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ひがやすを対談「2010年は若手エンジニアにチャンスの年」

2009年は、IT業界にとっても景気が停滞した厳しい年であった。一方、IT技術は、クラウドの出現により、システムのアーキテクチャそのものが変わる新しい動きが見られている。経済、技術動向共に変化する中、ITエンジニアはどうすれば価値ある人材となれるのか。Seasar2開発者である電通国際情報サービス(ISID)のスーパーエンジニア ひがやすを氏と、元@IT発行人で現在「Publickey」を主宰するITジャーナリスト/ブロガーの新野淳一氏が意見を交わす。

  プラットフォームの大転換が起こった2009年

――2009年は景気の悪化により企業のIT投資が慎重な年でした。システムインテグレータ(SI)にとってはつらい年だったのではないでしょうか。どうお考えになりますか。

ひがやすを氏
1992年ISID入社。以後、主に金融業向けシステム開発に従事。NPO法人Seasarファウンデーションのチーフコミッターとして、2004年に開発に着手した“Seasar2”で、2006年「日経BP技術賞」、2007年には日本におけるOSS(オープンソースソフトウェア)開発の振興を図ることを目的とした独立行政法人情報処理推進機構「2006年度日本OSS貢献者賞」を受賞。

ひがやすを氏 確かに、ユーザー企業で内製化が進んだため、新規開発案件に頼るSIにとっては厳しい年でした。しかし、これは産業構造的に見れば良い潮流だと思います。なぜなら、「限られたコストと期間で、プロジェクトを効率的に回すため、技術力を駆使する」というモチベーションが育ったからです。従来多く見られた、SIに丸投げの要件があやふやな案件は、不確定要素を吸収するために、コストをかけなくてはなりません。しかし今後は、丸投げ案件は減り、ユーザー企業の要求がより明確に提示されるようになりますから、SIには依頼されたものを作る以外の“付加価値”が求められます。具体的には、アーキテクチャの設計や、フレームワークの選択といった高度な技術力と判断力です。好景気のままでは、こうした方向には行かなかったでしょう。

新野淳一氏 経済状況と共に、技術トレンドも大きく変化しています。元ガートナーのアナリストで現在はテックバイザージェイピー代表の栗原潔さんが、「数十年に一度のプラットフォームの大変換が起きている」とおっしゃっていましたが、現在、クラウドによって、かつてメインフレームからオープンシステムに変わったような大変換が起きています。

  クラウドでSIビジネスはどう変わるのか

――クラウドは、SIビジネスにどう変化をもたらすのでしょうか。

新野淳一氏
アスキーでITエンジニア、編集者として勤務した後、アットマーク・アイティ(現アイティメディア)の立ち上げに参画、@IT発行人として従事。2008年アイティメディアを退社後、自身のメディアである「Publickey」を立ち上げ、主宰者として取材活動を展開する。

ひが氏 クライアント/サーバ型のオープンシステムが台頭してきたのは、バブル崩壊後の1992年ごろですよね。それまでお金をかけてやってきたことを、「いかにお金をかけずにやるか」に注力した時期です。同じことが現在のクラウドにも当てはまります。技術の変化は、経済状況に影響される部分があるのでしょう。

新野氏 ただしクラウドで成功している企業はまだありません。ちょうど1年前にマイクロソフトが「Windows Azure」を発表したことで、プレイヤーがそろいはじめましたが、まだ選択肢が限られています。

ひが氏 この1年は「ITエンジニアがクラウドに真剣に取り組んだ年」であって、クラウドが本格的な経済活動に乗ってくるまでには、あと1〜2年かかるでしょう。わたし自身、自分が主宰しているSeasar2コミュニティで、この4月に初めてGoogle App EngineのJava版を使った開発に取り組み、半年以上かけていろいろ議論する中で、少しずつリスクが見えてきた状態です。

新野氏 今後、SIビジネスの利益の考え方も変わりますよね。これまでは、システム受注額のかなりの部分がハードウェア費用で、その中で特に冗長構成の部分は利益率の高い部分でした。ところが、同じ仕組みをクラウドに載せることで、その部分がほぼゼロになります。

