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連載:経営財務トレンド(3)

IFRSのベネフィットは後からやってくる

垣内郁栄
IFRS 国際会計基準フォーラム
2009/9/28

財務の比較可能性向上などさまざまなメリットがうたわれるIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)。しかし、適用済みのオーストラリア企業からは否定的な見方が伝わってくる。IFRSのベネフィットを早期に得るにはどうすればいいのか? 豪シドニー大学のシドニー・グレイ教授の講演をレポートする。

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 「IFRSのベネフィットは後からやってくる」。青山学院大学大学院の会計プロフェッション研究科 会計プロフェッション研究センターが9月8日に主催したセミナーで講演した、豪シドニー大学のシドニー・グレイ(Sid Gray)教授はオーストラリア企業のIFRS適用を踏まえ、上記のように話した。「オーストラリアの企業ではIFRS適用にコストがかかり、IFRSのベネフィットはまだ見えない。われわれはIFRSの効果を信じることが必要だ」

 オーストラリアはローカル会計基準のコンバージェンスを経た後、2005年にIFRSに移行した。それでも「オーストラリア企業にとって、とても大きな変更だった」とグレイ教授は話した。グレイ教授はこのオーストラリア企業が経験した「ショック」(同教授)を学ぶことで、日本企業は自らのIFRSアドプションを乗り切れるようになると話す。負担が掛けずにアドプションができれば、IFRSの効果も早い段階で享受できるようになる。

豪シドニー大学のシドニー・グレイ教授

ローカル基準との関係で変化するIFRS適用

 グレイ教授はIFRSアドプションのしやすさを、元々のローカル基準の特徴から説明した。それはローカル基準が財務報告の透明性を重視しているか、それとも機密性を重視しているか、そして利益の認識について楽観的か、それとも保守的かによって変わるという。グレイ教授の説明によると、米国会計基準はより透明性を求める基準で、利益の認識も楽観的に行うことができる。

 対して、日本を含むアジアの国々や南米の会計基準は機密性を重視し、利益の認識は保守的。グレイ教授の考えではIFRSを策定するIASB(国際会計基準審議会)は透明性重視、楽観的な収益認識に向かうとしていて、日本企業は「会計処理のカルチャー、哲学を変える必要がある」という。つまり、「IFRSはアングロ・アメリカンのバイアスが明らかに掛かっていて、その文化への近さによってアドプションの影響は異なる」(同教授)のだ。

 ローカル基準で算出した利益を1とした場合、IFRSを適用するとどうなるのか。グレイ教授は各国別の指数を示した。その数値によると英国はIFRS適用によって1の利益が1.13になった。オーストラリアは1.10。対して、フランスは1.18で、スウェーデンは1.17と利益がふくらんだ。この指数の差は元々のローカル基準の性格から説明できるようだ。また、企業価値についても同様に各国によって指数に差が出る。株価収益率のローカル基準とIFRSでの相関係数は、英国が0.947とほぼ相関しているのに対し、フランスは0.749、スウェーデンは0.673、ドイツは0.648と差が大きい。

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