情報システムの課題は「アプリケーションの統合と管理」

2001/3/17

 「今後5年の情報システム部の最重要課題は」と聞かれ何を挙げるべきだろう?――米ガートナーグループ バイスプレジデントでリサーチ・ディレクターでもあるディビッド・マッコイ(David W. McCoy)氏は「アプリケーション統合・管理」と答える。これは企業全体の課題として捉えられるべき課題であるにもかかわらず、多くの企業で、個々の開発グループに任せっきりになっているのが現状とのことだ。同社が3月13日、14日、都内で開催したカンファレンスでマッコイ氏は「アプリケーション・インテグレーション・シナリオ」と題し、アプリケーション統合という課題について論じた。

ディビッド・マッコイ氏

 eビジネスに対応するシステム構築が求められるなか、企業のシステムの現状はというと、さまざまなアプリケーションやレガシーシステムなどが混在する“スパゲッティ状態”のところが多い。情報システム部の典型的な仕事の90%以上が保守といわれているぐらいだ。

 解決策としてERPでシステムを置きかえるパターンを薦めるSI業者が多い。最近では、Webサービスに希望を託す企業も多い。が、「ERP導入にしろ、話題のWebサービスを取り入れるにしろ、解決にはならない」とマッコイ氏は言う。ERPの範囲は限界があるし、Webサービスでもレガシーシステムやビジネスパートナーとの間のデザインレベルでの不均衡を解決できないからだ。さらには、ハード/ソフトともにヘテロジニアス環境になる傾向は変わらないのだという。つまり、放っておけばシステムの“スパゲッティ”度は増すということになる。企業内のAtoA(アプリケーション対アプリケーション)、企業外のBtoBと、「統合」という課題は大きく降りかかっている。

 ではどうすれば良いのだろうか。マッコイ氏の提案は、「総指揮を執る“専任チーム”を作ること」だ。「企業内に(統合・管理専門の)セントラルインテグレーション・チームを作り、統合のアーキテクチャ図を作る。設計上、大切なのはインフラを共有すること」(マッコイ氏)。統合専任チームという概念が登場したのは2、3年前。BtoB進展の早かった米国では徐々に広まりつつあり、現在15%の企業がインテグレーション専門のチームを持つとも言われている。

 マッコイ氏の説明をまとめると、このチームは、「システムの管制塔」と「ソフトウェアの開発・管理」という2つの役割をもつ。「システムの管制塔」での主な作業は、ソフトウェア統合のインフラの選択/インストール/保守。このインフラには整合性は不可欠で、コミュニケーション・ミドルウェア(例:メッセージング)、プラットフォーム・ミドルウェア(例:ORB)、統合ミドルウェア(例:ゲートウェイ)、そしてファイル転送システムで構成される。「ソフトウェアの開発・管理」に関しては、統合アーキテクチャの作成と保守が重要な仕事となる。アプリケーションのインターフェイスにあわせた文書の変更なども含まれる。

 「チームはフル・タイムでなくてはならない」というマッコイ氏、アウトソーシングでは解決できないというのが氏の主張だ。「時間をかけてコミットするためにチームを組む必要がある。アウトソーシングは時間契約。これでは効果は期待できない」(マッコイ氏)。また、社内にチームを設置すれば、ナレッジの再利用や共有という利点もある。

 マッコイ氏に日本でのチーム性の可能性を聞いてみた。「システムの次なる課題がアプリケーション統合・管理であることは日本でも同じだ。大企業からこの手法を採用する動きが見られるだろう」。

(編集局 末岡洋子)

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日本ガートナーグループ

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