企業価値向上を支援する財務戦略メディア

IFRSで経営管理をレベルアップ(2)

連結予算をIFRSベースで編成するための第一歩

伊藤雅彦
株式会社日立コンサルティング
2010/3/17

上場企業は企業価値の向上を意識した単なる損益中心主義から脱して、企業価値向上を志向する経営スタイルに自らを変革する必要がある。この取り組みの第一歩が、IFRSをベースにした貸借対照表とキャッシュフローの予算編成と業績のモニタリングだ (→記事要約<Page 3>へ)

前のページ1 2 3

PR

開示(IR)のための管理会計

 IFRSの特徴の1つに原則主義が挙げられる。欧州企業のアニュアルレポートでは、ノートといわれる注記が2005年のIFRS適用以降、大幅に増加している。これは会計基準であるIFRSの規定が、原則主義かつ基本的で簡略なものであることに由来している。すなわち、各企業は自らが実施した経済取引をどのように認識、理解して、このような会計処理を行ったかということを開示する必要がある。これも連結ベースで行われなければならない。

  日本基準における一般的な注記作成作業は、決算数値がある程度締まってから、前年度対比などを行い、差分の大きな項目について情報を収集して短期間で行っている場合が多いと思われる。しかし、膨大な量の情報を収集し、適切な開示を短期間で行うことは至難の業である。そこで発想を転換して、月次の予実対比分析を充実させるという方法があるだろう。このとき、注記の開示のための準備作業を迅速に進めるためには、工夫が必要だ。

 また、各グループ会社は決算早期化の流れの中、社内提出期限内に財務数値のみの連結会計用提出決算書を提出(送信)しなければならない。一方、注記のための情報は予算や前年同月と比較をして、差分の大きなものについて原因分析をし、それをとりまとめて提出する必要がある。そのため財務数値と原因分析結果のテキスト情報に対し、時差をもって収集したいというニーズが存在する。

 これを実現するためにどの会社も持ち合わせている会社コード、セグメントコード、勘定科目コードを利用し、どの月、もしくは四半期に取り引きが発生したかを管理することで、タイミングをずらして収集することが可能になる。本社側で受領した際にも、この情報を縦横無尽に利用することで、決算開示準備の効率化とともに予算管理、ひいては内部統制の社内評価にも活用可能だ。一石三鳥にもなるため再分析の情報収集プロセスと仕組みを検討しておくことも、その後の予算管理の運用を低コストで安定させ、かつ効率的なものとするためには必須であると考える。

事業モニタリングと内部統制

 グループ最適を志向した企業価値の向上に取り組んでいくに当たって、事業モニタリング(どれだけ業績を伸ばしたか)と、内部統制(いかに適切に業務処理を行ったか)は、車のアクセルとブレーキのような関係であるといえる。事業活動を、広い領域で迅速に実施しようとする場合には、内部統制制度のような法的な要求だけではなく、自社で認識している潜在的なリスクの監視とともに、事業計画上、キーとなる取り組みやKPI(経営指標)を組織的、有機的にモニタリングする仕組みが必要である。また、この報告は経営層にも直接届けられる必要がある。

 このような内部統制の仕組みをコンセプトを定義して実際の内部監査で運用し、グループ全体を網羅的にカバーしながら進めていくと、内部統制の実効性が向上して全社統制レベルが高まり、内部統制にかかる監査報酬や社内の運用コストを削減することにもつながることになる。

 以上、本稿で述べてきたように、IFRSを単なる会計基準の変更対応に終わらせずに、グループ全体を視野に入れた経営管理基盤の充実化という観点から取り組むことで、継続的に企業価値を向上させていく経営システムを自社の事業活動にビルトインさせていくことができる。

 いよいよ、IFRSの実際の対応作業に着手する企業が増加してきた。各企業の検討段階において、本稿で述べた内容が、いくばくとも参考になれば幸いである。

筆者プロフィール

伊藤 雅彦(いとう まさひこ)
株式会社日立コンサルティング

シニアディレクター

会計事務所で税務を担当後、外資系企業の韓国法人と日本法人でCFO(最高財務責任者)を10年間務める。VCF(Value Create Finanace)をコンセプトに決算早期化、シェアードサービス設立、経営情報充実化、会計システム導入などを担当し、現在に至る。

要約

 BS、C/Fの予算編成を連結ベースで実施せずに、グループ最適な企業価値の向上を目指した意思決定や事業モニタリングは難しい。損益計算書(PL)の規模拡大だけではなく、その利益がどれほどの投下資本で獲得されたかが、企業価値経営の基本になってくる。

 上場企業は企業価値の向上を意識した単なる損益中心主義から脱して、企業価値向上を志向する経営スタイルに自らを変革する必要がある。

 この取り組みの第一歩が、BSとC/Fの予算をグループベースで編成し、それを経営指標に関連付けて分解して月次などのサイクルで行われる業績のモニタリングと、日々の意思決定を行うに当たっての価値基準を提供することである。そしてこれからのIFRS適用を見越すと事業計画や予算もIFRSベースで作成する必要がある。単に実績としての連結決算数値がIFRSベースで作成できるだけではなく、予算もIFRSベースかつ、グループベースで編成されることが重要である。

 このIFRSベースの予算管理を大きなコストをかけずに実現する方法の1つとして、連結会計システム内の各社のIFRS組み替え後で連結消去前のデータを保持し、IFRSベースの予算数値と比較分析することが挙げられる。この方法も検討に値するだろう。

前のページ1 2 3

@IT Sepcial

IFRSフォーラム メールマガジン

RSSフィード

利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | サイトマップ | お問い合わせ
運営会社 | 採用情報 | IR情報

ITmediaITmedia NewsプロモバITmedia エンタープライズITmedia エグゼクティブTechTargetジャパン
+D+D LifeStyle+D PC USER+D Mobile+D Shopping
@IT@IT情報マネジメント@IT MONOist@IT自分戦略研究所
Business Media 誠誠 Biz.IDBARKS