好調なのはアジアだけ?Transmetaがロードマップを公開

2000/11/16
(11/13/00, 8:50 p.m ET)By Mark Hachman, TechWeb News

 Transmetaが具体的なロードマップや新しいパートナー、そして同社のコードモーフィングソフトウェア(CMS)の新バージョンの概要を明らかにしている。秘密主義を誇っていた同社の方針の転換は、アジアのOEMメーカーしかチップの採用に踏み切らなかったためだと思われる。  

 米国のPC業界に影響を与える狙いも含め、Transmetaは、CMSソフトウェアのバージョン4.2の公開に踏み切った。典型的なアプリケーションの動作には電力が必要だが、新バージョンでは、対前バージョン比で約20%削減すると同社は主張する。CMSソフトウェアは1回起動させるとそのソフトウェアコードを分析し、再度オペレーションが実行されたときには、さらに効率的に動作させる方法を見つけだしてくれる。同社はこれまで、コールドブート状態から1回だけ起動する従来のベンチマークソフトウェアはCMSコードの利点を本当に評価するには不適切なものだと主張してきた。

 TransmetaのCEO、David Ditzel氏はComdex Fall 2000で、「将来的にはソフトウェアがCrusoeにかなりのインパクトを与えるだろう」と語る。同氏は、CMSソフトウェアは一般的に年に1〜2回変更を加えるとしながらも、具体的なタイムテーブルを保証することも、同じような割合の消費電力低下を約束することもしなかった。Transmetaの経営陣によると、CMSのバージョン4.3は2001年の第3四半期頃の発表を予定しているという。

サプライヤーを拡大

 「Transmeta 5600」PCチップは現在600MHzでしか動作せず、アナリストの中には部品の供給に問題が浮上したのではないかといぶかる意見もあるが、Ditzel氏はこれを否定し、Transmetaが唯一指定している委託生産業者のIBM Microelectronicsについて、「IBMは素晴らしいパートナーだ」と述べた。

 Ditzel氏によると、Transmetaではセラミック基板を京セラなどのサプライヤーからも別途調達しているという。セラミックパッケージの供給不足は、IBMのもう1社のカスタマーであるSilicon Graphicsの障害にもなっている。

 11月13日には、NTK Technical CeramicsがIBMへセラミックパッケージを供給するという契約を結んだ。IBMのスポークスマンが声明の中で語ったところによると、この契約は2001年の半ばまでにIBMのセラミックパッケージングの容量を3倍に高めてくれる見込みだという。

 Ditzel氏は、ウエハの委託生産契約をTaiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC)と結んだことを正式に認めた。ウェアは当面は0.18ミクロンで、将来的には0.13ミクロン技術により製造される予定だ。TSMCは2001年前半に、0.18ミクロンプロセスで700MHzのクロックスピードを達成するようTransmetaを支援する。800もしくは900MHzは、0.13ミクロンプロセスが稼働する2001年後半には達成できるものと思われる。

インテルとの比較は“リンゴとミカン”  

 Transmetaでは、2002年には新アーキテクチャに移行する。名称はまだ決まっていない。Ditzel氏によると、この「ニューCrusoe」は、256ビットインタフェースに移行し、1サイクルあたり8つの命令、そして通常ベースでも5つの命令を実行することによってパフォーマンスを2倍に向上してくれるという(現行のTM 5600は1サイクルあたり最大4つ(統計平均で2.7)の命令を実行する128ビットチップとなっている)。

 この新しいCrusoeはCMSの新バージョンによって消費電力を0.5ワット未満に引き下げてくれるが、0.13ミクロン製造技術によるチップ縮小によって、チップのサイズは約90平方ミリというほぼ同じ大きさに収まるはずだ。

 ところが、アナリストはTransmetaにとって厳しい指摘をしている。マイクロプロセッサはノートブックPCに内蔵されるコンポーネントの1つに過ぎず、ハードドライブやLCDの方がさらに多くの電力を消費するというのだ。さらに、Crusoeチップのパフォーマンスに大きく疑問を唱えるIntelも、自社のPentium IIIチップの派生製品によって消費電力1ワット未満の市場をターゲットにしていることに言及している。

 これに対し、Transmetaのノートブックマーケティングディレクター、Mike DeNette氏は、Pentium IIIとCrusoeとを比較することは、リンゴとミカンを比べるようなものだと反論した。

 500MHzのMobile Pentium IIIでは、この種類のチップでは最大クロックスピードとなっているが、Transmetaの800MHzのTM5600はできるだけ800MHzで動作しないようデザインされている。「Intelは最もハイエンドのプロセッサを持ち出して、それをこの分野に投入しようと試みた。われわれは、できるだけ少ない消費電力から始めて次第に上げていくのが最良のアプローチだと判断した」(DeNette氏)

苦戦する北米市場  

 CrusoeはアジアのメーカーがデザインしたいくつかのPCでは採用されたものの、米国のOEM各社はあまり関心を示していない。

 しかしDitzel氏は13日、IBM、Compaq Computer、そして東芝がCrusoeを採用しないとした記事を「でたらめ」だとした。IBM ThinkpadのプロトタイプではIntelのPentium IIIの採用が明らかとなったが、これに対し「これは製品の1つに過ぎない」と動じない姿勢をみせる。  

 Transmetaに近い情報筋は、Compaqもアジア市場向けにデザインされた超小型ノートブックに同チップを採用することを重ねて強調している。ところが、CompaqのポータブルPC事業部で製品マーケティングディレクターを務めるJeff Groudan氏は、「われわれはこの技術の評価を進めているところであり、今後も続けていく」と語り、インタビューの中で採用のうわさを否定した。これに対し、Ditzel氏は「Compaqは事業部の数が多い」とコメントしている。

 元マーケティング担当副社長のDeNette氏によると、日本文化や超小型モーバイル機器のライフスタイルは、Crusoeの特性が光る薄型のポータブルノートブックに向いているという。たとえばカシオは日本限定発売のノートブック「Fiva」を出展した。8インチのスクリーンを装備し、幅が通常の半分で非常に小さいノートパソコンだ。 また、Rebel.comはCrusoeチップを搭載した小型の家庭用サーバを出展した。プロトタイプはほかにもFICやSaewooが出展しており、製品はNEC、日立、そしてソニーなどが出展している。

 Transmetaを採用している10社はいずれもアジアのメーカーだ。そのうち米国に製品を出荷しているのはTransmetaベースのVAIOのソニーだけだ。「われわれは米国での販売を行うようすべての企業を説得している」とDeNette氏は語っている。

[英文記事]
Transmeta Reveals Power-Saving Software, Silicon

[関連リンク]
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