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■組織・人材
 
Xチーム――分散型リーダーシップの実践
●デボラ・アンコナ、ヘンリック・ブレスマン=著/サイコム・インターナショナル=監訳/西田 忠康、鈴木 立哉=訳
●ファーストプレス 2008年8月
●2800円+税 978-4-904336-08-3
 イノベーションが必須とされる競争社会、生き残るためにはXチームという組織が必要だ。Xチームとは、複雑な問題を解決し、状況の変化にも柔軟に対応、イノベーションを起こし、競争優位を獲得したいと考える企業のために生まれてきたものだ。本書では、そのXチームによるイノベーションを起こすインフラづくり、分散型リーダーシップの実践を扱う。
Xチームには「外部活動」「超効率的執行」「柔軟なフェイズ転換」の3つの原則がある。その1つ、外部活動とはチームの内部を固めるだけでなく、精力的な外部活動が必要とする考え方だ。その活動は「偵察」「外交」「タスク調整」の3つに分類され、特に、チームは周囲の期待を理解し、主要な利害関係者についての最新情報を常に把握するためにも、「偵察」活動に従事しなければならない。それに加え、トップマネジメントに理解してもらうための「外交」や他部門との相互依存関係を調整する「タスク調整」が必要になる。
企業は、Xチームを通常のビジネス活動を改善する1つの手段ととらえがちだが、最終的には会社の機能そのものを変えてしまうものだ。組織としてのイノベーションを達成するためのメカニズムでもあるXチームを作り出すためには、「Xチーム組成プログラム」を利用する。日々の仕事に手いっぱいの状況にあっても、イノベーションに特化するXチーム組成プログラムを立ち上げることで、イノベーション振興のための仕組みや文化をつくり上げることができる、と説く。
Xチーム組成に当たっての成功要因として「トップからの全面的支援」「万全な準備態勢」「プロセスに関する厳格な枠組み」「支援とフィードバックの仕組み」だけでなく、「明確な終焉」を5つ目に挙げているのがユニーク。これからの組織の方向性を模索する中で、参考になる1冊だろう。(ライター・生井俊)
 
CIOの新しい役割
●岩崎 尚子=著
●かんき出版 2008年4月
●1800円+税 978-4-7612-6508-3
 2008年4月のJ-SOX法(金融商品取引法)適用開始により、日本においても数万人のCIO(最高情報責任者)やCIOに相当する職務の設置が必要不可欠になった。本書では、企業の生命線としての情報化や電子政府・電子自治体の推進を担うCIOの重要性と必要性について、理論と実践の両面から解説する。
1980年代の終わりから1990年代の初めにかけてのCIOの役割は戦術的であり、純粋な技術的スキルが重視されていた。その後、技術的スキルからビジネス戦略の重視へ進化し、IT戦略や業務革新などがCIOの任務課題になっている。また、CIOは大規模なシステム開発のためのコミュニケーション強化やリーダーシップの発揮が求められ、最近では「ITガバナンスの発揮」と「イノベーション」がキーワードになってきている。
日本のネットワークインフラは世界最先端レベルにあるが、その一方で国際競争力の低下が懸念されている。競争力強化のためにも、ITの専門的知識や技術のみならず、政治・政策、経済、経営などの多領域にわたる「CIO学」の確立が急がれる。それを通じて、CIOをはじめとする高度ICT人材を育成し、外部資源を有効活用したオープン・イノベーションを推進することが重要だ、と説く。
ほかに、トヨタ自動車、東京証券取引所、損保ジャパンなど先端企業7社のCIOへのインタビューや、CIOに必要なコア・コンピタンスが分かるチェックシートを掲載している。(ライター・生井俊)
 
