安いって本当? ベトナムオフショアの事例紹介します現地からお届け!中国オフショア最新事情(10)(1/3 ページ)

中国オフショア開発が盛んだが、中国に次ぐオフショア開発先としてベトナムが注目を集めている。今回は、まだ情報が少ないベトナムオフショア開発の現状を、実際の開発事例を基に解説する。

» 2007年12月14日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ株式会社]

器用・真面目・誠実・勤勉のイメージで注目を浴びるベトナム

 今回は、ベトナムの独立系ベンダを活用した小規模オフショア開発の成功事例を紹介します。この話題の提供元は、11月15日に東京で開催されたオフショア大學開講記念セミナーで講演した霜田寛之氏(Global Net One株式会社 代表取締役社長)です。ベトナムの事例を紹介するにあたり、霜田氏は次のように語ってくれました。

 これまで語られてきたベトナム関連情報の大半は、大上段に構えたマネジメント視点の知識、ノウハウでした。私たちは、戦略思考を持ってオフショア推進の旗振りを行う必要があります。

 今回は私が立ち会ったケースを通じて、ベトナムで実際に起きている現場の声をお伝えします。器用・真面目・誠実・勤勉というイメージで注目を集めるベトナムですが、どのような点が優れていて、どのような点が課題となっているのかを正直に紹介します。

事例:創業2年のベンチャー企業ヒューマン・オンラインの挑戦

 今回、事例として紹介するのは、ベトナムオフショア開発に初めて挑戦したベンチャー企業のヒューマン・オンラインです。同社は東京に本社を置く、創業2年、社員数7名の若い会社です。

 ヒューマン・オンラインは下請け専門となることを避けるために、自社メディアの開発にも注力してきました。Webアプリケーションの受託開発でノウハウを蓄積する傍ら、特定分野に特化したSNSや総合情報ポータルサイトなど、ニッチメディアの企画・制作・運営で成果を挙げています。

 それでは、早速ヒューマン・オンラインの代表取締役にベトナムオフショア開発の体験談を聞いてみます。

競合他社では、すでにオフショア開発は行われていた

聞き手:筆者

話し手:ヒューマン・オンライン代表取締役 田尻友行氏

−今回のオフショア開発の契約形態を教えてください。

 弊社から、ベトナムの独立系IT企業であるINTELSOFTへアプリケーション開発を依頼しました。また、INTELSOFT選定の際には、日本側の窓口としてGlobal Net Oneの霜田さんに調整していただきました。

−今回ベトナムに発注したシステムの概要を教えてください。

ALT ハノイ中心部の裏通り

 会員制Webサイトです。プレスリリースを発行したい会社とメディアをマッチングさせるサイトです。規模は、設計、デザイン、コーディングを合わせて、全体で10人月のシステムです。

 今回、当社で要件定義と詳細設計を行い、INTELSOFTにはコーディングから総合テストまでをお任せしました。期間は2007年の3月中旬から6月末です。

 技術要素として、LAMP(Linux、Apache、MySQL、PHPを使用した開発方法のこと)での作成をお願いしました。

−INTELSOFTの満足度はいかがですか?

 出来上がった開発物は、プログラムやドキュメントを含めて満足しています。開発費用も日本と比べてトータルで3分の1〜4分の1程度で済みました。数ある失敗談を聞くなかで、初めてのオフショア開発で成功できたことは大変ありがたいです。

−オフショア開発の検討を始められた時期ときっかけを教えてください。

 2006年の秋ごろから検討を始めました。われわれと同じように受託開発を行っている競合他社は、すでにオフショア開発を利用しており、今後弊社も受託するためには、価格面で対抗できる手段を持つ必要がありました。

 例えば、IT業界はアイミツ(=相見積もり)を取るのが普通なのですが、1回の提案ではほぼ決まりません。何度も価格交渉をして、やっと契約に進むケースが多いのです。

 競合他社の中には、「1人日1万2000円でやります」という業者もあったりしました。それって1人月24万円ですよね。価格面では全く太刀打ちできません。

−なぜ、他社はそれほど安く受けられるのですか?

 オフショア開発を利用しているからです。単価が低い日本企業の中には、中国やインドに出張所を持っているケースもあります。逆に、本社がインドやバングラデッシュにあり、日本に出張所を持つ会社もあります。

−自社開発はいかがですか?

 小〜中規模な開発は自社で行っています。アウトソースしてしまうと、社内に技術が蓄積できません。できる限り自社開発できればよいのですが、納期的な問題があることや、社内の開発体制にも限りがあります。

 またIT系エンジニアは売り手市場なので、欲しい人材をなかなか確保することができません。自分の好きな仕事や給料の高い仕事に就きたい人が多いためでしょう。今後さらに困難になると思います。だからパートナーが欲しかったのです。

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