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IFRS最前線(21)

NY上場にIFRSを採用した三井住友FG、その理由は

原 英次郎
ダイヤモンド・オンライン客員論説委員
2011/8/22

2010年11月に、ニューヨーク証券取引所に上場を果たした三井住友フィナンシャルグループ。予想に反してIFRSの方が資本、純利益とも日本基準を上回った。その理由は何かを読み解いてみる。(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年12月28日)。

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 2010年11月1日(現地時間)、三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、ニューヨーク証券取引所への上場を果たした。これによって、三菱UFJフィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3大メガバンクが、ニューヨークにすべて上場することになった。

 上場に際して、三井住友FGが米SEC(証券取引委員会)に提出した登録届出書に付された財務諸表は、米国基準ではなくIFRS(国際財務報告書基準)をベースにして作成されている。同FGは国際的な会計基準統一の流れを踏まえて、IFRSを採用した。

資本、当期純利益ともIFRSが日本基準を上回る

 では、日本基準とIFRSの違いはどうなったのだろうか。表は三井住友FGが、IFRSと日本基準で、資本(純資産)と当期純利益の違いが、どのような要因で生じたかを公表したものである。表のマイナス(△)は、IFRSの方が日本基準より大きいことを示している。

 結果だけをみると、IFRSの方が日本基準よりも厳しいので、日本企業は大変なことになりかねないという予想とは違って、資本、当期純利益ともIFRSの方が大きくなった。

 2010年3月期でみると、IFRSでは資本が7兆5617億円、当期純利益が6467億円。これに対して日本基準では、資本が7兆0008億円、当期純利益が3792億円だった。ただし、将来もIFRSのほうが日本基準を常に上回るとは限らない。例えば、投資有価証券、貸倒引当金など、経済情勢やマーケットの情勢によって、その評価額が大きく変動する資産の影響が大きいからである。

 ここでは両者の違いが大きい投資有価証券、貸出金および債権、繰延税金資産の3つに絞って、なぜ違いが生じたかを見てみよう。

 まず、IFRSの財務諸表を簡単におさらいしておこう。日本基準の連結貸借対照表(BS)に当たるものが、「連結財政状態計算書」、連結損益計算書(PL)に当たるものが、「損益および連結包括利益計算書」である。

 三井住友FGの場合は、「連結損益計算書」と「連結包括利益計算書」を別建てで表示している(「損益および連結包括利益計算書」として1つの計算書として表示することも可)。「連結損益計算書」によって、当期純利益(損失)が示され、「連結包括利益計算書」によって、「当期包括利益(損失)」が示されている。当期純利益に「税引き後のその他包括利益」を加えたものが、「当期包括利益合計」となる。

 「当期純利益」が最終的な期間損益を表し、それに期間中の資産・負債の価値の変動を表す「その他包括利益」を加えたものが、「包括利益」だといえる。「その他包括利益」は、有価証券の評価損益など資産・負債の評価に関わるものが多いので、相場変動の影響を大きく受ける。このため、包括利益も同様の影響受けることになる。

 つまり、資本の増減は、期間損益(当期純利益)と資産・負債の価値の変動によって起こるので、その両方をまとめた(包括した)ものが「包括利益」といえる。

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