UISSガイドブック[情報システムユーザスキル標準]――企業における新たなITの視点
●高橋 秀典、沼田 克彦、引地 信寛=著
●ソフト・リサーチ・センター 2007年11月
●2600円+税 978-4-88373-251-7
 多くのユーザー企業がIT戦略を担う組織力の向上と、変化に柔軟な組織作り、またそのために必要な人材の育成を求めている中、2006年6月に発表されたのが「情報システムユーザスキル標準」(UISS)だ。本書は、ユーザー企業におけるITキャリア開発やUISSの活用について解説する。
 個人のスキルとコンピテンシーを高めただけで、システム開発がうまくいくわけではなく、開発標準などのルールの整備も重要だ。開発標準は、システム開発の作業手順をまとめたもので、これがあれば誰でも同じようにシステム開発ができるように見える。開発標準に含まれるWBSの役割の列を縦にたどることで、担当する作業項目と作業内容、完了基準を知ることができるのだ。ベテランにとっては、この情報は当たり前かもしれないが、工程・ルールを理解し切れていない若手メンバーを加える際には、このような開発標準が役立つ。
 ITSSとの違いについても触れる。ITSSは顧客向けの現場でのトップが一番上のレベルであり、企業内の経営層の定義やそこに至るパスはない。それに対してUISSは、経営戦略をIT戦略として企画立案する部分と、IT部門からビジネス部門やさらにその先のエンドユーザーに対する支援のためのシステム構築・運用・維持・改善の観点で網羅的に定義されている。
 「組織力強化」「企業戦略実現に向けた効果的な投資の実施」「プロジェクトアサインの効率化」「自社目標と現状に合った育成計画の立案」「キャリアパスの明確化」に向けて、具体的にUISSを導入してはいかがだろうか。(ライター・生井俊)
 
職場の「かんばん方式」2 トヨタ式人づくり改善塾
●松井 順一、石谷 慎悟=著
●日経BP社 2007年9月
●1500円+税 978-4-8222-4611-2
 本書は、トヨタグループで広く行われている自主活動を参考にした研修、集団指導、個別指導を組み合わせ、塾での学びを自社に伝導するモデル「伝道師型プログラム」を紹介する。有効な改善の浸透と人づくり、職場作りに適応されてきた「改善塾」の取り組みから、開発部門、サポート部門、総務・経理部門の3つの事例を取り上げる。
 まずは仕事ができるリーダーの後継者をどう育成するかが課題になった開発部門の事例。後継者の育成過程でレベルが下がることに周囲は難色を示すが、そこは一種の投資だと割り切り、改善活動がスタートする。後継者育成の必要性を主張し、どんな仕事があるのかなどストア管理を利用した「見える化」を実施。サブリーダーを任命し、順次仕事を移管することが始まるが、管理レベルの低下が露呈、ストア管理が停止した。その後、ストア管理は日常の業務管理のPDCAサイクルを回す道具であることを再確認し、改善に動き出す。
 トラブル対応など突発的な対応が多くを占めるサポート部門での改善活動では、予測できないできないことに改善活動ができるのかと、メンバーが不満を抱きながらのスタートとなる。改善に当たり、他部門から改善伝道師が説明にきたが、実際の改善活動はその職場のスタッフで行えという指示が出る。うまく改善していくためには、相互不可侵の下で自分のペースで仕事をするのではなく、みんなで助け合う組織にしようとするための意識改革や価値観の転換を徹底的に行っていく必要がある、と説明する。
 作業改善手法についての概要を学びたい人は第1部の解説が、より現場に落としこんだ形で理解したい人には第2部のストーリー仕立ての事例紹介が役立つだろう。(ライター・生井俊)
 
