プロジェクトリーダーは十二分な準備で自信を生み出せユーザーサイド・プロジェクト推進ガイド(10)(1/2 ページ)

プロジェクトリーダーには自信が必要だ。その自信を生み出すための「準備」の仕方をついて考えていく。

» 2006年05月30日 12時00分 公開
[山村秀樹,@IT]

広く深い検討の仕方

 前回「プロジェクトチームのリーダーに向く人、向かない人」で、リーダーには自信が必要であり、努力と十二分な準備によって獲得できると述べました。十二分な準備とは広く深く検討することです。

 人類にとってまったく未知のプロジェクトであれば話は別ですが、世の中一般の“未経験プロジェクト”はたいてい、問題解決のヒントや解が手の届くところ──例えば担当部署などの相談相手、書籍・Web上のドキュメントなどで見つけることができるものです。要は、自分にとって未知であっても、ヒントや解を素早く見つけ無駄なく利用する方法を知ることです。

5W2Hと5times why

 広く検討するということはさまざまな方面から検討するということであり、ケース・前提条件・制約条件の種類と程度を考えることがポイントです。人の意見が違うのは前提となる条件が違うためである場合が多くあります。違う前提条件を検討することは多様性にもつながります。

 漠然と前提条件を考えるといわれても、その条件とは具体的には何のことだかピンと来ないかもしれません。そこはよくしたもの、よく知られた便利な言葉があります。「5W2H」──これがガイドになります。この言葉の内容1つ1つを前提条件とし、これらの程度が各人の立場や考え方ではどのようになっているのか、そこからどのようなことが考えられるのかを検討します。

 深く検討することにもよく知られた言葉があります。「5 times why」(5回のなぜ)──。原因の原因を追究することで、真の原因を見誤らないための手法です。原因を追究していく過程で、可能性も含めてさまざまなことを考えることになるので、思わぬ発見の可能性もあります。この手法は現状を把握するためだけに使用するのではなく、対策の検討など案や意見の正当性をチェックすることにも適用されます。


参考記事


書いて、見て、考える

 これらの作業を実際に行う際のポイントは、考えたことを紙やパソコンなどに書き出すことです。ここで書くのは、忘却に備えるためというよりも、新しいことを考えるため、考えを飛躍させるため、時間を節約するためです。すなわち、1つの考えに拘泥し過ぎることを防ぐわけです。

 考えたことを書き出して目で確認できるようにしておくと、同じことを堂々巡りに考えることがなくなります。自分が書いたものとはいえ、それを見ていると次の考えやアイデアが頭の中に飛来し、1人での検討であってもブレーンストーミング状態になります。

 このとき、次から次へとわき上がってくる考えやアイデアは、幸運の女神に似て後ろ髪がないかもしれません。インスピレーションを逃さないためにも書くことは大切です。

 書く場合は、できればツールを利用するとよいでしょう。これは各種グラフやマトリックス、特性要因図フローチャートロジックツリー、タイムチャートなどのことですが、これらは表記法であると同時に思考ツールでもあります。検討内容に合致したものを適当に使えば効果的であり、無駄な時間を省くことができます。

書いた資料を成長させる

 メンバーに説明を行うときに、これらを整理したものを使えば、聞いている方も理解しやすいでしょう。メンバーに説明し、質問に答えているうちに、新たな考えや見落としていた意見などが出てきます。これらも追記していき、内容を充実させていきます。

 これらは整理して保存しておきます。メンバーで共有できる仕組みがあれば理想的です。整理した状態とは、見つけたいものを素早く検索・抽出できるように、関係する資料の在所が分かるように、記述の変更・取り消しなどの履歴が分かるようになっている状態です。

 後で同じようなことを考える場合、あるいは以前の考えを見直す必要がある場合、これら整理された資料を見れば検討のモレ防止にもなりますし、時間短縮になります。そしてそのときの検討内容を新たに追記していきます。資料をプロジェクトとともに成長するように心掛けましょう。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