今回は、PMBOKとCMMIという既存の体系が、どのように進ちょく管理をとらえているかを紹介し、工事進行基準が当たり前となるこれからのプロジェクト管理の参考にしたい。
本連載第1回の「工事進行基準が進ちょく管理に変化をもたらす」では、工事進行基準の採用が、ソフトウェア開発プロジェクトの進ちょく管理現場にどのような変化をもたらすことになるかという点を中心に説明しました。
具体的な対応方法は、プロジェクトまたは企業それぞれで異なるはずですが、いざ自分が対応する場合に備え、現場のプロジェクトマネージャが今後の進ちょく管理でどのような点を重視すべきかという点について、ご理解いただけたのではないかと思います。
今回は、プロジェクトマネジメントや開発プロセスの代表的な知識体系であるPMBOK、CMMIでは、進ちょく管理に関して、どのように考えられているかを紹介していきたいと思います。ご自身の体験に頼るだけでなく、このような既存の知識体系の考え方も取り入れてみてはいかがでしょうか。
PMBOKは、米国プロジェクトマネジメント学会が作成したプロジェクトマネジメント知識体系で、Project Management Body of Knowledgeの略称です(和訳すると「プロジェクトマネジメント標準知識体系」となります)。ソフトウェア業界に特化したものではなく、各種エンジニアリングや建設なども含めプロジェクトマネジメントが必要とされる各場面で活用できるよう汎用化されていて、次の9つの「知識エリア」(「大分類」とお考えください)から構成されています。
一方、CMMIは、米国カーネギーメロン大学のソフトウェア工学研究所が提唱するプロセス改善モデルであるCMMが基になっており、Capability Maturity Model Integrationの略称です(和訳すると「能力成熟度モデル統合」となります)。なお、CMMIは、CMMを含め、複数の改善モデルを統合したもので、CMMとは異なるのですが、日本においては、従来のCMMをそのままCMMIととらえる傾向があります。実際のCMMIは、複数のモデルが統合された結果、段階表現のほか連続表現を持っていることなど、CMMよりも複雑になっています。しかしここでは、段階表現である成熟度の概念を中心に紹介します。なお、CMMIについての概要を知りたい人は、前述した@IT情報マネジメントの当該用語(CMMI)を参照してください。
こちらは、PMBOKとは異なり、組織に特化されて構築されているもので、それらの組織が継続して開発プロセス改善を行うためのガイドラインとなるものです。PMBOKの知識エリアと同様に「プロセスエリア」と呼ばれる分類を持ち、さらにそれらの分類とは別にレベル1?5で組織の成熟度が段階表現されています。
レベル |
内容 |
レベル1 「初期的」 |
プロセスは場当たり的または人任せに検討・適用され、組織としての秩序がない状態。プロジェクトが成功するか否かは、プロジェクトマネージャをはじめとする各個人の能力に依存する |
レベル2 「管理された」 |
プロジェクトを実施するための基本的なプロセスが定義され、それに基づきプロジェクト管理が行われている |
レベル3 「定義された」 |
レベル2より広い範囲でさまざまなプロセスが定義され、さらにそれらは継続的に改善が行われている。組織として定義された標準プロセスが用意され、プロジェクトマネージャはそれらを必要に応じてテーラリング(カスタマイズ)して現場に適用する |
レベル4 「定量的に管理された」 |
これまでのプロジェクト実施実績が定量的に計測・蓄積され、それに基づきプロジェクトの状況を予測することが可能となっている。その予測に基づいて、プロジェクト管理方針を調整しながらプロジェクトを進行することができる |
レベル5 「最適化している」 |
定量的に収集したプロジェクトデータを基にして、革新的・技術的な新しい施策の導入が行われている。また、プロセス改善の効果そのものも定量的に評価され、次の改善活動に反映される仕組みが存在する |
本連載は、PMBOKやCMMIのすべてにわたり解説を加えようとするものではありませんが、その中から「進ちょく管理」とつながりの深い項目について、それぞれがどのようなプラクティスを提唱しているのかその概略をご紹介します。
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