Itaniumリリースに向けて着々と準備を整えるインテル

2000/11/1

 インテルは10月31日、東京都内のホテルでe-Businessソリューションに関するイベント「インテル ソリューションズ・ショーケース&フォーラム」を開催した。e-Businessソリューションや64bitプロセッサ「Itanium」など、同社が近年注力している分野の最新状況が、講演や展示会の中で紹介された。

 今回発表された内容は、先日米国で開催されたe-Businessに関するイベント「The eXCHANGE」とほぼ重なっており、国内向けにアレンジし直したものとなっている。したがって、特に目新しい発表はなかったが、ここでは、正式にパイロットリリースが開始されたItaniumの最新状況について、基調講演やQ&Aセッション、展示会場から得られた情報をもとにレポートしていこう。

費用対効果と柔軟性を強調するItanium

基調講演の壇上で負荷分散のデモを披露

 最近のインテルは、「e-Businessソリューション」という表現を盛んに使用している。インターネットを活用したe-Businessが活況を呈するなか、サーバ市場は無視できない規模に成長してきている。ワークグループやフロントエンドのサーバでは、ある程度のシェアをもつインテルだが、ことハイエンドクラスとなるとUNIXサーバの独壇場だ。同社としては、ぜひともItaniumを軸にこの牙城を崩していきたいところだろう。

 基調講演において、米インテルのジョン・デイビス氏はデモを交えながら、スケール・アウト/スケール・アップによるインテル・アーキテクチャの柔軟な拡張性を披露した。また、Itaniumがスタンダードとなるには、ソフトウェア/OS/ツールといった要素が重要であり、パートナーの協力が必須であることを強調していた。こういったオープン性や既存資産を強みに、サーバ市場での戦いでイニシアチブを握っていく考えなのだろう。

 基調講演後、プレス向けに開催されたQ&Aセッションでは、Itaniumに関する質問がいくつか寄せられた。内容は下記のとおり。

米インテル インテル・アーキテクチャ ソリューション・チャネル事業本部 副社長兼ディレクタ ジョン・デイビス氏

――インテル・アーキテクチャをe-Businessに用いるメリットは?
「1つには異なるOSをサポートすることがあげられる。現状のe-BusinessではさまざまなOSが利用されており、用途に応じて選択が可能だ。また、中小を含めて世界中のコンピュータメーカーからインテルプラットフォームがサポートされている。コストも重要な要素だろう。近年厳しい状況を迎えている.com企業にとって、投資効果は見直す必要がある。同じベンチマーク結果のシステムにおいては、インテル・アーキテクチャのシステムが、もっとも費用対効果が高いといえる」

――Itaniumリリースの現状のステータスは?
「製品化にはいくつかのステップが必要だ。現在まで、すでにデベロッパーと1年以上前から準備を重ねている。その結果、3万2000個のプロセッサが稼働し、400のアプリケーションを開発、HP-UX、64bit-Windows、AIX5での動作検証が行われている。現在はパイロットリリースのフェーズにあり、実際に顧客サイドにシステムを納入してテストをしてもらっている段階だ。テスト開始から4ヶ月〜半年後、2001年Q1〜Q2の正式出荷に向けて、OS、アプリケーション開発、量産体制の準備に入る。Itaniumシリーズの拡充や高クロック版の登場はその後となる。今の段階ではとにかくItaniumを触ってもらうことを考えている」

――あるメーカーから現状のItaniumでは5〜7割程度のパフォーマンスしか得られないと聞いたが?
「それは、(特定のデベロッパーのみに配られた)アーリーリリース(早期リリース版)のことだろう。早期リリース版で重要なのは、とにかく早めにリリースすることで、OSやアプリケーションの選定やチューニングが行われることだ。これは、いままでリリースされたすべてのプロセッサについて同じことがいえる。15〜16年前に80286プロセッサをリリースした際には、あくまで高速な8086プロセッサとして扱われた。プロテクトモード用のアプリケーションがなかったからだ。80386プロセッサも同様だ。これらは、実際に使われながらチューニングがなされていったのだ」

日立製作所のブースで展示していたItaniumシステムでは、Linux上で動作するOracleをデモ

展示会場ではItanium搭載システムが多数登場

 展示会場では、NEC、日本IBM、日本ユニシス、日立製作所、富士通、三菱電機、東芝など各社がItaniumのパイロットリリース版を用いたシステムを展示、データベースやアプリケーションサーバなどのソフトウェアを稼働させてデモストレーションを行っていた。

 パイロットリリースでは、特定の顧客のみにテストを兼ねてシステムを納入する限定出荷の形態をとるため、商談後すぐに納入、というわけにはいかない。こういった未完成とも言えるシステムにもかかわらず、各ブースの反応を聞く限り、来場者の関心はおおむね高かった。関心の高いユーザーは全体的に、将来のIA-64への移行を見据えてのテストケースを想定しているものだと思われる。いまItaniumの性能が必要というよりも、64bit環境への移行に備える意味合いが強いようだ。

三菱電機のブースでは、縦置き型とラックマント型のItaniumマシンをデモ。Windows 2000 Advanced Serverの64bit版でプレゼンテーションファイルを上演していた

 だが、三菱電機のブースで話を聞いたところによると、「大学等の研究機関で使用したい」と相談していた来場者もいたという。64bitの性能をフルに活かすには、浮動小数点演算や、広大なメモリ空間を利用してデータベースやデータマイニングといったアプリケーションを稼働させるのが、現状でもっとも効果が高い。現状のItaniumシステムの価格は「IA-32や他の64bit-UNIXシステムに比べても高い」が、正式にリリースが開始され量産効果が出てくるようになれば、価格対性能比が向上し、こういった用途での需要も高まるだろう。

(編集局 鈴木淳也)

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インテル発表のプレスリリース

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