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IFRS最前線(7)

IFRSの専門家が徹底解説!
目前に迫る中小企業会計の“大転換期”

小尾拓也
ダイヤモンド・オンライン
2010/7/22

IFRSの適用が迫るなか、多くの中小企業経営者は不安を抱えている。彼らにとって必要なのは、現状を正確に把握することだ。河ア照行・甲南大学会計大学院長が、転換期を迎えた中小企業会計の現状を解説する(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年02月18日)。

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 IFRS(国際会計基準)の適用が刻々と迫る現在、中小企業の経営者たちは不安を抱えている。IFRS導入支援サービスを手がけるITベンダーやコンサルティング会社には、「導入時のコストを安く済ませる方法はないか」「適用を免れることはできないか」といった相談が相次いでいるという。大手企業さえも苦心しているIFRSの導入は、中小企業にとって大きなインパクトになる可能性が高い。経営者にとってまず必要なのは、自らが置かれた現状を正確に把握し、効率的な対策を練ることだ。河ア照行・甲南大学会計大学院長が、現状を詳しく解説する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

――日本では、2015年、または2016年にIFRSの強制適用が始まるが、取り組みを始めているのはまだ一部の大手企業に限られている。中小企業にとって、導入準備にかかる負担は大きい。IFRSには、中小企業向けの例外措置はないのか?

かわさき・てるゆき/甲南大学会計大学院長、教授、経営学博士。1950年生まれ。山口県出身。79年神戸大学大学院経営学研究科博士課程単位取得。教鞭を執る傍ら、日本会計研究学会理事、日本簿記学会理事、税理士試験委員、公認会計士試験委員などを歴任。著書多数。

 上場企業であれば、原則として全てIFRSが適用される。また、非上場の中小企業であっても、社会的説明責任が大きい場合は、適用を推奨される可能性がある。

 よい例が、昨年7月、IASB(国際会計基準審議会)によって公表された「中小企業版IFRS」(『IFRS for Small and Medium-sized Entities』)だ。

 これは言わば「簡易版IFRS」というべきもの。内容的には、IFRSのフレームワークを基礎として、中小企業に関連しない項目や複雑な会計方針のオプションが削除されている。

 適用対象となる企業は、「社会的説明責任のない企業であり、かつ一般目的財務諸表を公表する企業」となっている。

 このようなケースを見てもわかる通り、中小企業と言えどもIFRSと無縁ではいられないのが現状だ。

――IFRSの本来の目的は、社会的説明責任が大きい上場企業の会計基準を統一し、より正確な実態を反映した財務報告を行なわせることではないのか?

 たとえ非上場の中小企業だとしても、社会的説明責任が重要であることに、変わりはない。彼らの利害関係者には、融資を行なっている金融機関やビジネス上の取引先など、より正確な財務内容を把握したがっている人々も多いからだ。

 たとえば、大手上場企業の子会社の中には、社会的説明責任が大きい親会社に合わせて、IFRSを導入せざるを得ない企業も出てくるだろう。

 もちろん、IASBの「中小企業版IFRS」は、「完全版IFRS」とは切り離されており、採用や適用は各国の判断に任されている。

 だが、これが公表された背景には、「中小企業の財務諸表の信頼性を高めたい」「将来、完全版IFRSへスムーズに移行するための基礎を作らせたい」という、IASBの思惑がある。

 以前は独自路線を模索していた米国も、IFRSとのコンバージェンス(収斂)を積極的に進めている。そのため、「IFRSに対応できない企業は時代遅れ」という風潮が、日本でも強まっていく可能性は高い。

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