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■モデリング、SOA
 
強いIT戦略――攻めの経営に向けたIT活用の新機軸
●アクセンチュア テクノロジーコンサルティング=著
●東洋経済新報社 2008年12月
●2200円+税 978-4-492-55626-9
現在、ITは技術面・活用環境面ともに大きな変化の潮目にある。それだけに、IT戦略について、新たな方向性の構築に向けて、経営トップとCIO/IT部門が理解を共有すべきタイミングといえる。本書では、対話のベースとして「5つのI」(Innovation、Information、Integration、Infrastructure、Industrialization)をテーマに掲げ、両者の共通理解と青写真作りのフレームワークを詳述する。
「攻めの経営」の再構築に際して有効な武器になるのは、まさにITだ。IT部門と経営トップ、業務部門が共通認識を持ち、IT活用を加速させるためには、IT投資と経営目標(課題)との整合性を確保したITグランドデザインの策定が必要となる。その過程において、3者間で活発な意見交流の機会を持つ「対話の積み重ね」が重要で、ここに投入されるエネルギーの差がITの評価に関する差につながる。
ITによる経営への貢献をより高めるためには、ITからのアプローチを強化することも重要だ。そのために、IT部門の姿勢を受け身から変革の推進者へと変えなくてはならない。同時に、IT部門はテクノロジの目利きのセンスを磨くことが求められる。ITからのアプローチが強化されれば、IT部門と経営、業務部門それぞれが変革の推進者となり、相互の対話の中で経営からの要請とITの可能性が一致したとき、飛躍的な生産性の向上をもたらすイノベーションを実現できる、と説く。
ほかにSOAの本質やその効果など、ハイスピード・ローコストのインテグレーションについても言及する。フレームワークだけでなく、ITトレンドも学べる1冊。(ライター・生井俊)
 
Oracle BPMで知る業務改善手法――統合ツールが変化に強い改善サイクルをサポート
●日本電気株式会社=著/日本オラクル株式会社=監修
●技術評論社 2008年11月
●2900円+税 978-4-7741-3654-7
 ビジネス(人)とシステムを柔軟に融合するソリューションとして期待されるBPM。本書はBPMの必要性や役割について、BPMツールの1つである「Oracle BPM Suite」(前身は「BEA AquaLogic BPM Suite」)を踏まえて解説する。
これまでBPMを支援するツールは、PDCAサイクルの1つのフェイズに特化した製品が多かったが、「BPMS」(Business Process Management System)と呼ばれるスイート製品が登場し、注目されてきている。なかでもOracle BPMは、PDCAサイクルを支援するツール要件を備え、ビジネスプロセス管理におけるモデリングやシミュレーションから実行および最適化までのPDCAサイクルを統合的にサポートするところにメリットがある。
Part2では、そのOracle BPMを利用したビジネスプロセスの設計から評価までを紹介する。PlanフェイズとDoフェイズの中間に位置する「実装フェイズ」では、プロセス実行エンジンとビジネスプロセスとを結び付ける。業務責任者の負担増への対応という課題にはビジネスプロセスの標準化を、部門連携の問題対応にはビジネスプロセスの管理化を、作業効率の問題対応にはプロセスの自動化を行い、改善を図る。このときに実装されたビジネスプロセスは、ビジネスアナリストが設計したとおりに動作しなければならず、アクティビティにロジックを定義しても、それが期待する動きでなければ意味がないと警鐘を鳴らす。
本書は、演習を行いながらOracle BPMを学ぶリファレンスではなく、BPMの必要性とサイクルの回し方を中心に構成。そのため、Oracle BPM導入の有無にかかわらず、業務の最適化を目指す組織であれば活用できる。(ライター・生井俊)
 
