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■システムライフサイクル
 
上流・下流工程から改善・監査までわかる システム開発のすべて
●北村 充晴=著
●日本実業出版社 2008年7月
●2800円+税 978-4-534-04407-5
 システム開発には、あらゆるケースに対応した詳細なマニュアルやツールがあるわけではない。また、詳しいマニュアルがありさえすれば、適切なシステムができる――というわけでもない。そういった背景を踏まえ、「開発上の基本原理や課題をどうとらえるべきか、なぜその作業が必要なのか、留意する事項は何か」などを論理的にまとめたのが本書だ。
2章では、開発を進める「方法と考え方(セオリー)」を扱う。ここでいう方法とは開発を進めるための手順や成果物、適応技法、必要なスキルのこと。一方の考え方とは、情報システム開発で発生しやすい問題解決の方向性や「なぜ解決できるのか」を説明したもの。確率や結果オーライの部分をプロジェクト管理でサポートし、考え方に沿った開発で因果律の領域を拡張していくように、その「考え方と方法」を整備することが、エンジニアリング的アプローチの第一歩となる。
14章では、「ユーザー実証テスト」を扱う。ユーザーが要求したことが正しいこととは限らないため、システムへの真の要求をつかむために実証テストを行うことが必要だ。ユーザビリティばかりに気を取られることなく、「ユーザーによって使い方に違いはないのか?」「ほんとうにユーザーが利用しやすいのか?」「作業効率は向上するのか?」といったことを検証する。その際に、ユーザーがテストデータを作成する目的は、システムの動作確認だけでなく、多くのユーザーがテストデータをチェックすることにより、新システムを理解する研修を兼ねることもできる、と説く。
SE経験3年程度の初級技術者向けに書かれた本書。超上流から下流工程までの流れと、改善やテーラリングにまで言及し、一通りの開発手順をおさらいする参考書として利用できる。(ライター・生井俊)
 
共通フレーム2007――経営者、業務部門が参画するシステム開発および取引のために
●情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター=編
●オーム社 2007年10月
●2381円+税 978-4-274-50156-2
 透明性の高い可視化されたIT市場の創造を目指して策定されたガイドライン「共通フレーム」が、昨今のビジネス環境の変化やユーザーニーズの多様化に対応するために9年ぶりに改訂された。本書は、その新共通フレーム「ソフトウェアライフサイクルプロセス 共通フレーム2007」の概説、および活用のための手引きをまとめている。
 共通フレームは、国際規格であるISO/IEC 12207(JIS X 0160)規格を包含しながら、日本のソフトウェア産業界で必要とされるプロセスや作業項目を追加したものだ。今回拡張されたプロセスは、「契約の変更管理プロセス」「企画プロセス」「要件定義プロセス」「システム監査プロセス」の4つ。また、アクティビティ、タスクに関しても実際の開発および取引に必要な作業項目を追加定義している。
 通常、システム開発を行う組織は、独自の作業標準や個別の技法を持っている。これら組織(企業)独自の作業標準と共通フレームの関係については、第1レベルに共通フレーム(規格を含む)を位置付け、第2レベルに組織の作業標準を、第3レベルにより具体的で詳細な特性別作業標準を位置付ける。第2レベルと第3レベルの作業標準で使用する作業名称を、第1レベルの共通フレームに準じると、組織内のインターフェイスがさらに統一されるメリットがある、と解説する。
 補足説明でPMBOKによるプロジェクト管理やCMMCMMIなどについて簡単に触れるほか、比較的充実した用語解説を用意している。(ライター・生井俊)
 
