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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略(9)

セブンイレブン vs. ローソンに見る出店戦略と
流通業界のコスト管理にメスを入れる!

高田直芳
公認会計士
2010/12/9

コンビニエンス業界で最も大切なのは、流通コストの最適化だ。これは「商品1個当たり」の変動費として扱われるが、「複利運用の連鎖」を考慮するならば、固定費についても考える必要がある。(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2009年6月5日)

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 この時期はすでに2009年3月期に係る決算発表が一通り終わったので、3月決算会社の総括をすべきところである。ところが話題が多すぎて、どこから手を付けていいのかがわからない。

 本連載で過去に取り上げた自動車業界(第1回第2回第3回)や電機業界(第4回第5回第6回)に係る本決算の総括については、「三重銀総研」主催の講演会で語らせていただく。「ここだけの話ですがね」というオフレコは、東京や大阪のような大都市で行なうものではなく、四日市市という地方の片隅で、少人数相手に行なうからこそ味わい深い内容になる。

 ということで今回は、前回前々回と続けてきた小売業界の締めとして、コンビニエンスストア業界を扱う。実は、筆者はコンビニでアルバイトをした経験がある。女子高校生たちと一緒に、同じ時給で働いたことがあるのだ。

 別に恥ずかしいことだとは思っていない。筆者が制作している原価計算システムのノウハウは、そのすべてが現場体験で得たものだからだ。空調のきいたオフィスにこもって、理論書を読んで組み立てられた「観念的システム」と同列に見られるほうが、よほど心外である。

「魚鱗型」セブンイレブンと「鶴翼型」ローソンの出店競争

 今回は決算書以外のデータに注目して、セブンイレブンとローソンを比較してみよう。そう思い立ったのは、筆者の住む小山市で、セブンイレブンの店舗が異常に多いと感じているからである。自宅から駅へ行くまでの5キロ程度の距離で、どのようなコースを通っても、少なくともセブンイレブンの看板を3カ所は見る。

 栃木県の県庁所在地である宇都宮市と比べて、「出店数」や「1店あたりの人口」を調べた結果が〔図表1〕である。セブンイレブンの「1店あたりの人口」を見比べると、宇都宮市(6060人)と小山市(5621人)では小山市のほうが少なく、市街地がいかにセブンイレブンの看板で溢(あふ)れかえっているかがわかる。

〔図表1〕宇都宮市と小山市におけるセブンイレブンとローソンの比較

 全国規模の出店数を調べたところ、セブンイレブンは約1万2000店舗であり、ローソンは約8600店であるから、〔図表1〕の「出店数」の比較で、セブンイレブンがローソンよりも2倍以上の店を展開していることがわかる。

 ただし、ローソンが全都道府県へ広く出店しているのに対し、セブンイレブンには空白地域が存在する、という戦略上の違いがある点には注意をしなければならない。例えば、東北地方でいえば青森と秋田、四国全県(徳島、香川、愛媛、高知)、それから鹿児島などにはセブンイレブンが存在しない。同社のこうした出店政策は一般的に、「ドミナント戦略」と呼ばれる。

 軍事戦略上の隊形に例えるならば、ローソンは「鶴翼型」であり、セブンイレブンは「魚鱗型」と表現することもできる。消費不振などにより店舗の統廃合は今後、加速すると予想されており、ツルもサカナも大忙しの列島大改造と言えよう。

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