SEならこれだけは知っておきたい 業務分析・設計手法――ビジネスプロセスエンジニアリングと問題解決法
●大川 敏彦=著
●ソフト・リサーチ・センター 2007年12月
●2700円+税 978-4-88373-250-0
業務分析・設計手法
 企業にとって経営・業務・ITのギャップは永遠の課題だ。本書では、「経営と業務とITをつなぐ方法論」として、業務分析・設計を体系的、かつ実践的に整理することを試みている。
 ビジネスプロセスモデリングのように、複雑な現象や情報を整理していく手法としては、フレームワークに基づきトップダウンで整理していく方法と、ボトムアップで1つ1つの情報を収集・分類していく方法がある。これらの2つの方法に加えて、業務の概形をドラフティングし、それを少しずつ精密に記述していく「芸術的なアプローチ」が必要だ。この考え方は、散発的で、全体感や論理的な整合性が欠けていると見られるが、業務、ビジネスあるいはビジネスプロセスが、人間とシステムという曖昧性と厳密性の2面性を持っていることなどの理由から有用だと説明する。
 後半では、業務分析・設計のアプローチ手法の1つである問題解決法の概要をまとめる。問題を解決へ導く手法として、科学的思考法や発想法、意志決定法などに触れ、問題の定義からあるべき姿の確定、現状の姿の調査、問題点の決定など一連の流れを把握することができるつくりになっている。
 業務分析の全体像から問題把握・解決、業務分析・設計の実践まで、数多くの要素とキーワードが登場する。情シスの新人や、多角的な視点を探しているPMが基礎をさらうのには便利かもしれない。(ライター・生井俊)
 
UMLで考えるモデルベースマネジメント――内部統制が働くエンタープライズアーキテクチャの設計
●左川 聡=著
●毎日コミュニケーションズ 2007年8月
●2400円+税 978-4-8399-2284-9
 ビジネスモデルをベースに、マネジメントサイクルを実行する経営手法「モデルベースマネジメント」。本書では、その基本的な考え方とフレームワーク、そして環境適応力のあるアダプティブな企業を実現するノウハウをまとめる。
 第1章の理論編では、モデルベースマネジメントのアーキテクチャを示し、それを構成する「ビジネスモデル」「バリューチェーン」「マネジメントサイクル」の3つのコンセプトについて説明する。
 第2章の実践編では、EAのテンプレートやケーススタディなど、「内部統制が働くEA」の設計を紹介する。また、EAをベースとしたSOAの設計、SOAをベースとしたアプリケーションシステムの開発といったEAの実装、そして管理についても言及する。
 第3章の技術編では、モデリング技術のUMLBPMNを中心に第1章、第2章に関連する技術を解説する。また、マネジメント手法として経営基本管理、マーケティング、人事管理、情報管理などを扱う。
 全体で400を超えるページ数に圧倒されるが、解説が簡潔で、図版をふんだんに盛り込むなど工夫されている。UMLやBPMNをより深く理解するためには、第3章を先に読むことをオススメする。(ライター・生井俊)
 
SOA――改革を加速させる経営基盤の作り方
●福井 隆文=監修/IBM ビジネスコンサルティング サービス=著
●日経BP社 2007年8月
●1800円+税 978-4-8222-1670-2
 業務変革からシステム実装までを大きく短縮できるSOAは、経営戦略を早期に実行できるという点で、経営者の武器となる。本書は、そのSOAに関する技術書ではなく、企業の戦略課題に取り組む経営者やCIO向けに書かれた改革を加速するための参考書だ。
 企業の中で自社の仕組みをSOA化するなら、再利用度が高く、独立性・自己完結度が高い「サービス」から取り組むべきだ。こうした分析をした結果、非常に多くの部門・事業での再利用が可能な「サービス」が見つかれば、再利用によって開発コストを抑制でき、システム化には大きな効果が期待できる。また同時に、仕事の集中化・組織の統合化など物理組織への変革が可能になる。
 ビジネス環境の変化から逃れることができない状況で、IBMではコンポーネント・ビジネス・モデリング(CBM)という手法で、企業のコンポーネント化を実施する。CBMの特徴は、企業活動を構成するアクティビティを抽出し、互いに重複することなく、類似したアクティビティをビジネス・コンポーネントという単位にまとめて、企業全体を俯瞰(ふかん)するマップを作成していくことになる。そのコンポーネント単位に活動を評価していくことで、ビジネス戦略に応じた、適切な投資計画が立案できる、と説く。
 後半で、SOA成功のカギとなる「SOAガバナンス」や、三井倉庫でのSOAを機軸とした企業変革を紹介する。それぞれの見出しと、太字で強調されたポイントを拾い読みするだけでも、十分に参考になる作りになっている。(ライター・生井俊)
 
