP Operations Manager software」(以下、OM)は、エージェント常駐型のシステム監視ツールだ。OSにエージェントソフトウェアをインストールすることで、物理サーバとOS、その上で稼働するアプリケーションを監視し、死活状況やCPU使用率、ディスク使用量などの稼働状況を把握可能とする。

 仮想環境については、VMwareとHyper-Vに対応するプラグイン製品「HP Operations Smart Plug-in for virtualization 1.0」を組み込むことでハイパーバイザーや仮想サーバを監視対象とすることができる。

ALT 図1 OMは、エージェントを介して物理サーバとOS、その上で稼働するアプリケーションを監視し、死活監視や、CPU使用率、ディスク使用量などの稼働情報をGUI上で把握できる。仮想環境については、図のようにプラグイン製品をエージェントに組み込むことで、ハイパーバイザーや仮想サーバの稼働状況を監視できる(仮想環境のみ図示)

 また、OMもエージェントからの情報を基に、図2の画面イメージのように、監視担当者が使うレベルの簡易的なシステム構成マップを表示する機能を持ち、マップとともに物理サーバ、仮想サーバの稼働情報を視覚的に提供する。

ALT 図2 OMのコンソール画面。画面のように物理サーバと仮想サーバの依存関係や稼働状況を単一の管理画面で視覚的に把握できる。画面の下段のように、各種監視項目に対するメッセージも同一の画面上に表示できる(クリックで拡大)
ALT 図3 OMのGUIで、各仮想サーバのCPU使用率を視覚的に把握できる。これを参考に、各サーバで処理している業務のどのプロセスで負荷が増加しているのか判断することもできる

 ほかの運用管理製品が管理する情報を、GUIで一元管理できることもOMの特徴だ。例えば、普段は物理/仮想サーバの稼働状況を監視し、障害が発生した際には、OMのGUIにuCMDBによる構成ビューを呼び出して原因となった構成要素を詳細に探ったり、仮想ネットワーク監視製品「HP Network Node Manager」の管理画面を呼び出して、仮想ネットワーク上の問題個所を探す、といったこともできる。

 また、物理/仮想サーバそれぞれの稼働状況を監視し、設定したしきい値を超える、あるいは下回るとメッセージを配信したり、以下で紹介する運用オペレーション自動化ツール「HP Operations Orchestration software」に指示を出して自動アクションにつなげることも可能だ。

プロビジョニング自動化で、運用管理者の手間を削減

運用オペレーション自動化ツール「HP Operations Orchestration software」

 「HP Operations Orchestration software」(以下、OO)は、運用管理上の定型的な作業について、手順をワークフローとして設定することで作業を自動化できるツールだ。仮想化対応機能としては、VMware ESX ServerとHyper-Vに対応している。

 例えば、標準的な仮想サーバのプロビジョニングなら、ストレージのプロビジョニング、VMware ESX Serverホストのインストール、設定、仮想サーバの作成といった一連の手順を設定することで作業を自動化できる。変更管理機能もあり、仮想サーバのプロビジョニングを行った際は、uCMDBと連動して自動的に構成情報を更新する。

サーバ運用管理自動化ツール「HP Server Automation software

 一方、「HP Server Automation software」(以下、SA)は、物理/仮想サーバの運用管理自動化に特化したツールとなっている。

 uCMDBと連携し、各物理/仮想サーバとネットワーク、ストレージ、OS、アプリケーションの依存関係を含めてシステム構成情報を収集し、管理対象とするサーバをSAが自動登録する。そのうえで、サーバのプロビジョニングや、OSとアプリケーションに対するパッチ適用、仮想サーバへのCPUリソース割り当てなど、各種運用管理作業の自動化機能を提供する。

 これをOM、OOと組み合わせることで、仮想サーバの稼働状況に応じた動的なCPUリソース配分も行えるという。「OMで物理/仮想サーバの稼働状況を監視→そのパフォーマンスが任意のしきい値を下回ったらOMがOOにメッセージを発信→OOがSAに作業指示を出して、自動的に最適なリソースを割り当てさせる」といった具合だ。むろんシステムの変更内容は、OOがuCMDBの情報を自動的に更新する。

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