広告メディアとしてのWAPを検証する

2000/10/6
(10/03/00, 11:12 a.m ET) By Barnaby Page, TechWeb News

 ある国際広告代理店では、一部の広告主にとってWAPはPCベースのWeb上でのキャンペーンより高い効果が期待できるかもしれないと見ている。

Web広告より高いCTRを記録

 Beyond Interactive(Grey Global Groupのパートナー会社)によると、WAP対応の携帯電話上で今年初めに展開されたキャンペーンは、典型的なWebベースの広告よりも大幅に高いクリック・スルー・レート(CTR)を達成したという。

 だが、Beyond Interactiveは、(“広告”を意味する“アドバーツ(advererts)”に対して)「WAPバーツ(wap-verts)」は全ての広告主にとって適切なメディアにはならないともいっている。また、ビジュアル的な制限や、広告サーバに業界標準となるほどの説得力が欠けている点など、克服しなければならない課題も依然として残っているからだ。

 同社がFootball365(2000年初頭にヨーロッパで立ち上がったサッカー専門のWebポータル)のワイヤレスバージョン向けに展開したWAPキャンペーンは、7.4%というCTRを記録した。同社のメディアディレクターであるRick Sareen氏と同ポータルの持ち主である365 CorpのPaul Holland氏が、ロンドンで開催されたワイヤレス・コマース・カンファレンスで9月28日に語ったところによると、この数字は、Football365のWebベースの広告より高いだけでなく、1%未満というWebの平均的なCTRよりもはるかに高いという。

 Football365の広告(WAPをはじめとする各種フォーマットで入手可能)は、英国のFonedata、フィンランドのSunpoint、そしてデンマークのKrakという3つの独立系WAPポータルで流された。この6週間にわたるキャンペーンは、このメディアを試すかのように4万という延べ到達者数に終わった。

特性の多いWAPユーザー

 Sareen氏とHolland氏によると、WAPはWebサイト同様、即座に何らかのアクションを起こすことができるだけでなく、一部の広告主にターゲットを絞った市場を提供してくれるという。当時のWAPのオーディエンスは、新技術を早くとり入れることに抵抗のない25〜34才の裕福な男性に偏っており、大部分は技術系の職に就いていた。

 WAPというメディアは、すべての広告主やすべてのメッセージには適しておらず、今後もこの傾向は変わる可能性が高くはないという。今回の成功は、WAPユーザーのプロファイルが、偶然にもFootball365のようなサッカーポータルの見込みオーディエンスとうまくマッチしたからだ。  

 Football365のキャンペーンから数カ月たった現在、急速な成長を続けるWAP市場は断片化し、もはや均質的ではなくなっている。WAP対応携帯電話の台数や通信事業者によるサービスのマーケティングが増加し続けることで、女性が増え、技術系の人々への偏向が弱まるなど、ユーザーベースが拡大している。

 Sareen氏とHolland氏は、WAPの広告主は、ターゲットオーディエンスを特定し、理解することが重要になっており、少なくともホストコンテンツと同様、ユーザーと確実に関係のある広告を流すべきだと語る。広告主は広告サーバの信用を強く要求すべきだという。

進化する広告技術と機能

 両氏は、広告主は、WAP電話機の小さい画面スペースなど、このメディアのクリエイティビティの限界を認識する必要も強調する。しかし、WAPの広告主が利用できるテクニックは改善されつつある。Beyond Interactiveがキャンペーンを展開したとき、利用できるオプションは詳細な情報にリンクされるテキストしかなかった。だが、今では、クリック・スルーでユーザーを別のWAPページにリンクすることができるほか、電話をかけたり、電子メールを作成することもできるようになった。現在、WAPの広告には、ユーザーがページ間を移動する間に表示される広告メッセージの中にフラッシュ型広告や音楽をはさむこともできる。

 WAPベースの広告への関心の急増を計る方法の1つとして、サーバシステムの成長がある。Beyond InteractiveがFootball365のキャンペーンを展開したときは、24/7 Media所有の1台のサーバしか利用できなかった。だが今日では、ワイヤレスプラットフォーム向けの広告を管理、提供する多数のオプションがAdfone(CMGIの一事業部)、Advertising.com、Avenue A、Convigo、Engage、LifeMinders、およびMediaplexなどのベンダー各社から提供されている。

 Sareen氏とHolland氏は、広告主と代理店の双方が模索しているワイヤレス広告提供サービスの次の段階は、独立系サードパーティーによるサービスと見ている。DoubleClickなどの企業によるWeb上での独立系広告提供サービスは、自社で広告サーバを運用するポータル主が提供するものよりも説得力があるからだ。

高いか安いか、広告料金

 Football365のキャンペーンにかかったコストは明らかにされていないが、固定料金設定だったとのことだ。通常のワイヤレス広告料は従来のインターネットキャンペーンよりも高いが、これはオーディエンスのフォーカスが絞られていることやワイヤレス広告スペース市場が一般化されていないことを反映していると思われる。

 AdKnowledgeの研究者が公表したレポートによると、2000年の第2四半期におけるWeb広告の延べ到達者数1000人あたりの平均コストは34ドル23セントだったというが、これにはWebサイトによって20ドル以下から100ドル以上と大きな開きがある。

 これに対して、ポケットベルでは平均コスト75〜150ドルが典型的だ。Spotcast Communicationsが自社で運営し香港で展開している、ユーザーが広告を受け取る際にオーディオ、SMS、もしくはWebのいずれかを選ぶことができるというサービスでも、150ドルという料金が設定されている。

 WAPの広告主のメリットはほかにもある。このメディアに対する先駆者的イメージを持たれ、そのイメージの連想によりもたらされるPRのメリットは大きいだろうとSareen氏とHolland氏は言う。

 数字がどうであれ、WAPが持つ最先端のイメージや、移動中のユーザーをつかまえることができるという特長は、一部の広告主にとって魅力的であるはずだ。しかし、Sareen氏とHolland氏は、ワイヤレスの世界に飛び込む前によく考えるべきだと警告する。同一メディア上のポータルの宣伝に利用したFootball365の場合はWAPで成功したかもしれないが、これが全般的に適しているかについてはまだ審判が下っていないということだろう。

[英文記事]
WAP Could Be Boon For Online Advertising

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