高度IT人材育成への提言──国際競争力の復権に向けて
●山下 徹=編著
●日本放送出版協会 2007年4月
●1200円+税 978-4-14-081182-5
 土木工学や建築学、医学といった分野に比べて、工学としてはまだまだ未熟な領域のソフトウェア。本書では、この分野で世界に先駆けるために、日本の高度IT人材育成の諸課題と提言、展望をまとめる。
 自動車などに代表されるが、いまや機器を制御するために搭載されている「組み込ソフトウェア」が、実質的にその製品の機能や性能を左右するようになっている。競争力の高いソフトウェア産業を日本に確立することは、あらゆる産業の競争力強化に直結し、日本経済の将来の鍵を握る。だがグローバルな視点から見ると、OSなどは欧米からの輸入、そして中国・インドなどによるオフショアリングが進み、日本のソフトウェア産業の脅威になっている。
 この流れに対応するためには、社会人としてのキャリアの準備段階である大学・大学院教育が大切だ。そこで、高度IT人材になり得る素質・素養を備えた学生が基礎的なITの専門知識とスキルを持ち、それを実行する能力を身に付けることができれば、入社後、企業内の教育研修や実務経験によって短期間のうちにレベルアップを図ることが可能となる。また、人間性、コミュニケーション能力、意欲・やる気、論理的思考力、問題発見・解決能力、リーダーシップといった基礎的な職業能力は、大学・大学院においてもこれらの能力養成に十分に考慮していくべきだ、と説く。
 ほかに、すでにこれらの取り組みを始めている米国、韓国、インド、中国のケーススタディも併せて紹介する。ソフトウェア産業と、それを支える高度IT人材を育成する自立的なメカニズムを目指す参考になる。(ライター・生井俊)
 
社員力──ITに何が足りなかったか
●浜口 友一=著/鈴木 貴博=編
●ダイヤモンド社 2007年3月
●1500円+税 978-4-478-37526-6
 1990年代を代表する経営手法のBPRは、社員の要素を見落としていて、変革の代償としての痛みだけでなく、企業経営へ影を落とす結果となった──。本書では、NTTデータ社長の浜口友一氏が、企業に変革をもたらす有力な武器となるITと、そこにモチベーションあふれる社員がのってこそ、初めて変革に向けたドライブが始まると説く。
 第1章で、浜口氏が副社長(CIO)時代に手がけた新基幹システムでの失敗を振り返る。その原因として、ビジネスモデルと技術的なチャレンジを広げすぎたこと、変革リーダーとしてのコミット不足、事業優先の難しい判断の4点を挙げる。それらをリカバリーするために、ITマネジメント室を再編しCIOの直轄部隊としたこと、開発部門と業務主管部門、ユーザー部門の3者が合意を形成する場を再定義したこと、そしてプロジェクトにおけるチャレンジ項目を再度取捨選択し、絞り込んだことで状況は好転し、カットオーバーを迎えている。
 第6章では「社員力」(社内の意識改革)について触れる。連結売上高が8500億円だった当時、売上高1兆円を中期計画の目標にし、評価を変えることから変革への意思表示をしつつ、お客様と真のパートナーとなるために、お客様の思いついた機能や要求をただ受け入れるのではなく、明確に状況を把握し、意思決定をせまる「たたかい」を営業に仕掛けさせた。そして、どんなに忙しくとも年に3日はOFF-JTを取り入れ、改革のための評価だけでなく、トレーニングによる能力向上とのバランスを保っていると説く。
 舞台はIT企業で、システム構築にまつわるエピソードだが、実体験に基づいた内容は示唆に富んでおり、変革に向けて動き出すために現場をどう導いて行くべきか迷っている経営者、プロジェクトマネージャに響く言葉が多いだろう。(ライター・生井俊)
 
