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連載:IFRS基準書テーマ別解説(1)

「収益基準」を5つの観点から見てみよう

榎本尚子
仰星監査法人
2009/10/5

IFRSを構成する主要な基準書をテーマ別に解説する。初回は、どの企業にも少なからず影響のある収益に関する基準を取り上げる。IFRSでは、商品販売やサービスの提供など収益に関する一般的な基準をIAS18号で、工事契約に関する基準をIAS11号で定めている。

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 IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の日本への導入が具体的に議論されるようになってから、数年が経過している。2005年のEU域内企業のIFRS適用開始、2007年の東京合意(日本基準とIFRSのコンバージェンスの促進)、2008年の米国でのIFRS導入決定と、世界中でIFRS導入へ向けて動きが加速している。2009年6月には企業会計審議会から「わが国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」が公表され、日本も公式にIFRSの導入へと舵を切った。

 日本企業の多くは先行する一部の企業を除き、「中間報告」を受けてIFRS導入対応をこれから本格化するとみられる。IFRSの歴史的経緯や特徴などを概括的に理解し、今後具体的に自社の会計方針を検討し始める企業も多いであろう。

 一般にIFRSと呼ばれるものの中には、現在の基準設定主体であるIASBが公表するIFRSと、IASBの前身のIASCが公表したIAS及び両者の解釈指針が含まれる。

基準
設定時期
基準設定主体
解釈指針作成主体
IFRS
(国際財務報告基準)
1973〜
IASB
(国際財務会計基準審議会)
IFRIC
(国際財務報告解釈指針委員会)
IAS
(国際会計基準)
2001〜
IASC
(国際財務会計委員会)
SIC
(解釈指針委員会)

 個々の基準はIFRS(IAS)○号、解釈指針はIFRIC(SIC)○号と呼ぶ。IFRSとIASは名称が違うが適用の優先度には差はない。IASが改訂される場合、改訂IASとして公表される場合と既存のIASを廃して新たなIFRSが公表される場合がある。

 この連載では、全十数回にわたり主要な基準を解説する。日本では2015年か2016年ごろに強制適用の可能性があるので、現行基準とともに進行中の基準改訂プロジェクトの内容にも言及する。なお、本文中の意見にわたる部分は筆者の私見である。

収益に関する基準

 初回は、どの企業にも少なからず影響のある収益に関する基準を取り上げる。IFRSでは、商品販売やサービスの提供など収益に関する一般的な基準をIAS18号で、工事契約に関する基準をIAS11号で定めている。一方、日本基準では収益全般を包括的に扱う基準はなく、企業会計原則の実現主義の原則により収益認識が行なわれている。

 本稿では主要な検討項目を以下の1から4で解説し、IASBと米国FASBの間で進められている収益認識プロジェクトについて5で述べる。

  1. 認識
  2. 取引の識別
  3. 総額表示と純額表示(取引額で売上計上ができない場合)
  4. 開示
  5. 収益認識プロジェクト

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