元シスコ会長、ベンチャーキャピタルを設立

2001/4/17

 シスコシステムズ・元会長の松本孝利氏(慶応義塾大学教授)が4月16日、大学や研究機関の成果をベースにした起業を促進し、ベンチャー企業の育成を目的とするベンチャーキャピタルを設立したと発表した。新会社はすでに設立済みで、発表と同時に第一号投資事業組合の資金募集を開始した。当初募集金額は150億〜200億円を想定する。

大前研一氏

 新会社の名称は「アカデミー キャピタル インベストメンツ株式会社(ACI)」で、資本金は5000万円、代表取締役社長には松本氏が就任する。常勤の取締役として、元クレディ スイス ファースト ボストン証券の岡林淳二氏、元シスコシステムズの田中克和氏、西沢伸樹氏が、非常勤の取締役として、大前研一氏(大前・アンド・アソシエーツ代表取締役)と村井純氏(慶応大学教授)が参加する。そのほか、アドバイザリーボードのメンバーに、清成忠男氏(法政大学総長)、国領二郎(慶応大学ビジネス・スクール教授)、鈴木幸一(IIJ代表取締役)などそうそうたる顔ぶれが並ぶ。

 松本氏は、「世界第2位のコンピュータ国である日本から、この分野でのデファクトスタンダードといえるものが出ていないことを残念に思っていた」「日本の状況は、シリコンバレーと違って、大学からスピンオフする環境がない」と危機感を語る。しかし、大学を中心とした研究機関で行われている学術研究の中に革新的なテクノロジーがないわけではなく、ビジネスとする仕組みがない状態であると指摘。ACIは、大学の眠れる技術を掘り起こし、ユニークかつ革新的なテクノロジーをベースとした起業を促進・育成することで、最終的には、日本のベンチャーの国際化・活性化を目指すとしている。

 支援スタイルはシリコンバレー型で、投資先に役員として入ったり、営業や経営戦略を共に考え、取引先や提携先を紹介するといった方法で、事業の立ち上げ支援を行う。ACI自体の収益は、投資先企業の新規株式公開(IPO)と買収・合併(M&A)を想定しているが、「5割以上はM&Aになるだろう」(松本氏)。特徴的な点として、大学総長・学長のコンソーシアムを運営し、スタートアップ企業の発掘とテクノロジーの評価を実施する。

 投資・インキュベーションの対象はIT分野に特化し、主にテクノロジーをベースにしたスタートアップ企業になる。また、ブロードバンドインフラ関連の企業に対しても積極的に投資していく。

野中ともよ氏

 戦略構築支援アドバイザーである大前研一氏は、「松本氏のやり方に全面的に賛同した。日本では、学校、特に公立学校とと産業界との結びつきが間接的であるが、これが直接的になるといいなと考えている。ネットバブルで浮かれた若者たちは、経営の勉強をしていない。経営はひとりでやるものではない。こうした若い人たちへのアドバイスをしていきたい。マレーシア、中国、韓国、インド、オーストラリアあたりまで視野に入れて、手伝いたい」と語る。同じくアドバイザーの野中ともよ氏(ジャーナリスト・日興リサーチセンター理事長)は、「最近の若者のメンタリティの変容を肌で感じている。社会にいいことしたい、と真顔でいう若者がいる。しかし、彼らにはチャネルがない。起業した若者への支援を本気でやるものがいない状況で大変意義あることだと考えている」と語っている。

(編集局 鈴木 崇)

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アカデミー キャピタル インベストメンツ

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