優秀なIT担当者はクビにしなさい
●ブレインワークス=著
●カナリア書房 2007年3月
●1400円+税 978-4-7782-0039-8
 中小企業の経営者の多くは、ITを表層的な技術論ととらえ、複雑怪奇なIT関連業務で頭を抱えている。また、社内の片隅でキーボードを叩きまくっているIT担当者は、非常にあいまいなポジションで、ろくな責任すら与えられていない現状がある。その状況を打破するために、本当に優秀なIT担当者とは何か、そのために必要なスキルとは何かを掘り下げたのが本書だ。
 経営者なら、「ITは分からないがすごそうだ」という思い込みだけで、IT担当者に任せっきりではいけない。IT化の本質を知るためには、IT担当者に「報・連・相」を徹底させる必要がある。そうすることで、いくら理論武装したIT担当者も、さすがにすべてを専門用語で語ることは難しくなる。このメリットは、彼らがいままで何をしているのか分からなかったことを知ることができる点にある。会社にとって本当にプラスの人材なのかが分からなければ、いま会社が取り組んでいるITがますます見えないものになるからだ。
 報・連・相がうまく機能し始めたら、IT担当者の「文書化」を浸透させる。例えば「○○と、○○と、○○をしました。まあ、システムのメンテナンス作業が多かった」と口頭で伝えた場合、果たして何がメンテナンス作業に含まれるかが分からない。これを文書に落とし込ませれば、どの作業がメンテナンスであり、なおかつ、そのほかの作業が何だったかが一目瞭然になる。そして肝心なのは、文書の内容が記録として残されるという事実だ。このような文書化を習慣にすれば、IT担当者の仕事ぶりも変わってくる、と説く。
 ITの本質をなかなか理解できない経営者へのエールと、IT担当者のプロ意識を呼び覚ます内容で構成されており、経営者と情シス部門担当者双方のITに対する意識改革に一役買いそうだ。(ライター・生井俊)
 
高信頼性組織の条件──不測の事態を防ぐマネジメント
●中西 晶=著
●生産性出版 2007年1月
●2200円+税 978-4-8201-1852-7
 組織が関連する事件、事故、不祥事が後を絶たない。組織への信頼が揺らぐ中、われわれの生活を支えている組織への感謝や再起をかける企業へのエールとして、本書は組織の信頼性を高めるマネジメントをまとめている。
 事件や事故、不祥事を繰り返し起こす企業と、長期にわたって高い安全性・信頼性を維持し続ける組織がある。その違いについて「高信頼性組織(High Reliability Organization)」という視点からの研究がある。これは、「事故を起こさないようにする」というネガティブな言葉を使わず、「なぜ事件や事故が起こらないか」という信頼性にスポットを当てる。前者は死亡原因を知るための「死体解剖」のようなもので、後者は現在進行形で活躍するアスリートの強さの秘けつを知るための「健康科学」に近い。このように、積極的な視点からの「不足の事態」に強い組織を研究していく。
 高信頼性組織には、「成功よりもむしろ失敗に注目する」「単純な解釈をしない」「現場のオペレーションに敏感になる」「再起へ全力を注ぐ」「得意な人に任せる」という5つのポイントがある。それに3つの要素から構成される「マインド」を加えることで、常に対話と確認を繰り返し、今がどういう状態なのかなどを検討して、行動に移せるマインドフルな組織になることができると説く。
 日本航空やみずほ銀行、JR西日本など身近な事例を織り交ぜながら、これらの内容の定着を図る構成に好感が持てる。経営者、マネージャ向け。(ライター・生井俊)
 
ITエンジニアのためのチームリーダーシップ実践講座
●上村 有子=著
●ソフトバンク クリエイティブ 2006年10月
●1900円+税 4-7973-3587-4
 情熱的なチームでなく、何の変哲のないチームであっても、チームワークのよい職場には何か不思議な魔力が潜んでいる。その魔力とは、チームリーダーの仕掛けであり、本書ではリーダーシップに役立つツールや考え方を紹介する。
 組織の中で変化を起こすためには、人が身動きがとれないほど活動を制限するのではなく、決められた範囲内で自由に活動することが大切だ。ぶつかり、跳ね返り、形や性質が変わることで、熱やエネルギーが発生し、全体に何らかの変化が期待できる。その中でリーダーは進むべき方向を指し示す役割を担い、「守り」のマネージャと違って、「攻め」のイメージを持つべきだと説く(Chapter 1)。
 メンバー間の意思疎通をよくするためには、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)から、会話の内容・伝達方法・タイミングをチェックし、問題があればそれを指摘していく。そうすることで、メンバーが持つ「コミュニケーションが苦手」といった思い込みとは関係なく、十分漏れのない情報交換ができるようになる。また、1対1では相手に合ったアプローチ方法を利用するといいが、チーム内では「論理思考」が有効となる。それを共通のルールとすると合意形成が容易になる(Chapter 3)。
 ほかに、リーダーとして自己を知るための方法、ファシリテートスキルの身に付け方、活性化を維持するためのテクニックを紹介。事例にとらわれず、客観的な内容に仕上げている点が好感が持てる。チームの活性化を目論むリーダーにオススメしたい。(ライター・生井俊)
 
