@IT情報マネジメント編集部では2012年9月27日、東京・秋葉原の富士ソフト アキバプラザで「第18回 @IT情報マネジメントカンファレンス 複雑なインフラのサービスレベルをどう最大化するか? クラウド時代、パフォーマンス管理の新常識」を開催した。その要点をレポートする。
市場への機敏な対応や可用性の向上、コスト削減などを実現するために、企業はクラウドや仮想化の導入を積極的に進めてきた。しかし、その一方でインフラは複雑化し、パフォーマンス障害の発生で問題箇所を切り出すことがますます難しくなっている。最悪の場合、サービスレベルを維持できず、せっかくの最新インフラもビジネス機会の損失を引き起こす原因になりかねない。
9月27日に東京都内で開催された第18回 情報マネジメントカンファレンス「複雑なインフラのサービスレベルをどう最大化するか? クラウド時代、パフォーマンス管理の新常識」では、昨今の企業インフラが抱えるパフォーマンス問題や最適化のポイントが紹介された。最前線で活躍する管理者たちの知見は、即効性のある対策のヒントになるだろう。
最初に登壇したのは、ヤフー オペレーション統轄本部 運用技術本部 インフラ技術1部 アーキテクトの矢澤祐司氏だ。現在はアーキテクトとして、新機種や新構成の検証などを担当する同氏は、新卒で採用された他社でネットワーク監視を担当していたという。「そこで監視に必要なポイントを知ることは、すなわちパフォーマンスのポイントを知ることだと学んだ」と話す矢澤氏は「パフォーマンス管理の新常識10か条」と題した講演で、すぐに役立つ10のノウハウを紹介した。
仮想化は物理構成を見えづらくするため、物理的なトポロジーを意識せずに構築する新人が増えたと矢澤氏は懸念する。例えば、1.では、実際の物理構成を理解していることが重要となる。「サーバ側のSASのHBAが6Gbpsあっても、SASは現実4.8Gbpsしか使えない。デイジーチェーンしている場合はトラフィックの集中で簡単に詰まってしまう」(矢澤氏)。また、パフォーマンス重視の並列構成をとっている場合も、監視ツールの取得間隔によっては、一瞬の輻輳がグラフに残らないケースもある。「その一瞬のタイミングを見逃すだけでも、ビジネスチャンスを逃す可能性がある」と矢澤氏は話す。
8.や9.にあるデータの書き込みや読み込みも、きちんと把握していなければシステムのリリース後に想定したパフォーマンスが出ないなど、大きな事態に発展する可能性もあるのだ。
いずれも、新技術や数字、価格だけを見た場合の失敗ポイントを指摘したものだ。矢澤氏は「地味な部分だが、パフォーマンス管理に有効な情報だと思うので、ぜひ活用していただきたい」とした。
続いてのセッション「“持たないプライベートクラウド”が実現するITリソースの最適化」では、インターネットイニシアティブ マーケティング本部 市場開発部 1課 課長の喜多剛志氏が講演を行った。
ITリソースの最適化は、一般的には「標準化の策定」「仮想化」「システム集約」の順番に進められる。しかし、システムの標準化モデルが描けず、そもそも最初のステップで頓挫することが多いと喜多氏は言う。
IIJが提案する新しいアプローチでは、最初からベアメタルで仮想化レベルのインフラ集約を行い、その後に標準化、システム集約と進めてから、最終的にオンプレミスと外部クラウドサービスとを効果的に組み合わせたハイブリッドクラウド環境の構築を目指す。同社は、EMCと共同で導入コンサルティングサービス「クラウドアドバイザリーサービス」を提供しており、全体最適化されたハイブリッドクラウドの姿を描く支援を行っている。
このほか、同社はクラウドの選択肢として「持たないプライベートクラウド」を提案している。それを実現するのが、クラウドサービス「IIJ GIO VMシリーズ」だ。IIJ GIOは2010年の提供開始以来、導入社数770社、1300システムを超える。仮想化プラットフォーム対応の「IIJ GIO VWシリーズ」を導入することで、「よりエンタープライズ向けでプライベート志向、かつ仮想化をコントロールできるクラウドを構築できる」と喜多氏は意気込む。
次に、「仮想化・クラウド環境におけるパフォーマンスの最適化と運用コスト削減のポイント」と題したセッションでは、日本コンピュウェア 営業本部 シニアソリューションアーキテクトの福田慎氏が登壇した。
仮想サーバの作成や物理サーバ間の移動は非常に簡単だ。しかし、その単位が数百規模におよぶと管理は一気に難しくなる。また、物理サーバ内で通信が完結するため、通信状況でパフォーマンス監視をするという従来の物理サーバ監視では対応できない。しかも、複数サーバにまたがってシステムが共有され、自動化されているような場合、パフォーマンスが悪化したと思ったら突如復旧するなど、何が起きているのか分からないことも多々ある。
何が起きているのか分からない理由は、監視体制にある。福田氏は「40台のサーバをVMwareサーバ3台に集約したものの、障害検知の時間が増加し、解決までの時間がかかるようになった」という例を取り上げた。その企業では、物理環境と同じ監視体制を実施しており、システムの可視化ができていなかったという。
そこで、同社はサービスを主体とした運用監視体制を提案した。日本コンピュウェアのソリューションでは、ユーザー単位や地域単位でレスポンスを計測できる。エンドのレスポンスを見ることでサービスの流れが分かり、サービス中心の監視体制を構築できる。その結果、パフォーマンスの視点で適切なキャパシティプランニングが実現し、障害復旧までの時間の短縮化や効率的なシステム運用にもつながる。
「仮想化には仮想化の監視方法がある。視点を変えるだけで、正しいパフォーマンス管理が実施できる」(福田氏)
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