企業価値向上を支援する財務戦略メディア

連載:IFRS準備のイロハ

IFRS対応、いつから準備するのがベストなのか

河辺亮二、伊藤雅彦(監修)
株式会社日立コンサルティング
2009/8/3

IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)が2015〜16年に強制適用と仮定した場合に、企業にとって必要となる準備作業を会計処理、業務プロセス、ITシステムの3つの観点から解説。現実的で効率的なIFRS導入のロードマップ(例)を示す(→記事要約<Page 3>へ)

1 2 3次のページ

PR

 本連載では、IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)が2015〜16年に強制適用と仮定した場合に、企業にとって必要となる準備作業を会計処理、業務プロセス、ITシステムの3つの観点から解説する。そして、導入初年度にどたばたすることがないように、現実的で効率的なIFRS導入のロードマップ(例)を示す。

IFRS適用に向けた取り組み

 金融庁が6月30日に発表したIFRSの取扱いに関する中間報告(リンク)では、わが国の上場企業の連結決算開示へのIFRS適用は2015年から16年にかけて段階適用もしくは、強制適用される予定である(単体決算開示は日本基準のままの見通し)。金融商品取引法の有価証券報告書の開示に際しては、公認会計士による監査報告書の添付が義務付けられているため、IFRSベースでの財務諸表監査は遅くとも2014年から開始される。そのため2013年度の監査においては、担当会計士からIFRS準拠を意識した相当数の監査上の要改善項目の指摘が行われることが想定される。

 上記は、IFRS適用初年度(この場合、2015年度[2016年3月期])において必要な開示対象の財務諸表のセットである。財務諸表開示では前年度からの財務ポジションの推移を明示するために、最低2年分の純資産の変動(包括利益計算書)と、キャッシュフローの変動(キャッシュフロー計算書)の報告が必要である。さらに、2年分の財務ポジション推移を開示するために、過去3年分の財政状態計算書の開示が求められる。このことは、強制適用時期と予定される2015年度適用初年度の会社では、IFRS適用の準備年度にあたる2013年度の決算で、日本基準での決算開示に加えて、IFRSでの決算書の作成が必要となることを意味している。IFRSと国内基準で決算内容が大きく異なる会社では、適用に向けた準備作業を早期に開始することが必要になることは想像に難くない。

 さらに、IFRSは原則主義を採用している。欧州の事例では財務諸表の注記(フットノート)の分量は、IFRS適用前と比較して、2〜3倍に増大したとの報告も聞かれる。このことは、IFRSでは企業の選択する決算方針の適格性について、これまで以上に客観的な検証と説明が必要となることを意味している。財務諸表監査で担当会計士から求められるであろう会計情報についても、企業が適用した会計方針を適確に説明・論証する必要がある。

 そして、何よりも会社自身が適用方針に対して確固たる根拠、理由を明確にしておく必要がある。そのためには、IFRSの会計処理についての知識を社内に蓄積するとともに、2015年度決算開示の本番一発ではなく、前年度の2014年度決算からIFRSベースでの開示資料も並行して準備し、企業自らが、会計情報を積極的に説明できる状態を構築しておく必要がある。また、必要に応じて担当会計士から選択する会計方針に関して意見を求めておく、などの対応が現実的であろう。

1 2 3次のページ

@IT Sepcial

IFRSフォーラム メールマガジン

RSSフィード

イベントカレンダーランキング

@IT イベントカレンダーへ

利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | サイトマップ | お問い合わせ
運営会社 | 採用情報 | IR情報

ITmediaITmedia NewsプロモバITmedia エンタープライズITmedia エグゼクティブTechTargetジャパン
LifeStylePC USERMobileShopping
@IT@IT MONOist@IT自分戦略研究所
Business Media 誠誠 Biz.ID