ナレッジワーカー
●トーマス・H・ダベンポート=著/藤堂 圭太=訳
●ランダムハウス講談社 2006年4月
●2400円+税 4-270-00122-4
 高度な専門能力、教育または経験を備えているナレッジワーカー。彼らは自律を好むため、企業は自律性を大きく制限する新たなプロセスやテクノロジを導入するときには慎重に行動すべきだ──。本書は、そのナレッジワーカーのパフォーマンスと成果を引き上げたるためのノウハウをまとめている。
 業務改善を行うためには、それをプロセスとして扱う方がよい。しかし、ナレッジワーカーはプロセスの分析に慣れておらず、また、時間の無駄として放棄することがある。それについては、必要に応じて自由に創造的かつ即興的になることを許される一方で、プロセスがもたらす規律と定型性を享受できると説得することで、ナレッジワーカーへの訴求力が大きくなる(第4章)。
 ビジネスのパフォーマンス改善のための管理は、企業レベルやプロセスで行われがちだが、個々の社員の能力を強化してもよい。個人レベルのパフォーマンス改善には、グループの一員ではなく、個人としての社員の能力を直接高められる点と、新たなプロセスを作るより、何らかのスキルや能力の強化を目的としているという点の2つの特徴がある。CMMの5つの段階を上げるのに時間がかかる企業が多いが、企業レベルに加え、個人およびチームの能力を強化するプロセスを併せて採用した企業は、わずか1年しかかからなかった例もある(第6章)。
 効率的なマネジメントを行うことで、優秀なナレッジワーカーに最大限の成果を期待するマネージャ向け。(ライター・生井俊)
 
ハイコンセプト──「新しいこと」を考え出す人の時代
●ダニエル・ピンク=著/大前 研一=訳
●三笠書房 2006年5月
●1900円+税 4-8379-5666-1
 この20〜30年ほどの間、世の中はある種の知識を持った、特定の人たちのものだった。だが、これからの世界で成功を収めるのは、それとは違った能力を持つ人だという。本書ではその6つの重要な資質についてまとめている。
 過去150年間を振り返ると、“工業の時代”では、強靱(きょうじん)な肉体と不屈の精神力が必要だった。“情報の時代”では、左脳主導思考に熟達しているナレッジワーカーが中心的な役割を担ってきた。やがて「豊かさ」「アジア」「オートメーション」という3つの要因が浸透し、強まると、“コンセプトの時代”となる。そこで中心となる登場人物は「右脳主導思考」を身に付けているのが特徴だ。今後は、経済も社会も、ますます右脳に頼り、築かれるようになっていくと予測する(第1部)。
 コンセプトの時代には、左脳主導の考え方を、6つの不可欠な「右脳主導の資質」を身に付けることで補う必要がある。その6つの感性(センス)とは、機能だけでなく「デザイン」、議論よりは「物語」、個別よりも「全体の調和」、理論ではなく「共感」、まじめだけでなく「遊び心」、モノよりも「生きがい」から構成される。これらは、ますます私たちの生活を左右し、世の中を形作っていくという(第2部)。
 これらの能力は、基本的に人間に備わった資質であるといい、その感性を身に付け、鍛えるための演習問題や参考文献を数多く収録している。クリエイティブな仕事をしている人だけでなく、仕事をクリエイティブに変えるために役立つ。(ライター・生井俊)
 
