ユーザーが欲しいのはシステムではない隠れた要求を見極める!(1)(1/2 ページ)

要求定義の不備で大量の仕様変更が発生、プロジェクトは火の車に……。そんな事態を防ぐため、体系化された要求定義の方法論を提供するのが「MOYA」だ。本連載では、MOYAの手法を活用して顧客の「隠れた要求」を引き出す方法を解説していく。

» 2007年10月05日 12時00分 公開
[平岡正寿,株式会社NTTデータ]

お客さまが本当に望んでいるもの

「人はドリルが欲しいのではない、穴が開けたいのだ」

 この言葉(あるいは似たような言葉)を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。これはニーズについて語られた有名な言葉で、欲しいのは商品ではなく欲求を満たすことであって、商品はその手段であるというものです。

 システムを作る際にも、同じことがいえます。 「人はシステムが欲しいのではなく、業務をより良くしたいのだ」 といったところでしょうか。

 つまり、こんな機能が欲しいというお客さまの要求(と思われる発言)は、その機能自体が欲しいわけではなく、その機能が提供している何かの価値が欲しいということでしょう。 これに気付くこと、これが要求定義の第一歩です。

軽視されがちな要求定義フェーズ

 いままでは「システムを作ること」のために、多くの研究や実践が盛んに行われてきているのはご存じのとおりです。それに対して、要求定義の部分は軽んじられる傾向にありました。

 というのも、システムを作る側からすると、「低コストで作る」「高品質に作る」「短期間で作る」といった具合に、いかにうまく作るかが直近の重要課題であり、ひいては企業や組織の強みもそこに求めるものと認識されていました。そういった状況では、何を作るべきかについての優先度は相対的に低く置かれがちであったといえます。

 また、本来この工程はお客さまが主導すべきものであるという認識も、その傾向に拍車を掛けていたのではないかと思います。

 しかし実際のプロジェクトでは、お客さまの持つ要求をうまく定義できなければ、そのプロジェクトが成功を収めることは難しいのではないでしょうか。

 いくら低予算でも、いくら高品質でも、お客さまが望まないシステムを作ってしまっては、プロジェクトが成功したとはいえません。そもそも要求をうまく定義できていなければ、システム開発中に次々と追加要求・変更要求が発生し、「手戻り」によるプロジェクトの混乱は必至です。

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