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連載:経営財務トレンド(4)

金融庁企業開示課長が明かす「任意適用の4条件」

垣内郁栄
IFRS 国際会計基準フォーラム
2009/10/6

2010年3月期から可能になるIFRSの任意適用について、金融庁の担当者が「4つの条件」を詳しく説明した。システムの全面入れ替えは不要で「大仰に考えないでもらいたい」という。

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 金融庁企業開示課長の三井秀範氏は10月1日に開催された「国際会計教育協会10周年記念フォーラム」で講演し、6月に公開した「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」(参考記事)について解説した。三井氏は2010年3月期から可能になったIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の任意適用について、意見書に記載されている4つの条件を詳しく説明した。

 三井氏は「事実関係の説明は役所としての説明だが、背景部分はすべて個人的な見解となる」と前置きしたうえで、任意適用について以下の4つの条件を示した。

  1. 継続的に適正な財務諸表が作成・開示されていること
  2. IFRSによる財務報告について適切な体制を整備していること
  3. IFRSに基づく社内の会計処理方法のマニュアルなどを定め、有価証券報告書などで開示すること
  4. 国際的な財務活動または事業活動を行っている企業

 この条件のうち、「大切なのは1〜3。4は世の中では注目されがちだが、やや次元が低い」と三井氏は話した。4は、財務活動と事業活動の2つに分類できる条件で、財務活動については「財務活動はまさに国際会計基準が施行されている地域で法定開示を行っていること。典型的にはEU域内に上場している会社、もしくは子会社などで、孫会社、関連会社までも含めてもいいかなという議論がされている」と説明した。

金融庁企業開示課長の三井秀範氏。「IFRS」とはほとんど発言せず、「国際会計基準」と述べていた

 もう1つの国際的な事業活動については、4つの条件のうちで唯一、数値の基準が定められている。意見書と同時に公開された「連結財務諸表規則の改正案(未定稿)」(PDF)で示されている数値で、任意適用を認める条件の1つとして「外国に資本金20億円以上の連結子会社を有すること」を挙げている。三井氏はこの条件について「将来的な国際会計基準への全面スイッチへの第1歩として分かりやすい、そしてさほど高くないバーにした」と話した。

 いずれにしてもこの4が示すのは「国際的に展開している企業で、支店、在外法人が国際会計基準で財務諸表の作成ができている。または、せざるを得ないなどノウハウが蓄積されている企業」(三井氏)を想定しているようだ。

大仰に考えないでもらいたい

 より本質的という1〜3の条件は、読んだとおりの内容。これまで日本基準できちんと開示をしていて、IFRSについて適切な体制を整備していること、IFRSに基づく会計処理について社内でマニュアルを定め、有価証券報告書で開示することだ。三井氏はこのうち、2の条件について、「個人的なコメントをしたい」として以下のように述べた。

「このためにシステムを全面的の入れ替えや、日本の経理を1から作り直すなど、大仰に考えないようにしてもらいたい。これは法律でもそうだが、とりわけ会計では(日本基準もIFRSも)基本は同じ。そしてコンバージェンスを進めてきたので、日本の会計と国際会計基準は哲学的、実務的に大きな差があるものではない。違うのは細かいところ。細かいところ違いのために自分の会社のシステムを全部取り替えるのはむしろナンセンスという気持ちすら持っている」

 三井氏はまた、強制適用について「米国がロードマップどおりに2014年に国際会計基準を適用するとなると、世界のほとんどは国際会計基準で企業内を見られるようになる」と説明し、「それに備えてきちんと準備していく」と話した。意見書では2012年に強制適用するかどうかの判断を行い、強制適用する場合は2015年か2016年からとしている。「一斉適用なら2015年か、2016年。段階適用なら2015年から2〜3年をかけて移行することが考えられる」

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