戦略マップによるビジネスモデリング――ビジネスとシステムをシームレスにつなぐモデリング手法
●内田 功志、羽生田 栄一=著
●翔泳社 2007年6月
●2500円+税 978-4-7981-1313-5
 ビジネス環境の変化にビジョンや戦略だけが対応しても、ビジネスはうまく回らない。ビジョンや戦略の変化に追随できないITシステムは、情報活用どころか、むしろ足かせになってしまう。本書では、バランス・スコアカード(BSC)とラショナル統一プロセス(RUP)を使い、状況の変化にマッチする有効なシステムの導き方を紹介する。
 通常は単純にトップダウンで行うように考えられている企業における「ビジョンの策定」だが、夢とビジョンとを履き違えて、「絵に描いた餅」になりかねないものが多い。夢には根拠がないが、ビジョンとは達成することを前提としたもので、当然根拠がある。それだけにビジョンは、トップだけでななく社員1人1人がそれぞれの立場で会社の内部・外部を分析し、それを基に策定していくことが必要となる。
 基本的なビジネスユースケース図を基に、その詳細を検討するためには、各ビジネスユースケースに対して、ビジネスのワークフローをビジネスユースケース定義書という形で作成する。内容を詳しく見ていくことで、いままで見えていなかった共通のビジネスユースケースを見つけたり、大きなビジネスユースケースを分割したりすることができる。この構造化を行うことで、ビジネスユースケース図が洗練されていく、と説明する。
 そのほか、筆者が提唱する「(4+1)×1ビュー」──「概念」「コンテキスト」「プロセス」「ソリューション」および「ゴール」「ビジネスシナリオ」の視点で、ビジネスモデルを整理するフレームワーク──を使ったモデルの妥当性をトレース・検証する方法などを織り込んでいる。(ライター・生井俊)
 
仕事の流れで理解する 実践! SOAモデリング──UMLを活用した「モデルベースSOA」の基本と手順
●オージス総研 加藤 正和=監修/大場 克哉、左川 聡、橋本 誠、藤倉 成太、明神 知=著
●翔泳社 2007年4月
●2380円+税 978-4-7981-1404-0
 オージス総研が提唱するモデルベース開発は、ビジネスモデルからシステム開発、運用のあらゆる場面でモデリング技術を活用することで、経営と情報システムに関連する多数の関係者のコミュニケーションを促進し、課題を発見、解決することを目指すシステム開発手法である。本書はSOAにモデリングを適用する方法に関して、オージス総研の経験とノウハウをまとめたものだ。
 まず、EAを設計してビジネスモデルを完成させる。最初のステップ「ビジネスモデル方向付けフェーズ」では、プロジェクトの正当性について確証を得るため、プロジェクト関係者間で合意し、現行のビジネスモデルを可視化する。次の「EA確立フェーズ」では、ビジネスモデルのベースとなるEAについて関係者で合意し、3番目の「ビジネスモデル完成フェーズ」では、EAに基づいてビジネスモデルを完成する。最後の「ビジネスモデル移行フェーズ」では、設計されたビジネスモデルに従い、新しい業務に移行する。
 全社基盤であるSOA基盤アーキテクチャを運用するためには、全社的なSOAチームが必要だ。SOA運用チームはサービス利用時のトラブル対応だけでなく、サービス化の普及活動をSOA推進チームとともに行い、再利用できるサービスを増やす。そして、多くの方に利用してもらうための活動を行い、より良いアーキテクチャに進化させる重要な役割を担っていると説く。
 前半はSOAの概要を、後半は開発にフォーカスした構成になっている。(ライター・生井俊)
 