研修では教えてくれない 開発現場で必要な24のチカラ
●山野 寛=著
●翔泳社 2006年3月
●1800円+税 4-7981-1034-5
 技術力絶対主義的だと思われがちなシステム開発の現場。そこで、ITエンジニアに期待されるスキルとは、技術力よりも、リスク察知やコミュニケーション能力、マネジメント能力に優れていることだろう。このように、これからのITエンジニアにとって本当に望まれる24の力を紹介する。
 第1章では、プログラム実装・テスト現場で必要な6つの力を取り上げる。コミュニケーション力、リスク対応力のほか、手抜きSEのせいでメチャメチャになったプロジェクトを回想しながら、優先度判断力の重要性を説く。優先度の高いタスクを見失い、容易なタスクにばかり手をつけてしまう手抜きSEの存在は、プロジェクトを「デスマーチ」へ導く原因になると指摘する。
 第4章では、要求分析・要件定義の現場で必要な6つの力を取り上げる。ここでは、「発言できないエンジニアは去れ」と発言力を強調するが、その一方で、お客さまにムダな時間を使わせてしまう過剰な提案を避け、お客さまが決断しやすい提案をしなければならないともいう。
 それぞれの「力」ごとに、現場での教訓とプロマネ視点のまとめがあり、新米SEからプロジェクトマネージャクラスまで、幅広い層で役立つ本に仕上がっている。(ライター・生井俊)
 
