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IFRSで経営管理をレベルアップ(1)

IFRSベースの経営管理を実現する4つの要件

伊藤雅彦
株式会社日立コンサルティング
2010/1/28

会計基準の見直しというIFRS対応を契機として、経営管理機能の充実化と、そのために求められる予算管理のあり方について論じてみたい。企業はIFRS対応を生かして「強い経営体質」を作り上げることができるだろう(→記事要約<Page 3>へ)

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 IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)とは、文字通り財務報告に係る基準であるが、その影響は単に財務諸表作成作業にとどまるものではなく、グループ経営の経営基盤を強化し、連結ベースでのバランスシート(B/S)マネジメント、ひいては企業価値向上に向けた財務管理、財務戦略の強化を要求しているといえる。本連載では、会計基準の見直しというIFRS対応を契機として、経営管理機能の充実化と、そのために求められる予算管理のあり方について論じてみたい。また、ここ数年「制管一致」というキーワードがしばしば見受けられるが、IFRS時代の制度会計、管理会計それぞれの考え方やそれらを実現するための仕組みについても本連載の中で触れていくこととする。

IFRSのキーコンセプト

 改めてIFRSの本質に立ち返ってみると、海外の基準が日本に押し寄せてきているという見方ではなく、昨今の経済情勢や経営環境、株式市場の国際化を背景とし、企業経営の国際的な比較可能性を強く求めた結果であると考えられる。

 例えば、IFRSのキーコンセプトの1つに「資産負債アプローチ」がある。これはキャッシュフロー重視の経営やROE(自己資本利益率)などの資本効率が重視されていることを受け、損益計算書(P/L)を中心に企業財務を見る考え方から、キャッシュをどれだけ産み出したかという、B/Sを中心とした企業価値の増大といった観点も含めた考え方へシフトしてきているという動きを反映したものである。

 また、資本・株式市場の国際化が進むことにより、グローバルの株主・投資家を意識した経営や財務情報開示が求められている。株主・投資家は正確であっても古新聞のような過去情報ではなく、自らの投資が将来どのくらいの価値を産み出すかという観点でものを見る。そのため将来予測を組み込んだ評価である「公正価値評価」であったり、B/S各項目の現在価値を通して、自身の持分が現時点でいくらなのかを知る情報が必要とされている。

 さらに、各企業の海外進出やグローバルでのM&Aなど、企業活動のボーダーレス化が進んでおり、グローバルでの経営管理やグループガバナンスの強化の必要性が一層強く訴えられてきている。これらを反映した結果として「グループ会計方針の統一」や「マネジメントアプローチ」といった方針がIFRSに求められている。

 IFRSのもう1つの大きな特徴が「原則主義」である。会計基準で事細かに会計処理を規定するのではなく、各企業の経営者が自身の意思表示として作成する財務諸表に自らの経営意思を反映させるべく、企業に自らが認識し採用した会計処理を適用し、その説明も記載するというのがIFRSの基本である。

IFRSのキーコンセプト(日立コンサルティング資料から作成、以下同様)

 IFRSを表面的な制度だけでなく、その背景にある意味にまで踏み込んで解釈すると、単なる欧米中心の基準ではなく、経済のトレンド、さらにいうとグローバルに事業活動を展開し株式市場に上場している企業に求める財務情報開示を、原則的に定義したものであることが分かってくる。グローバルな競争にさらされている多くの日本企業も受動的に対応するだけでなく、IFRSのキーとなる考え方を自社の経営に採り入れて、そこで得られる情報をうまく活用することで、国際競争に打ち勝つ経営管理基盤を整備し、強力な経営システムを構築する絶好の契機だと認識すべきであろう。

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