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連載:EBS、HyperionユーザーのIFRSガイド(1)

OracleアプリケーションのIFRS対応を読み解く

村川洋介、海上和幸
IBM ビジネスコンサルティング サービス株式会社
2009/11/9

オラクルの業務アプリケーションである「Oracle E-Business Suite」と「Oracle Hyperion」を対象に、各アプリケーションの特徴とIFRS対応プロジェクトを検討する上での課題を概観する(→記事要約<Page 3 >へ)

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IFRS移行の影響

 「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」(以下、中間報告、関連記事)によると、早ければ2015年からIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)が強制適用されることとなる。強制適用予定まではまだ5年余りあるわけであるが、その間においても2007年の東京合意に基づくコンバージェンスが進行し、日本の会計基準そのものがIFRSに収斂(しゅうれん)していくため、毎期その対応が必要になってくる。

 それに加えて、5年余りという比較的長期間であるため、IFRS対応とは別にビジネス上の要求からプロセスやシステムの変更、あるいは新規導入が必要になってくることも十分考えられる。当該プロセスの会計処理が日本基準とIFRSで異なる場合、IFRSの要件の取り込み方《(1)設計時にIFRS要件も含める、(2)日本基準だけで設計・構築を行い、IFRS移行時に改修を行う、(3)IFRS移行時まで暫定的な対応を行っておき、移行時に根本的対応を行う、など》が課題となる。

個別財務諸表の対応

 IFRSは上場企業の連結財務諸表に適用されるわけであるが、個別財務諸表の取り扱いをどうするかについては、日本では会社法や法人税法をはじめ企業の決算に関係するそのほかの制度との調整には時間を要すると推定されるため、強制適用の時点においては、これらの制度目的の決算とIFRSに基づく決算が要求されることが予想される。これに対応するために種々の方法が考えられるが、大きく分類すると

(1)連結各社においてIFRSベースの帳簿とその他制度目的の帳簿を複数持つ
(2)連結各社ではその他制度目的の帳簿のみを持ち、IFRSベースに修正するためのデータを別途作成して連結決算時に反映させる

となる。連結ベースのマネジメントの観点からすると(1)が望ましいケースが多いと思われるが、(1)(2)いずれの場合でも決算工数が大幅に増加することが避けられず、情報システムによる支援が課題となる。

適用時期

 中間報告では、所定の条件(参考記事:金融庁企業開示課長が明かす「任意適用の4条件」)を満たす企業には、2010年3月期からIFRSの任意適用を認めることが適当であるとされており、強制適用前にIFRSに移行することも選択肢の1つとして検討の課題となる。実際、2015年を待たず、IFRSに移行することを表明する企業も出てきている。強制適用まで待つか、任意適用を目指すか、任意適用の場合いつの決算期を目標とするか、などはそれぞれの企業の環境によって最適解が異なる。

情報システムの対応

 IFRSへの移行は、業種・業態・マネジメントのタイプなどによってその影響の範囲や規模はさまざまと思われるが、企業活動による経済事象の認識・測定・記録、そして開示という一連のプロセスに大きな変化をもたらすことになる。従って、広範囲にわたってそのプロセスの遂行を担っている情報システムについても、単に会計処理のロジックが変更になる、といったことに留まらない対応が要求されることになる。

 会計をはじめ業務処理にERPを採用している場合には、当該ERPのIFRS対応機能の内容およびそのリリース時期が、IFRSへの移行対応プロジェクトのスケジュールに大きく影響することになる。また、現行バージョンの契約期間やサポート期間なども考慮する必要がある。

 本稿では、オラクルの業務パッケージを採用している企業が、IFRS対応プロジェクトを検討するに当たって考慮すべきこれらのポイントを概観する。

オラクル ERPパッケージの特徴と課題

 それでは、オラクルの代表的なビジネスアプリケーションである「Oracle E-Business Suite」(以下EBS)および「Oracle Hyperion」を対象に、各アプリケーションの特徴とIFRS対応プロジェクトを検討する上での課題を概観する。

各アプリケーションの特徴

 EBSは、販売・購買・生産・プロジェクト管理などの個別業務プロセスから、財務諸表作成の会計プロセスまでを統合的に管理するERP(Enterprise Resource Planning)パッケージである。現時点(2009年10月)の最新バージョンはR 12.1となる。

 またHyperionは、連結会計、予算管理、各種分析やシミュレーションとレポーティング機能を持つEPM(Enterprise Performance Management)アプリケーションで、現時点の最新バージョンはSystem 11となる。

 以下、(1) EBSの会計システム機能、(2) EBSの個別業務機能、(3) Hyperionの機能について、IFRS対応の観点から順に概要を見ていくことにする。

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