デルCOO、成功の秘訣を語る

2001/10/30

 世界経済の失速が指摘される中、デルコンピュータが好調だ。同社は10月初め、今年度第3四半期の業績見通しについて“変更なし”との発表を行った。PCの売上台数の伸び悩みなどで大手メーカーの下方修正が相次ぐ中、同社のビジネスモデルの成功が実証された形となった。同社では今期、72〜76億ドルの売上高を見込んでいる。10月29日、来日中の米デルコンピュータ 社長兼COO ケビン・ロリンズ(Kevin Rollins)氏が記者会見を開き、業界全体の見通しや同社の戦略について語った。

ロリンズ氏 同社会長兼CEO マイケル・デル氏とともに経営全般を管理しているロリンズ氏。同社の直販モデルの開発にも大きく寄与したといわれる

景気は来春に上向く

 ロリンズ氏のスピーチは、業界に対する氏の見解から始まった。「この2年ほど、景気動向が振るわない状態が続く中、ITの真価が問われている。だが、ITへの投資は常に上向いている。ITはビジネスの基本を変えるものではないが、(利用により)ビジネスを基本的に変えるものであることは間違いない」と語る。そういった理由から、「リバウンドは必ず起こる」(ロリンズ氏)。同氏およびデルでは、今後の市場動向について、来年の春〜夏にも上向きに好転すると見ているという。

 米国ではすでに販売が開始されたWindows XPが市場に与える影響については、「爆発的なインパクトは期待できないが、ポジティブなインパクトを与える」とした。企業がWindows XPの導入に入るのは、来春というのがロリンズ氏の予想。その理由として、評価に時間を要することと買い替えのサイクルを挙げる。「Y2K問題で、駆け込みでの買い替えがピークに達したのが1999年第2四半期。3年ごとの買い替えサイクルを当てはめると、来春に企業の買い替えが集中することになる。このタイミングでOSを買い替える企業が多いのではないか」(ロリンズ氏)。

強さの秘訣、“デル・モデル”

 同氏が最も強調したのは、景気動向からの影響が少ないデルの経営。「デルは、“関係(relationship)”というインターネット最大の特徴を活用したモデルを築き、成長を続けている」。この“関係ベースのモデル”とはもちろん、顧客、サプライヤ、パートナーを含むサプライチェーン、「デル・ダイレクト・モデル(通称“デル・モデル”)」のことである。効率の良いコスト構造を構築した同社は、在庫を3分の1減少(金額ベース)させることに成功し、現在在庫日数4日間を達成した。「サプライヤは常にデルへのオーダー状況を把握でき、自社への生産計画を立てることができる。デルのサプライチェーンは、パートナーの製造プロセスとデルの製造プロセスが合理的に効率化するバリューチェーンなのだ」(ロリンズ氏)。同社では、販売、社内業務、SCMと3分野でインターネットを利用することにより、販売管理費を10%以下に抑えている。

 デル・モデルは、先月11日の米テロ多発事件でも強さを実証した。事件発生後の航空機輸送停止による部品調達の遅れは、ほとんど同社のビジネスに影響を与えなかったという。「世界に複数ある拠点、サプライヤとの密接な関係から、供給体制を維持できた」と語る。ロリンズ氏はさらに、自社のビジネスへの影響を最小限にとどめただけではなく、支援活動でもデル・モデルを駆使し、3万5000台のシステムを出荷して顧客や援助団体をサポートしたことに触れた。

好調なエンタープライズ分野

 デルでは、オーダーの75%をオンラインで受けるコンシューマ市場だけではなく、ワークステーション/サーバ/ストレージからなるエンタープライズ部門でも、順調に成長を続けている。前四半期は、サーバで対前年同期比36%増を達成するなど、世界市場でのエンタープライズ製品の出荷台数を対前年同期比33%伸ばした。現在、世界主要20マーケット中、11の市場でトップまたは第2位を確保している。2000年初めにコンパックを抑えトップの座についた米国でのエンタープライズ全体市場では、さらにシェアを伸ばし現在40%を維持している。日本でも着実にシェアを伸ばしており、現在3位のポジションにつけているという。

 エンタープライズの中で今後成長が期待されるのがストレージ分野。この分野では、先日ストレージ最大手、米EMCとの世界規模での提携を結んだ。これにより、SAN市場でEMCの「CLARiiON」を共同ブランドで提供することになる。日本では、今年12月にも共同ブランド製品の提供を開始する予定だという。

日本市場は「順調」

 日本市場にはおおむね満足しているという。「スタートして10カ月目のDTC(デル・テクノロジー・コンサルティング)グループ(同社のサービス部門)、ストレージやワークステーションなど製品販売、経営面でも順調」(ロリンズ氏)。ゲートウェイの撤退に対しては、「プラス要因にはなるが、シェア拡大の直接要因にはならない。日本の顧客は品質に関しての要求が高いので、製品・サービスの質を上げることが大切だと考える」と実力で勝ち取って行く姿勢を示した。

(編集局 末岡洋子)

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