SOAシステムモデリングハンドブック
●テクノロジックアート=著/長瀬 嘉秀、藤川 幸一=監修
●翔泳社 2006年12月
●2200円+税 4-7981-1276-3
 2004年ころからSOAの必要性がいわれてきたが、ようやく各社の具体的なSOA製品が出そろってきた。本書では、ITベンダが提供する製品を利用する前段階の、SOAのためのビジネス分析(BPMN)や、SOAシステム構築に必要なシステム設計技法(UML)を説明する。
 SOAのシステムを構築する際に重要なのは、「オープンで標準化された技術」を用いることで、BPEL、BPMN、UMLという3つの標準技術が重要になる。その中でBPMNは、プロセスのフローを表す図を描くため、UMLのアクティビティ図をもとにアイコンなどの表記法を直感的に定義した仕様だ。一番の特徴は、BPMNで表記される要素それぞれをBPELの要素に変換するための方法が含まれているため、ビジネスとサービスをよりスムーズにつなぐことができる点にある(第3章)。
 SOAのシステムでは、サービスの呼び出しのために用いられるメッセージング技術が決まっているわけではないが、標準的で一般に利用できるSOAPXMLWSDLといった技術を用いる。これらの技術要素の組み合わせで通信を行うことを一般にWebサービスと呼ぶが、「SOA=Webサービス」ではなく、WebサービスはSOAを実現する技術的な選択肢の1つと位置付けられるとする(第4章)。
 後半は、問題の把握、ビジネスモデリング、要求分析、設計、実装といった一連の流れをケーススタディを沿いながら紹介する。図表も多く、内容も簡潔に書かれているため、まずSOAのシステム構築全体をとらえたいという人に向いている。(ライター・生井俊)
 
SOA実践ガイドブック──業務/IT両部門が協調して柔軟なビジネス基盤を実現する指針
●Norbert Biebersteinほか=著/清水 敏正=監修/テックバイザージェイピー=訳
●翔泳社 2006年11月
●2800円+税 4-7981-1241-0
 ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応するため、注目されるSOA。本書では、SOAプロジェクトの目標設定から計画、実装、運用の全体像を適切なスコープで概観し、成功へと導くための指針を示す。
 企業がSOAを採用することで得られる利益は、「部品」の再利用および柔軟性の提供によって、長期的にコスト・時間・人間負荷を削減できることにある。また、ITとビジネス・サービスのより緊密な連携によって、IT投資の正当化をより明確化できるメリットもある。それにより、競合上の差別化要素が提供されるわけだが、SOAの価値を得るためには上級役員に説明するだけでなく、IT部門と業務部門の信頼関係を確立するための説明が、きちんと業務部門に対してもなされる必要がある(第2章)。
 SOAの採用戦略では、既存のIT環境の全面的な置き換えを行うべきではなく、段階的なロードマップを採用すべきとする。優先順位付けされたビジネス・サービスとコンポーネントごとに、ロードマップは通常のITプロジェクトと同じように開始、検討、実装、テスト、本番稼動と進行していく。SOAではこれらの各フェイズに、サービスの洗い出し作業とサービスの実装という新たな作業が含まれる。このようにしてSOAを採用した企業は、より広範な接続性を実現し、収益を増大することができると説く(第4章)。
 技術寄りではなく、プロジェクトを進めるうえでの心構えが中心で、各章で扱う内容は意外とあっさりとしている。監修者が勧めているが、まず第11章の「指針となる規範」を読んでから、本文に戻った方が理解が深まりそうだ。(ライター・生井俊)
 
BPMがビジネスを変える──BPRを超える「業務プロセスの継続的改革」
●日沖 博道=著
●日経BP企画 2006年8月
●1800円+税 4-86130-183-1
 企業改革に活用するに当たっては、BPMはほかの選択肢に比べより効果的なマネジメント手法である。本書は、企業経営者らが、企業改革とその実現のためのIT化を進める際に、何をどう考える必要があるかの骨子を示し、BPMの活用を提案している。
 大規模な情報システム構築プロジェクトが終了した後には、往々にして役員クラスから利用者部門まで「関係者全員が不満足」の構図が存在する。その原因の1つには、「戦略意図が不明確なままのシステム化」という出発点でのボタンの掛け違いがある。もう1つには、要件定義を進めていく手法が旧態依然としたもので、あるべきビジネスプロセスを関係者で共有するなどの視点に欠けていることが挙げられる。
 改革プロジェクトで現れる典型的障害を克服する視点の多くは、BPMアプローチに含まれる。システムの要件定義に一気に突入するのではなく、まず「構想策定」というフェイズにおいて改革の全体像を描いてから、次の具現化フェイズでビジネスプロセス/組織・制度/情報システムの詳細を設計することを推奨する。このフェイズの実施により、「重点志向の欠如」と「目的意識の希薄化」を克服できる可能性が高まる、と説く。
 ほかにもBPMアプローチによる改革実践について、ソリューション領域別に解説を加えている。企業改革、業務改革の旗手となる経営層、プロジェクトマネージャ向け。(ライター・生井俊)
 