ITプロジェクトにおけるソフトウェア外注管理
●高根 宏士=著
●ソフト・リサーチ・センター 2006年12月
●2800円+税 4-88373-235-5
 「何のために外注するのか」を明確にせず、数字だけの売上拡大を狙った、中身のない外注化が深刻な問題になっている。本書は、ソフトウェアやシステム開発における外注について、そのリスクと外注管理に対する考え方や基本的な枠組みについて紹介する。
 外注管理には、「個々のプロジェクトにおける外注管理」と「組織全体としての外注管理」があり、組織の場合は「外注方針の設定」「開発プロセスモデルの設定」「作業標準の設定」「契約・手続き規定の設定」の4点を整備しておく必要がある。その中で、開発プロセスモデルは、プロジェクト関係者が共通の用語を使うことで相互コミュニケーションを円滑にすること、開発作業とそれぞれの作業に対する関係・影響部門の明確化の点から有用だ。ただ、プロセスモデル本来の目的を忘れ、機械的、形式的に作業しさえすればよいとならないよう、モデルを手段として活用する主体的な考え方が欠かせない。
 また外注が1回か2回であれば、外注を使用する部門が手続きをしてもよい。しかし実際には複数の部門が、必要なときには何度でも外注する場合がほとんどだ。そこでの混乱やトラブルを防止するために、契約や共通的な外注管理業務などを組織としてまとめて処理する。また、契約事務手続きだけでなく、マルチプロジェクトマネジメントの仕組みを整備し、組織全体のリスクをコントロールできるようにするための、定常的な中核組織をつくることが有効だと説く。
 後半、好ましくない発注者・受注者のタイプを紹介しながら、より良き協力関係を目指すための提言をまとめている。発注側の情シス担当だけでなく、受注側のベンダにとっても示唆に富んだ内容になっている。(ライター・生井俊)
情報システム計画の立て方・活かし方
●柴崎知己=著
●かんき出版 2005年9月
●2000円+税 4-7612-6276-1
 経営効果を上げる具体的な手段として、情報システムの活用は重要だ。事業戦略を核とした経営計画から、その戦略・計画に整合した情報システムをいかに構築するかという方法論を紹介する。
 本書では、戦略的システム化計画の作業手順を6つのフェイズに分ける。まず[フェーズI]経営計画マップの作成では、最終目標と、財務・顧客・内部プロセス・学習と成長の視点を明確にする。そして、経営計画マップの言葉づかいは、ビジネス用語や経営用語を避ける。具体的には、顧客視点で「納品の即時化」などと記載するよりも、「すぐ持ってきてほしい」と顧客の生の声を記入した方が、議論の活性化や認識の共有化につながる(第3章)。
 [フェーズIV]情報システム構成の立案では、想定される個々の事象から出発し、これらに対して情報システムをどう構成すればいいかという帰納的な発想が必要になる。これまでのフェイズは、あるべき姿への方向を検討するものだったが、これに固執するとシステム化計画は画餅に終わることがあるからだ。また、システム構成のポイントの判断には、その企業の状況、社風、要員の配置などを含め、過去の経験が鍵になるという(第6章)。
 CIOの役割は、Cheif Information OfficerからChief Innovation Officerへと進化すべきで、コストセンターも経営計画の実現や改革の推進という役割を考えると、イノベーションセンターと扱うべきだと結ぶ。若葉マークのCIO向け。(ライター・生井俊)
■開発ライフサイクル
 
図解 よくわかる ソフトウェア・ジャストインタイム
●甲斐敏治=監修、前田卓雄/橋本隆成=著
●日刊工業新聞社 2005年2月
●2400円+税 4-526-05410-0
 トヨタ生産方式の基本思想は「徹底したムダの排除」だ。その柱は、必要なときに、必要な部品が、必要な数だけ生産ラインに到着する「ジャスト・イン・タイム」と、作り過ぎないよう頭を働かす「ニンベンのついた自働化」の2つで構成される。本書は、生産と開発という違いはあるが、この手法をソフトウェア開発に導入することで、短期間で高品質かつ低コストの開発ができ、また、組織や人材のスパイラル成長に結び付くと主張する。
 第2章では、「21世紀のソフトウェア開発戦略」を説く。ユビキタスや組み込みソフトウェアの市場は拡大し、ビジネスチャンスが多く存在する。その中で余力のあるライバル企業に負けない事業提案をするために「核となる人材の確保と育成」「大幅な生産性向上」「リードタイムの大幅な短縮」など、8つの戦略目標を肝に銘じておく必要がある。
 第3章では、プロセスの「見える化」に言及する。在庫ゼロを目指すのではなく、人・チーム・組織の創造力と実現力(働き)を高め、世界で勝つ競争力を獲得することを目的とする。見える化を妨げているのは、工数ベースのソフトウェアビジネスの慣行と、それに起因した極める意欲が失われていることだと指摘する。
 ソフトウェアビジネスの市場や開発プロセス、トヨタ生産方式をソフトウェア開発にどう生かすかなど、図表を交えて解説する。ソフトウェアビジネスを大きくカイゼンしたい経営者や情報システム部門のマネージャにお勧めする。(ライター・生井俊)
 
