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連載:IFRSと経営

IFRSがもたらす負荷、そして経営メリット

野村直秀
アクセンチュア株式会社
2009/7/23

IFRS導入は経営にどのようなインパクトを与えるのか。挙げられるのは業務プロセスやITシステムへの影響。教育の重要性も増す。しかし、負荷だけではない。IFRSが実現する「徹底した標準化と集約化」は経営の効率化、高品質化を生み出す(→記事要約<Page 3 >へ)

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 6月16日に金融庁が公表した「わが国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)」によると、2015年あるいは2016年から、わが国の上場企業は、その財務報告の基準としてIFRSを適用することが義務付けられることになります。それは企業が上場を維持するためには、IFRSで自社の連結財務諸表を作成して開示することが金融商品取引法上要求されることを意味します。つまり、経営としては、IFRSで自社の財務報告を適正にかつ適時に実施する責務を負うことになります。

 経営者として、その責務を全うするためには、自らその概要を正しく理解するとともに、自社の財務状態そのものや、業務プロセス・IT・人事組織などに与える影響を理解して、準備しておくことが必要となります。

 前回は、IFRSが世界的に導入されている背景とともに、その概要をご説明しました。今回は、このIFRSの導入が経営的にどのようなインパクトをもたらすのかを中心に議論したいと思います。

業務プロセスおよび関連システムに対する影響

 会計制度の変更は、各企業の基幹業務にもさまざまな影響を及ぼします。例えば2009年4月には、日本の会計基準でも工事進行基準が原則法として導入されました。主な対象は建設・重電・ソフトウェア開発業界などです。対象となる業界では、自社の営業システムや原価計算システムを変更して新基準への対応を行いました。

 IFRS導入で多くの企業が影響を受ける業務プロセスとしては、営業プロセス、固定資産管理プロセス、研究開発プロセス等が想定されます。

 営業プロセスでは、売り上げの認識が、従来の出荷時点と比較して遅くなるケースが想定されます。出荷情報であれば、自社の営業あるいは物流業務の一環として社内で取得および管理できますが、IFRSによって着荷あるいは検収時点が売上げの認識時点となると、経理処理を行うために、当該情報を新たに取得する必要があります。これは納入先・物流業者の協力や、営業担当者による作業が必要になることが予想されます。

IFRS対応で求められる財務・業務プロセス、ITシステムの見直し

 固定資産プロセスでは、減損会計などの一部の処理を除き、法人税法上の規定を意識した経理処理が広く活用されてきました。これもIFRSの導入により、法人税法との乖離(かいり)は益々大きくなることが想定されます。具体的には、耐用年数の決定は、当該資産の経済的な消費パターンを毎期見直すことが要求されます。税法上の耐用年数をそのまま(理論的な裏付けなく)利用することは認められません。また、減価償却を行う単位も同様にその重要な構成要素を消費パターン別に識別して設定することが求められます。例えば飛行機の場合は、機体部分とエンジン部分に分けて減価償却を行うことが求められます。

 研究開発プロセスは、日本の会計基準上では全額費用処理されてきましたが、IFRSでは、当該開発が将来キャッシュフローを生み出す確実性が高いと判断された段階から資産計上されることになります。各企業では開発プロセスにおいて、段階的な開発ステップや実現性評価指標を確立して運用していると思いますが、それらのどの段階がIFRSで規定する資産計上に値する段階かを確認して、当該段階以降のコストを把握し、資産計上することが求められます。

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