詳説 ビジネスプロセスモデリング──SOAベストプラクティス
●マイケル・ハーベイ=著/長瀬 嘉秀、永田 渉=監訳
●オライリー・ジャパン 2006年6月
●3200円+税 4-87311-290-7
 BPM(ビジネスプロセスモデリング)は新興の分野で現在、ベンダ、標準、誇大表現、理論が入り乱れて混沌としている。そのBPMの概念、標準、実際の使用例をまとめたのが本書だ。
 BPMのアーキテクチャで必要なのは、ある企業のローカルな視点を記述することであり、パートナーとのすべての相互作用のグローバルなビューを記述することではない。設計者はパートナーとの相互作用の性質を理解しなければいけないが、必要なのはプロセス間のプロトコルに準拠することだけだ、という(第2章)。
 ビジネスプロセスの表現方法はXMLと図形表記の2種類が存在する。その中から第5章はBPELを、第6章はBPMI標準(BPMNBPML)を、第7章はWfMCが提案する参照モデルを、第8章はW3Cがコレオグラフィに関して提案する内容を詳述し、それぞれサンプルコードを用意する。
 旅行予約アプリケーションの構築を例に、プロセス理論の概要やプロセス設計のパターン、BPEL、BPMI標準などの使用方法を紹介するなど分かりやすい構成になっている。開発者だけでなく、情シス部門のマネージャやITベンダのPMが参考書としても役立つだろう。(ライター・生井俊)
 