ひが氏 ハードやインフラ部分の嵩上げ(かさあげ)が、限りなくゼロに近づくわけですね。

新野氏 そうです。これからはソフトウェアやフレームワークの上に載せるソリューションに高い付加価値を示せなければ、SIビジネスにとって苦しいことになるでしょう。

ひが氏 これからは売り上げではなく利益率、つまり付加価値を上げることが重要になりますね。

  2010年は、若手ITエンジニアにとってチャンスの年

――そのためにITエンジニアが身に付けるべき技術とは何でしょう。

ひが氏 クラウドは、基本的にいままでの技術の延長線上にあります。ただ、アーキテクチャが大きく変わるので、ITエンジニアの(これまで重宝されてきた)過去の経験などがほとんど役に立たなくなります。例えばデータの格納先にしても、RDBMSではなく、BigTableに代表されるようなキー・バリュー型データストアが注目されています。「データを正規化してきれいにデータモデルを作るスキル」よりもむしろ、よりスケールアウトするために「データを非正規化するスキル」の方が求められています。このスキルはまだ育っていません。

新野氏 なるほど、それはありますね。

ひが氏 だから現在は、ベテランよりも若手ITエンジニアにとって大きなチャンスなのです。いま、1年でも先にクラウドの勉強を始めておけば、その努力が報われる可能性があります。ただ、個人でビジネスに通用するスキルを得るには限界があります。クラウドに真剣に取り組んでいる企業がまだそれほどないので、そこが難しいのです。

新野氏 わたしが取材した中では、ここ3カ月ほどで、ユーザー/SI企業共に、クラウドに対する関心が急速に高まっています。クラウドを本格的に仕事に使うのであれば、個人で勉強するだけでは限界もありますから、それに合った会社を選ぶという選択肢もあるのではないでしょうか。

  30歳前後で「自分の作品」を構築しよう

――これからのITエンジニアのキャリア形成の仕方について、ご意見をお聞かせください。

新野氏 オフショアの広がり、ツールの進化などで、今後、プログラミングだけで成り立つ仕事というのはどんどん減っていくと思います。それでも歯を食いしばってプログラミングの道を究め、スーパープログラマを目指すか、それともその技術力をベースに、マネージャやコンサルタントなど、プログラマに隣接する職種に就くか。よく考え、道を選ぶことが重要だと思います。

ひが氏 少し違った意見になりますが、技術の移り変わりが激しいので、技術を知らないとマネジメントもできなくなると思うのです。例えばプログラマでも、「ユーザーと打ち合わせをしながらプロトタイプを作る」「ボトルネックになりそうなところを予め見つけて対処する」といったように、マネジメント的な能力も備えたうえで技術を理解した人が必要になるのではないでしょうか。

――ひがさんご自身は、どのようにキャリアを築かれたのですか。

ひが氏 わたしは、自分でコードを書いてやりたいことを実現したいというモチベーションがありました。ただ、どうやればいいかが分からなかったところに、オープンソースが出てきたのです。Seasar2を出し、世の中からフィードバックを得て、育てました。それが結果的に、会社に認めてもらうことにつながりました。

新野氏 確かに、「ITエンジニアの価値を認める企業」に属すことは重要です。しかし、キャリアを形成する要素としてそれは半分くらいしか占めていなくて、残り半分は「自分で価値をつかみ取る」ことにあると思います。例えば、Seaser2を作り上げたひがさんのように。ITエンジニアはそれができる職業だと思います。

 わたしは元々ITエンジニアでした。改めて思うのは、「ITエンジニアはつぶしがきく職業だ」ということです。いまや、会社はほとんどITで動いています。ITの動きが見えるということは、経営者とは違った視点で会社の動きを見られるということです。技術的な視点で世の中の方向性を予測することも可能です。その能力を生かし、ご自身のキャリアも構築していってほしいと思います。

ひが氏 わたしは29歳で、金融機関が日銀で決済するためのパッケージ開発のアーキテクトとしてプロジェクトに参加しました。そこでの成果物が自分にとっての“作品”となり、大きな自信にもなりました。ITエンジニアを続けるなら、自分自身で機会を作り出し、30歳前後に“作品”を作る機会を見つけていただきたいと思います。

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第3回:ITを武器にコンサルタントになる!
第4回:次世代DBエンジニアに必要なスキルはこれだ!
第5回:組込みエンジニアへの華麗なる転身を図る!
第6回:価値ある上流エンジニアを目指せ!
第7回:時代に取り残されないERPエンジニアになるには?
第8回:ネットワークエンジニアよ、「総合力」を付けろ!
第9回:ITアーキテクトの本質は、「新しい枠組みの提唱」
第10回:業界に革新を起こせるSaaSエンジニアになれ!
第11回:次世代プロジェクトマネージャの必須スキルは「現場力」
第12回:「判断力」「マーケティング力」が信頼される社内SEの条件
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第14回:不況に強い=オフショアされないエンジニアを目指せ
第15回:Rubyで広がるエンジニアの可能性
第16回:「顧客視点」を身に付け、ITコンサルタントへの転身を目指せ
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第25回:ひがやすを対談「2010年は若手エンジニアにチャンスの年」