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IFRS関連書籍 2009年冬のブックガイド

 

時間がとれる年末年始にぜひ読んでいただきたいIFRS関連の解説書籍を紹介します。経営やITシステムへの影響分析、各社の動向などそれぞれに強みと特色を持つ3冊です。3冊セットのプレゼント(締め切りました)も行います(編集部、前回のブックガイドはこちら

欧州の企業名を挙げてIFRSの影響を分析

国際会計基準が変える企業経営

●五十嵐則夫=著
●日本経済新聞出版社 2009年10月
●2400円+税 978-4-532-31457-6
●出版社のWebサイト

 IFRSについて生まれた背景から各国の対応、会計基準の内容までをバランスよく説明した書籍だ。その中でも注目されるのはすでにIFRSを適用している欧州各国の対応を詳しく説明している点だ。この書籍が主なターゲットと考えていると思われる企業の経営者や経営企画部門の担当者にとっては、この第9章「IFRS導入による連結財務諸表への影響――EUの実例を参考にして」がとても役立つのではないだろうか。

 この第9章では欧州各国の30社について、IFRS導入による当期純利益や、負債・資本比率などへの影響を具体的な数値を挙げながら分析している。特に英国やドイツ、フランス、イタリア、スペインの各国については、具体的な企業名を挙げながらIFRSを採用したことによる当期純利益や、のれん償却などへの影響を詳しく解説する。

 取り上げている企業はBP、テスコ、ドイツ・テレコム、ルノーなど。いずれもIFRS適用前に利用していたローカル基準とIFRSとの差異、その影響を記している。これらの企業と同じ業種の企業であれば、日本基準とIFRS、米国会計基準とIFRSとのギャップ分析、企業業績への影響分析の参考にできるだろう。

 IFRS適用の影響分析は日本企業に対しても行っている。取り上げているのはルノーが出資する日産自動車。ルノーは日産への投資株式を持分用で会計処理をしていて、その評価はIFRSベースで行っているという。日本基準とIFRSとの差異の例として取り上げているのは「開発費の資産計上」で、日産が日本基準で作成している額を、IFRSベースのルノーがどのような修正を加えているかを紹介する。

 第13章では、上記のようなIFRSの先行適用企業の事例分析から分かったIFRS適用のための課題やポイントを説明する。英国での適用を例に挙げて、プロジェクトやITシステム、ステークホルダーとのコミュニケーション、ガバナンス、開示などについて課題とその解決策を挙げている。

〈主要目次〉
第1章 IFRSのグローバル化
第2章 国際会計基準のグローバル化を考えるうえでの基礎―「個性化」対「調和化・統一化」について
第3章 国際会計基準審議会の組織変革のプロセスと組織構造
第4章 IFRS・IASBの全体像
第5章 IFRSのコンバージェンス・アドプションに向けたグローバル戦略
第6章 日本のIFRSとのコンバージェンスとアドプション
第7章 アメリカのIFRS導入のロードマップ(案)
第8章 IFRS導入形態―連結財務諸表と個別財務諸表について
第9章 IFRS導入による連結財務諸表への影響―EUの実例を参考にして
第10章 日本会計基準とIFRSとの相違が連結財務諸表に与える影響
第11章 アメリカ会計基準とIFRSとの差異が当期純利益へ与えた影響
第12章 原則主義と細則主義
第13章 IFRS導入時の課題と学習した内容―EUの事例
第14章 日本におけるIFRS導入の課題

 

ITシステム対応の検討を始めた企業に

IFRS導入ガイドブック

●井上順一=監修/電通国際情報サービス=編
●中央経済社 2009年11月
●3200円+税 978-4-502-22100-2
●出版社のWebサイト

 2009年6月のロードマップ公開後、いわゆる“お勉強”が進んできたIFRS。しかし、一部の企業ではすでにIFRS適用のためのプロジェクトが開始され、特にITシステムを含めた検討が行われている。「IFRS導入ガイドブック」はこのようにITシステムの検討を始めた企業にとって最適の書籍だ。

 その理由は通常のIFRS会計基準の説明に加えて、業務とITシステムの対応ポイントを説明していることだ。第2部の「業務別・IFRS導入ポイント」がその部分。IFRS適用で影響が多いと考えられている収益認識、棚卸資産、有形固定資産、リース、無形資産、金融商品などについて解説する。

