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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略(22)

ソニー・富士通・NECの「健全なる赤字決算」

高田直芳
公認会計士
2011/11/11

今回はエレクトロニクス業界のソニー・富士通・NECの、2009年9月期決算を検証する。この3社は、経営分析対象となりにくい「健全なる赤字決算」を続ける「難攻不落トリオ」である。(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2009年12月18日)

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 前回コラム(官業ビジネス編)でお約束した通り、今回はエレクトロニクス業界のソニー・富士通・NECの、2009年9月期決算を検証する。

 今回取り上げる3社は、経営分析対象となりにくい「健全なる赤字決算」を続ける「難攻不落トリオ」である。まず、2009年9月期までの、四半期ごとの決算数値(純額ベース)を並べるところから話を始めよう。


 「利益」のところに、これだけ連続して▲印が付くのも珍しい。「サバイバル経営戦略」の腕が鳴るというものだ。

 なお、富士通の2009年9月期の当期純利益725億円には、ファナックなどの株式売却益895億円というカサ上げが含まれているので、富士通も実質的には赤字決算の連続であることを付け加えたい。

2008年冬以降、
「景気の底」が見えないソニーの苦悩

 前回コラムでも述べたように「健全なる赤字決算」で推移している企業の経営分析ほど難しいものはない。

 糸口を見つけるために、〔図表1〕をベースにして、第1回コラムから登場させている「タカダバンド」を各社について描いてみたところ、面白い現象に気が付いた。第20回コラムのトヨタで紹介した「損益デッドクロス」が発火点になったのである。

 最初に〔図表2〕で、ソニーの損益デッドクロスを見ていただこう。

 

 ソニーの場合、09/3(2009年3月期)に損益分岐点売上高が実際売上高を上回り、赤丸で染めた「損益デッドクロス」が出現している。

 第20回コラムで紹介したトヨタの場合は、いずれゴールデンクロスになるであろうという期待感があったが、ソニーの損益デッドクロスの先は「まだ底が見えない」といった感じがする。

 話を四半期前に戻して、08/12(2008年12月期)を見ていただきたい。赤い線で描いた最大操業度(企業の利潤を最大にする売上高)と、青い線で描いた予算操業度売上高(量産効果を最も発揮する売上高)に囲まれたタカダバンドが、急降下している。

 その理由を知るには、第7回コラム(ユニクロ編)で紹介した「タカダデフレーター」を示すのがわかりやすい。これは季節変動を除いた後の、業績の「パニック度」を表わす指標だ。

 

 〔図表3〕において黒い線で描いた「対前年同月増減率」から、急降下の事情を推測するのは難しい。ところが、青い線で描いたタカダデフレーターには顕著な現象が見受けられる。まず、07/12(2007年12月期)のクリスマス商戦では、そこそこの成功を収めたのだろう。パニック度は42.9%にまで上昇している。

 その1年後の08/12(2008年12月期)も相応の努力をしたのであろうが、パニック度は逆に▲74.9%まで落ち込み、この時期のクリスマス商戦は大いに「盛り下がって」惨敗したことを示している。これが〔図表2〕でタカダバンドが大きく下降した原因のようだ。

 翌四半期(2009年3月期)はその反動でパニック度が142.3%にまで達し、ソニーの業績は2008年冬から2009年春にかけて、てんやわんやの状態にあったと推測される。

富士通を経済理論で分析!
突きつけられた厳しい結果とは

 次は、富士通の損益デッドクロスである。

 

 富士通の場合、09/3(2009年3月期)以降に面白い現象が2つ生じている。

 1つめは、赤色の最大操業度売上高と青色の予算操業度売上高の上下関係が、点B(ここを損益限界点と呼ぶ)のところで逆転していることだ。

 2つめは、緑色の損益分岐点売上高が、赤色の最大操業度売上高と重なって推移していることである。〔図表4〕では緑色の線が、赤色の線を上書きしている点に注意して欲しい。

 〔図表4〕において、(1)Aから点Bへ至る過程、(2)点Bの状態、(3)点BからCへ至る過程、それぞれは何を表わすか。何も難しいものはない。次に示すミクロ経済学の理論で、簡単に説明できる。

 ミクロ経済学の企業行動論などでは、〔図表5〕の条件を必ず学ぶ。

 

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