ソフトウェア最前線──日本のサービス産業界に革新をもたらす7つの真実
●前川徹=著
●アスペクト 2004年9月
●1800円+税 4-7572-1064-7
 社会はコンピュータへの依存度を高めつつあり、世界はソフトウェアに依存しているともいえる。しかし、日本のソフトウェア産業にはまったく国際競争力がない。著者は、ソフトウェア産業発展の阻害要因を指摘し、早急に行動するための7つのポイントをまとめている。
 第4章では、開発手法の1つである「ウォーターフォール・モデル」を批判する。このモデルは、要求定義や基本設計に誤りがあったとしても、工程の最終段階にならないとその誤りが発見されない。極めてリスクの高い開発モデルなのだが、日本のソフトウェア産業にしっかりと定着している。大幅なスケジュールの遅延と予算超過のリスクがあるこのモデルは、ソフトウェア開発に適していないと結論付ける。
 ほかに、プログラムの作成は「製造」ではなく、本の執筆に似ているという指摘(第2章)や、優秀な人が優秀なソフトウェアを作るので、処遇を改善してはどうかという提案(第5章)など、プログラマ=クリエーターという流れが一貫してある。情報システム担当者だけでなく、SEやプログラマも、本書から次世代に向けた高い意識レベルを感じとってほしい。(ライター・生井俊)
ソフトウェア開発55の真実と10のウソ
●ロバート・L・グラス=著、山浦恒央=訳
●日経BP社 2004年4月
●2200円+税 ISBN4-8222-8190-6
 本書はソフトウェア開発シーンにおける、いわば「マーフィーの法則」であろうか。類書は数多く存在するが、「こういうものだ」という経験則で片付けることなく、真実の「概要」に対し、「反論」がある場合はその内容を引用し、最後に裏付けとなる「情報源」「参考文献」を記載するていねいな作りだ。
 “55の真実”と“10のウソ”は、「プロジェクト管理」「ライフサイクル」といったカテゴリに整理されている。「プロジェクトの失敗要因は見積もりミスだ」という内容もあれば、「ソフトウェア技術者はツール好き。購入し、評価もするが、開発で実際に使った人はほとんどいない」という指摘もある。また、ソフトウェア開発でよくいわれる「ソフトウェア製品の品質は管理できる」「ランダム・テストにより、テストを最適化できる」というような、ある種の“呪文”に対しウソであると突き放す。
 そして筆者は、SEに関して「システム開発プロジェクトの管理ピラミッドの最下層にありながら、最上層の管理者よりも絶大な力を持つ」と評している。本書を読むことで、SEが自分自身を見つめ直し、仕事のクオリティを高め、無駄を省く努力をすれば、会社への貢献だけでなくSE全体に対する評価が一層高まるだろう。(ライター・生井俊)
風雲!シスアドの現場──30のケーススタディ虎の巻
●CARROTプロジェクト=著、島本栄光=編
●秀和システム 2004年4月
●1480円+税 ISBN4-7980-0763-3
 シスアドとかけて、親子丼ととく。その「ココロ」を解説するのが本書だ。
 業務と情報システムが、親子丼の鶏と卵の関係のように絡み合っている。逃れられない関係の中で、極上の親子丼を仕上げるのがシスアドの仕事だという。親子丼では話が抽象的だが、具体的に30のケーススタディを紹介しながら、システムを導入する企業(担当者)と、シスアドとの相違をあぶり出していく。
 まず、システム導入までのいきさつを「事例」としてまとめ、その「問題点」を洗い出し、「解決法」を簡潔に述べている。そして、そこから学ぶべき点や、どう作業を進めるべきだったのかなど、アドバイスをまとめる。中には「自分1人で頑張っているのに周りが支援してくれない」という孤軍奮闘型のシスアドにエールを送るものもあり、教訓をこうまとめている。「喜びを 分け合えるから プロジェクト」。
 独り善がりにならず、企業の声が聞けてより適切なシステムを提案・構築できるシスアドになれるよう、本書を読みながら自らの反省点をあぶり出してみてはいかがだろうか。(ライター・生井俊)

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