実用化が見えてきたIPv6の相互接続実験

2000/6/8


インターネット上のIPv6ネットワークとも6BONEを経由してつながっていたため、外部の相手とQuakeで対戦できる

 次世代のインターネットプロトコルの標準となるIPv6の実用化が見えてきた。幕張メッセで7日から開催されているNetworld+Interop 2000の会場に張り巡らされたネットワーク「ShowNet」では、今年すべてのブースに対してIPv6のサービスを開始。展示会場ではIPv6の相互接続を行う「IPv6 ShowCase」が行われ、大手インターネットサービスプロバイダのIIJは、今年夏頃にIPv6の商用サービスを開始するという。

 IPv6のデモは以前からさまざまな場所で行われており、相互接続実験そのものは珍しいものではない。しかし、今回のN+I2000では、いままでのデモと比べて実用化への確実な進歩が見られた。

 その1つがWindows 2000のIPv6対応と、LinuxのIPv6対応が行われ、会場でデモが行われたことだ。Windows 2000は、IPv6対応のテクニカルプレビュー版プロトコルスタックを同社のWebサイトからダウンロード可能になっており、日本語版Windows 2000でも組み込んで試用することができる。Kondara Linuxでは6月8日発売の「Kondara MNU/Linux Server 1.1」でIPv6をサポートする。

 すでにSolarisやHP-UXなど、UNIXサーバ系のOSはIPv6対応のコードが組み込まれており、Windows 2000やLinuxがそれに加わることで、IPv6を受け入れる下地が幅広く整う。

 もう1つはアプリケーションの対応が進むことだ。今回のデモでは、マイクロソフトのInternet ExplorerとネットスケープのNetscape 6という2大WebブラウザのIPv6対応版が登場した、さらにネットワークゲームQuakeのIPv6対応版もデモが行われた。IPv6は、現在のIPv4とはアドレスの長さが違うため、アプリケーションでもそのアドレスの違いに対応しなければならない。そのため、一般にはIPv4のアプリケーションはそのままではIPv6に対応できない。しかしIPv6を推進しているWIDEプロジェクトの山本和彦氏は「ApacheやBind、sendmailなど、オープンソース系のアプリケーションはほぼIPv6への対応を済ませた」として、IPv6へのアプリケーションの移行は着実に進んでいるとした。

 プロトコルスタックの実装は、仕様だけを見て作っても実際に相互接続が可能になるほど簡単にできるものではない。IPv4の実装でも、BSD系のUNIXのソースコードがリファレンスとなり、安定した実装が広まったという経緯がある。そういう意味で、IPv6のプロトコルスタックがオープンソースとして「KAME Project」から公開されたことも重要な意味を持つ。NET/BSDなどのIPv6の実装はKAME Projectのソースを元に作られており、ルータなどネットワーク機器のIPv6対応も含めて今後実装面で重要なリファレンスになるはずだ。KAME Projectは日本の企業7社が中心となって進めているプロジェクトであり、IPv6の推進に大きな役割を果たしている。

 IPv6の登場は単にインターネットのアドレス空間が広がるだけでなく「かつての(すべてがグローバルアドレスで結ばれていた)エンドツーエンドのインターネットの姿を取り戻せる」(山本氏)。現在のIPv4は2008年前後にはアドレスが枯渇すると予測されているが、IPv6への移行は着実に進んでいると言えるだろう。

(編集局 新野淳一)

[関連リンク]
KAME Project
Windows 2000用IPv6プロトコルスタック
Kondara Linux(プレスリリース)

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