できる人のモデル思考力──データモデルはこう使え!!
●勝藤彰夫、石ヶ森正樹=著
●技術評論社 2005年7月
●1680円+税 4-7741-2434-6
 どんな仕事であれ、情報が関係しない仕事はない。モデリングは情報を扱う技術者(システム屋)だけのものと思いがちだが、ビジネスマンでもこのエッセンスを知っておくと、文書や考え方をきれいに構成したり、業務上の問題を整理するために役立つと本書は説く。
 実用的なシステムを構築するためには、システム開発者がそのビジネスを熟知しているかが鍵になる。システム開発者との共同作業の中で、あなたがまず「システムに何をさせるか」を明確に伝え、システム開発者は「どのようにしてシステムを作り、動かすか」を考えるのが基本となる(第1章)。
 また、ビジネスルールを記述する作業は、ビジネスのモデル化といえる。このときに「データ」「機能」「ユーザーインターフェイス」の3要素が必要だ。これらの要素(モデル)は有機的に関係し合い、全体としては1つの情報システムの内容を表現しているという(第2章)。
 ほかに、実体関連モデル(ERモデル)を使ったデータモデルの作り方や、事例を読み解きながら情報を構造化する手順を紹介する。ビジネスマンにとって、モデリングがどれだけ役立つかは未知数だが、システム導入にかかわる情シス担当者は知識として持っておきたい。(ライター・生井俊)
図解 上級SEのためのビジネスモデリングテクニック 機能ユニットモデルのBPM方法論
●芳賀正彦=著
●日本工業新聞社 2004年8月
●2400円+税 4-526-05326-0
 ビジネスモデルの再構築により競争優位性を高めていくためには、企業の設計図が必要になる。本書では、このような企業の設計図を作成し、その企業活動の構造とダイナミズムを表現するための方法論を提供する。
 全社的なBPMを実現するための要件として、「直感的な分かりやすさ」「俯瞰(ふかん)性」「一貫性」「プロセスの表現」「収益・コスト・時間の表現」「組織の表現」「情報処理システムとの親和性」を挙げる。そこで気を付けるべきポイントは、物事をただ単純化するのではなく、「モデル化の目的を明確」に意識すること、現状の組織形態や業務手順に拘泥せず「あるべき姿を徹底的に追求する」姿勢があること、その作業を行う際は「抽象化」と「一般化」の視点を持ち続けることなどだ。
 メーカー、商社などを想定した企業活動のモデリング例では、機能ユニットに合わせた階層化やモデルのバイアスと標準化、業務イベント一覧表などを紹介する。機能モデル、プロセスモデル、組織モデルの作成手法のほか、システム開発やモデリングツールに関しても詳しく、まさに上級SEが活用できる実践的な内容になっている。(ライター・生井俊)
コンサルタントになる人のはじめての業務分析
●窪田寛之=著
●ソフトバンクパブリッシング 2004年7月
●2600円+税 4-7973-2405-8
 業務改善からシステム分析まで幅広く使える、UMLによる「コンポーネントモデリング」の手法を、ケーススタディをふんだんに盛り込みながら解説する。
 第3章「コンポーネントモデリング入門」では、業務改善の基礎となるヒアリングのコツや効果的な業務フローの洗い出しについて紹介し、オブジェクトの抽出、コンポーネントの仕様化を学ぶ。それを受け、第4章では通信販売業務の事例に沿って業務分析の手順を確認していく。また第5章では、病院外来、自動車販売業務、人材派遣業務の業務分析を行い、そのサンプルを掲載している。付録として、Jude竹、MagicDrawなどのモデリングツールやUMLダイアグラムについてまとめている。
 専門用語の使用を極力避け、平易な文章で書かれているため、コンサルタントやシステム担当でなくても理解しやすい。また、各章は数ページごとのセクションで分かれており、必要な部分を拾い読みするのもいいだろう。(ライター・生井俊)
エンタープライズ・アーキテクチャ
●IBMビジネスコンサルティングサービス IT戦略グループ=著
●日経BP社 2003年12月
●2800円+税 ISBN4-8222-1873-2
 経営とITとの結びつきを強くするエンタープライズ・アーキテクチャ(EA)について、コンサルティングする立場からその構造や実践、価値について紹介したのが本書だ。
 第1章は「EA時代が到来している」と題し、「EAとは何か」から、なぜいまEAなのか、経営層のITに対する要望などを述べ、情報システム部門だけでなく、経営者層にも分かりやすい導入部に仕上げている。ちなみに、本書の言葉を借りればEAとは「企業のITの状況を整理して、経営に貢献できるITのあり方を描き出す方法論」のことだ。
 第2章では「EAの構造」について、「アーキテクチャ」「ガバナンス」「移行計画」の3つの視点で説明する。さらに、アーキテクチャはビジネス構造を表す「ビジネス・アーキテクチャ」、業務プロセスや機能を表す「アプリケーション・アーキテクチャ」、ビジネス活動に必要となるデータを表す「データ・アーキテクチャ」の3層があり、これらをITに写像した「テクニカル・アーキテクチャ」を合わせた4層に分けられると解説する。
 「EA構築の実践」(第3章)では、EAを国レベルで推進するアメリカの流れを受けた日本政府や企業の取り組みを紹介している。また、第5章ではIBMが提唱する「e-ビジネス・オンデマンド」と連携することで、今後EA自体がより進化していくとまとめている。(ライター:生井俊)
〈業務別〉データベース設計のための「データモデリング入門」
●渡辺幸三=著
●日本実業出版社 2001年7月
●2800円+税 ISBN4-534-03250-1
 書店のコンピュータ書籍コーナーにいくと、データベースをテーマにしたマニュアル本が数多く並んでいる。そのほとんどが「データベースとはどんなものか」「データベースツールの具体的な操作方法」などについては書かれているが、業務を具体的にどのようなデータベースとして設計すべきかについては触れられていない。
 本書は「商品管理」「在庫管理」「販売管理」「購買管理」「取引先管理」「会計管理」と具体的な業務に即して、どのようなデータモデルがあり得るかを解説する。筆者は「データモデリングの知識はシステム屋と業務屋の間の深い溝を埋める『共通言語』の役目を果たす」と述べる。
 業務オリエンテッドの本書は、本職のSEとまではいかないがシステムの発注を行っているユーザー企業のスタッフに、ぜひお奨めしたい1冊である。

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