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業種別IFRSガイド(1)

グローバル製造業がIFRS適用で苦労するのはここ

垣内郁栄
IFRS 国際会計基準フォーラム
戸野本時直(監修)
アクセンチュア 製造・流通本部 エグゼクティブ・パートナー
2010/3/10

「多品種、高頻度、少量生産」に直面するグローバル製造業。IFRSを適用するうえではいくつかの会計基準を確認する必要がある。ERPなどのITシステムについてもグローバルで標準化し、できるだけ運用の負荷を下げることがポイントとなるだろう。(→記事要約<Page 2 >へ)

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現場の力を生かしつつ標準化

 これら会計上の要件に対応するにはITシステムが欠かせない。グローバル展開している製造業企業はすでにERPなどの会計パッケージを活用するのが一般的だが、ポイントはその会計システムをグローバル展開することだ。つまり、世界各地の拠点も含めて、単一に近いERPシステムでサポートすることが、IFRS適用を効率的に行ううえでの答えの1つとなる。日本の製造業は現場が力を持ち、現場主導の業務プロセスと改善が競争力の源泉になってきた面がある。IFRS適用では、そのようなよい面をできるだけ残しながらも、会計など、どの拠点でも共通するプロセスにおいてはできるだけ標準化することが重要になるだろう。

 セグメント会計のマネジメント・アプローチに代表されるようにIFRSは従来の財務会計と管理会計を合わせた側面を持つ。IFRSを適用する企業は否応なく、制管一致を実現する方向に向かうといえるだろう。財務会計については現状でも多くの企業で迅速で正確なレポーティングをしている。だが、管理会計については千差万別で、企業間の差が大きい。特に世界各地の生産・販売拠点では月次で財務データを集計・報告するのが精一杯という製造業企業も多いだろう。

 しかし、例えば前述のIFRSでの固定資産関連の変更だけを見てみても、減損会計や資産除去債務など、世界各地の工場で現地事情を熟知したうえで処理を進めなくてはならない要素が数多く出てくることが想定される。資産除去債務などは単に法的な内容のみに限定されない可能性が高いからだ。そのような状況で世界各地の工場などの拠点でも、いままで以上にきめ細やかなリスク管理やビジネスのモニタリングが必要となってくる。

 その際にネックになるのが人材確保だ。各社によって事情は異なるが、現在においても世界に散らばる生産・販売拠点に対して、経理に精通し本社と連携ができる人材を適切に配置できずに困っている製造業の企業は多いのではないだろうか。これがさらにIFRSにも精通した経理の人材を世界中に配置する必要が出てくることになる。その困難さを考えると、世界の拠点ごとに経理処理を統合するシェアードサービス化や、経理業務のビジネス・プロセス・アウトソーシングを検討する製造業企業も現われるだろう。これまでは税法だけでなく会計基準まで各国・地域で異なっていたために、なかなか実現に至らなかったケースでも、IFRS対応を契機に一気にそこまで踏み込み、経理力の向上とコスト削減を同時に成し遂げられる可能性がある。

トップマネジメントを巻き込む

 IFRS適用のためのプロジェクトはグローバル展開も意識しながら進める必要がある。まずはIFRSに基づく会計処理ポリシーを決めて、主要拠点をターゲットにインパクト分析を行い、会計処理や業務プロセス、ITシステムへの影響度を測る。特定の主要拠点にIFRSを適用し、そこで得られたドキュメントやノウハウ、ITシステムなどをテンプレートとして、ほかの拠点、地域に順次展開することが成功の近道だろう。

 プロジェクトの進め方と同様に重要なのは、経営層などトップマネジメントを早い段階から巻き込むことだ。IFRS適用を会計処理だけに影響する取り組みではなく、企業経営そのものを変える可能性があるものだということを認識してもらう必要があるだろう。同時に、業務プロセスやITシステムにかかわるほかの部署のスタッフもプロジェクトに参加してもらうことがスムーズなIFRS適用に結び付く。やもすると、IFRS対応は経理部門の仕事と認識されることが多いが、全社にインパクトがあるものだという課題認識を社内で醸成することが肝要である。

要約

 グローバル製造業は「多品種、高頻度、少量生産」の流れに直面している。加えて生き残りのためには自社リソースの有効活用も欠かせない。パートナーなど複数の関係者が入り交じる中での製品品質の維持やITシステムによる管理も求められる。

 このようなグローバル製造業がIFRS適用でまずは確認したいのは有形固定資産の扱いだ。特に減価償却や耐用年数など、従来の日本の税法との違いを認識する必要があるだろう。また、無形固定資産もチェックしたい。IFRSの研究開発費では、条件を満たす場合、開発時の支出を資産計上する必要がある。製造業企業は研究費と開発費を分けて管理する仕組み、有形固定資産と同様に無形資産を評価し、残存価額、耐用年数を認識する必要があるだろう。

 これら会計上の要件に対応するにはITシステムが欠かせない。グローバル展開している製造業企業はすでにERPなどの会計パッケージを活用するのが一般的だが、ポイントはその会計システムをグローバル展開することだ。IFRS適用では、現場の力を生かしながらも、会計など、どの拠点でも共通するプロセスにおいてはできるだけ標準化することが重要になる。

 IFRSを製造業のグローバル拠点に展開する上で重要になるのが人材確保だ。現在でも世界に散らばる生産・販売拠点に対して、経理に精通し本社と連携ができる人材を適切に配置できずに困っている製造業の企業は多い。これがさらにIFRSにも精通した経理の人材を世界中に配置する必要が出てくることになる。シェアードサービス化や、経理業務のビジネス・プロセス・アウトソーシングを検討する製造業企業も現われるだろう。

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