上海オフショアベンダが生き残りをかける施策とは?現地からお届け!中国オフショア最新事情(1)(1/4 ページ)

この新連載では、中国オフショア開発の話題を幅広く取り上げていくほか、中国の最新BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)事情や、筆者の幸地氏が中国滞在中に感じたこと、食事情まで幅広くコラム形式で取り上げていく。

» 2006年04月13日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ有限会社]

 筆者が先日まで連載していた「オフショア開発時代の『開発コーディネータ』」では、主に中国オフショア開発でよく見かける失敗事例とその対策、ならびに教訓に焦点を当ててきました。

 今回から始まる新連載では、中国オフショア開発の話題に加えて、最新のBPO(Business Process Outsourcing)事情などを幅広くお届けします。私が中国滞在中に感じたことや中国人の考え方などを、たまには現地の食事情などの脱線も取り入れてコラム形式で紹介していきたいと思います。

中国オフショアベンダが直面する課題とは

ALT 最近上海の地下鉄に導入された自動券売機

 2005年12月末、筆者が主催した上海オフショア開発交流会は、突然の大寒波にもかかわらず大盛況でした。この日のテーマは、「オフショア開発ベンダがBPOに着手するいきさつと段取り」です。交流会は、数年前に上海進出を果たした日系ベンダの日本人代表による講演をメインに行いました。

 日本企業の現在のようなコスト構造では、単発プロジェクトの場合、日本の発注者に負担が掛かり、オフショア開発そのものが敬遠されてしまいます。かといって、いまの上海のベンダには、大規模案件を請けるだけの体力はありません。中国で即戦力となるSEを一時的に大量に獲得することは難しく、高級人材に依存すると今度は業務拡大をしにくいのが現状なのです。

 現在、上海の既存オフショアベンダの多くはあまり規模が大きくありません。規模拡大を望めないなら、別の突破口を見出さなくてはいけないのが現状です。そこで、これらの会社が目を付けたのがBPOでした。既存オフショアベンダが、BPOも並行して手掛けることによって、業務の幅が広がり、人材獲得&育成の面でも、著しい相乗効果が生まれるものと期待が高まっているのです。

 なお、BPOとは、企業が自社の業務処理(ビジネスプロセス)の一部を、外部の業者にアウトソーシングすることを指します。

在中日系企業の中国人スタッフ給料、平均8.5%上昇=2005年

 中国商務省が発表した情報によると、在中日系企業の中国人スタッフの給料は2005年に平均で8.5%上昇したそうです。この数値は、インドネシアの10.4%に次いで、ベトナムと並んで2位を占めています。このうち、工場の労働者と中級管理者の給料の上昇幅は、アジアで1位でした。

 都市別に見ると、給料が10%以上上昇した日本系企業は、深センで48%に及び、天津と上海でそれぞれ40%以上に達しています。2006年の上昇幅は、7.8%に達する見通しです。このうち、天津や深センなどの都市は、引き続き10%以上の上昇率を維持できるといいます。

(日中グローバル経済通信 2006年2月10日)

 中国オフショア開発の主たる目的はコスト削減です。そのため、オフショア開発に関するコンサルティングサービスを提供する私の下には、中国人スタッフの人件費高騰に関するさまざまな相談が寄せられてきます。例えば、以下のような相談が先日届きました。

 最近、北京や上海など沿岸部では人件費が上がってきたので、いまさらオフショア開発に乗り出すべきかどうか悩んでいます。

 ところが、実際にはこのような心配は無用です。統計データが示すとおり、中国人スタッフの給料が急騰しているのは事実ですが、中国側の生産性の向上度合いが人件費の高騰を相殺しているため、いまのところ発注する日本企業への影響はほとんどありません。特に、案件ごとに委託契約を結ぶ日本企業への影響はほとんど感じられないでしょう。中国人スタッフ給料の上昇は、発注する側ではなく、オフショア開発の受託側により大きな影響を与えています。

 「現地からお届け!中国オフショア最新事情」と題した新連載の第1回目は、中国での人件費急騰や慢性的な高級人材の不足に悩む日系ベンダの生き残りをかけた苦肉の策を紹介します。

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