 例えば収益認識では会計基準の内容と今後の動向を説明。そのうえで業務、ITシステムの対応ポイントを紹介する。収益認識では「資産・負債アプローチ」における収益の認識を図版を用いて説明。収益認識のさまざまなタイプについて、必要となる業務要件とIT要件を挙げている。実際のビジネスを例に挙げた説明があり、そのままIFRS適用プロジェクトに生かすことができるケースも多いだろう。

 第3部では「システム対応ポイント」としてITシステム全般のIFRS対応を解説する。個別会計システム、連結会計システムにおける総勘定元帳の持ち方やシステム構成例を紹介。システム全般への影響を分析している。

 IFRSプロジェクトは経理・財務部門だけでなく、経営管理部門や事業部門、IT部門など多くの担当者が関わるのが一般的だろう。本書は自らの担当分野とIFRSの関係を分析し、適切にプロジェクトを遂行しようとする担当者に最適といえる。難しい表現を避けて、分かりやすい文章に徹しているのも読者にとって親切だ。

〈主要目次〉
第1部 序論
第1章 IFRS導入による影響
第2章 概念フレームワーク
第3章 初度適用
第4章 IFRS導入プロジェクトの全体像

第2部 業務別・IFRS導入ポイント
第1章 収益認識
第2章 棚卸資産
第3章 有形固定資産
第4章 リース
第5章 無形資産
第6章 金融商品
第7章 企業結合
第8章 従業員給付

第3部 システム対応のポイント
第1章 個別、連結会計システム
第2章 管理会計システム
第3章 システム全体構想

 

「IFRS襲来!」の衝撃を分析

週刊ダイヤモンド 臨時増刊 まるわかり IFRS

●ダイヤモンド社 2009年9月
●743円+税
●出版社のWebサイト

 「IFRS襲来!」と銘打った週刊ダイヤモンドのIFRS特集号(2009年7月18日号)はそれまで経理・財務部門など企業の一部の部門だけで注目されていたIFRSの存在を、一般ビジネスパーソンに広く知らせた。本書はその特集号をベースに、最新データや記事を追加した臨時増刊号。雑誌ならではの切り口の多彩さで、どこからでも読むことができる。

 記事の1つの柱は入門記事。「50分でわかるIFRS」には、IFRSの背景と基本的な考え、用語集、18個のFAQなどがあり、IFRSに初めて触れた人でも概略が理解できるようになっている。

 もう1つの柱は「実務編」のIFRSによる影響分析だ。包括利益や、のれん代の償却、資産除去債務、退職給付債務など日本の会計基準とIFRSとで違いが大きいとされる項目を取り上げて、企業への影響を解説する。具体的な企業名を挙げて、包括利益を採用した場合の数値をシミュレーションし、ランキングで見せているのが目を引く。特に東証1部上場の1655社にIFRSを“仮想適用”させた「会社の『利益』変動ランキング」は圧巻だ。

 実務編ではまた、IFRS適用のためのプロジェクトやITシステム対応についても解説している。これから対応を考える企業の参考になるだろう。欧州とアジアの子会社ですでにIFRSを適用している花王の事例も紹介している。

 本書で目を通しておきたいのがIFRSに関連するキーパーソンのインタビューだ。金融庁の企業開示課長 三井秀範氏、青山学院大学大学院 教授の八田進二氏、IASB(国際会計基準審議会)理事の山田辰己氏、東京証券取引所グループ社長の斉藤惇氏らがインタビューに答えている。

〈主要目次〉
入門編
50分でわかるIFRS
国際交渉の現実──会計めぐり世界標準争いで火花。覇権競う欧米、埋没する日本
IFRS関連の基礎用語集
必ず知っておくべき重要用語
IFRSのイロハ──今なら聞いても遅くない! IFRSにまつわる18の疑問

実務編
IFRSでこう変わる!
早期適用はどこだ! ──水面下で動き出した先陣争い。有力候補十数社の思惑
影響度シミュレーション──企業業績がここまで変わる!? 主要項目別に潜むリスクの全貌
導入への道筋──計4〜5年の長期プロジェクト。準備を入念に全社的な議論を
システム対応──IFRS成功のカギを握る主要7システムでの留意点

データ編
1部上場企業1655社に最新データで仮想適用!
IFRSでどう変わる? 会社の「利益」変動ランキング

 

紹介書籍をプレゼントします

今回のブックガイドで紹介した3冊の書籍「国際会計基準が変える企業経営」「IFRS導入ガイドブック」「週刊ダイヤモンド 臨時増刊 まるわかり IFRS 完全保存版」をセットにして3名の方にプレゼントします。アイティメディアの会員制メディア「TechTargetジャパン」のプレゼントページからお申し込み下さい。

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