ITスキル標準ガイドブック──ITサービス人材育成への活用
●独立行政法人情報処理推進機構(IPA)ITスキル標準センター=著・監修
●メディアセレクト 2004年10月
●4200円+税 4-86147-002-1
 ITサービスプロフェッショナルの育成を目的に、その共通基準としてITスキル標準(ITSS)が登場したのが、2002年12月。これは11職種38専門分野からなり、この産業(一般企業の情報システム部門を含む)に従事する人材に対してキャリアパス/キャリアアップの道筋と目標を明確にしたもの。それを補完するため2003年7月および2004年8月に研修ロードマップが発表された。本書はその公式解説書。
 人材育成に必要な要素はスキル、コンピテンシー、リーダーシップの3点。この3要素は、すべての人に汎用的な人材育成を行うのではなく、スキルや職種に合った研修ロードマップを作成し、計画的に実施する。
 第2章では人材育成とITスキル標準の活用方法を、第5章ではその具体事例を取り上げ、活用に至るプロセスや実施する上のポイント、課題などを学ぶことができる。また、付録に米・英・独などの人材育成の状況と政策についてのレポートがあるほか、「ITスキル標準」(バージョン1.1)と「研修ロードマップ」(バージョン1.2)が閲覧できるCD-ROMが付属する。
 ITスキル標準で挙げているマーケティングやセールス、プロジェクトマネジメントなど11職種に該当する人、人材育成にかかわるマネージャなどは、該当職種についてまずは拾い読みしてはどうだろうか。(ライター・生井俊)
ITケイパビリティ 今すぐ始めるIT活用力──診断と処方箋
●國領二郎=監修 NTTデータ、NTTデータ経営研究所=著
●日経BP企画 2004年9月
●1800円+税 4-86130-041-X
 ITケイパビリティとは、「組織のもつIT活用能力」。本書の第1章では日本企業がITをうまく活用できていない実情を、総務省のデータなどを引用し紹介する。ITの導入効果について、「検証なし」の一方通行できた“優しい”日本社会に効果測定の必要性を説き、また、コアコンピタンスの明確化や情報システム運用に合わせた組織・制度の改革の面で、米国企業より遅れをとっていると指摘する。
 第2章では、なぜITの導入効果があがらないのか、経営層、IT部門、ユーザー部門の3組織から整理する。第3章では、「ITケイパビリティとは何か」をまとめ、それがもつ5要素(「IT活用ビジョン構成能力」「IT活用コミュニケーション能力」「プロセスデザイン能力」「IT投資適正化能力」「チェンジリーダー開発能力」)についての解説を加えている。
 ITケイパビリティの5要素について、企業でどれだけ実現できているか診断する項目を第4章で提示し、その解決策やヒントを「処方箋」として第5章にまとめる。
 本書は情報マネージャや情報システム部門関係者向けで、そのまま企業のIT活用力測定に利用できるほか、ITケイパビリティの入門書として活用できる。(ライター・生井俊)
情報技術を活かす組織能力──ITケイパビリティの事例研究
●岸眞理子、相原憲一=編著
●中央経済社 2004年7月
●3200円+税 ISBN4-502-37460-1
 情報技術の組織的活用能力(=ITケイパビリティ)に着目し、その概念と分析フレームワークから、企業によるIT導入効果をまとめている。
 企業が競争優位を獲得するには、ヒト・モノ・カネの3資源に加え、情報、技術力、ブランド、専門能力、組織能力などを開発し、これらを組み合わせて企業のケイパビリティを生成することが重要だ。ITケイパビリティは、情報技術資産とそれを扱う人的資産、情報技術を活用する企業コンテクストにかかわる資源に分類できるという。
 ここに登場する7社は、長野県の別所温泉にある上松屋旅館、靴下の専門店を展開するダンなど、ほとんどが衰退業界とされる世界で勝負を挑む中小企業である。
 上松屋旅館は、料理長の采配次第でブレのあった食材の調達コストを、情報システムを導入することで低く抑えることに成功した。また、ダンは、小売店に設置したPOSシステムのデータを、自社だけでなく染工場などとも情報共有し、商品販売サイクルの短縮化と在庫規模の適正化を実現し、販売機会損失や値崩れを防いでいる。
 伝統産業や中小企業であっても、適切な規模のIT導入には大きな効果があることを証明している本書は、大企業に限らず中堅・中小企業の情報マネージャに目を通して欲しい。
(ライター・生井俊)
インタンジブル・アセット──「IT投資と生産性」相関の原理
●エリック・ブリニョルフソン=著、CSK=訳・編
●ダイヤモンド社 2004年5月
●2000円+税 ISBN4-478-37465-1
 ERPシステム導入のような大規模プロジェクトを調査すると、平均的な支出は20億円強。ハードウェアのコストはそのうち5%にも満たない。コストの大半は、業務プロセスの再構築やユーザーの教育費に充てられる。これらの「組織資本」や「人的資本」を築くための投資は、ERPの初期導入コストの80%に及ぶという。
 こうした投資、そしてその結果としての効果としての情報システムの全体的な価値は、会社の貸借対照表に現れることはない。このような組織的資産を「インタンジブル・アセット」と呼ぶ。ハードばかりに目がいきがちだが、実は社員教育や、取引先との関係、顧客満足度、社員の忠誠心といったものが、実質的に生産性の向上を支える。その割合は、ハードウェアの投資額1ドルに対し、インタンジブル・アセットの平均投資額が9ドルになると本書は指摘する。
 前半はデルの「見えない工場」などを取り上げ、デジタル組織になるための7つの原則をまとめている。原則の例を挙げると第1は業務プロセスのデジタル化、第7は人的資本に投資することだという。後半はインタンジブル・アセットの効果を計算式を示しながら解説する。
 情報技術と生産性向上との相関関係を学ぶことで、企業の競争力を強化し、成功する確率を上げることが可能になる。情シス担当者のみならず、経営者も手にしてほしい。(ライター・生井俊)
最強組織の法則──新時代のチームワークとは何か
●ピーター・M・センゲ=著、守部 信之ほか=訳
●徳間書店 1995年6月
●1900円+税 ISBN4-19-860309-X
 注文量を増やせば増やすほど納品が遅れるのはなぜか──。企業をシステム思考の面から考察して、組織というシステムの特徴とその動作メカニズムを明らかにし、その従来型企業組織を乗り越える策として「ラーニング・オーガニゼーション」を提言する本。「リエンジニアリング」「コア・コンピタンス経営」と共に、1990年代の経営学を席巻したこのキーワードを世界に広めた原典である。といっても、日本では「ラーニング・オーガニゼーション」は「ナレッジマネジメント」に押されて、ブームといえるほどには盛り上がらなかった。本書も「ナレッジマネジメント」の関連書として紹介されることが多いが、やはりかなり視点が異なる。情報マネージャなら押さえておきたい1冊だ。

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