[Interview]
Rose伝導師、「将来、モデリングは開発者の必需品に」

2001/11/10

 ソフトウェア開発をめぐる、品質、納期といったプレッシャーに日々さらされているエンジニアは多いだろう。1980年代に米国で誕生したオブジェクト指向技術は、なんとか効率の良い開発はできないものかというエンジニアの課題を解決しようと、生まれたものだ。このオブジェクト指向技術に対応し、オブジェクト指向技術を利用したさまざまな方法論が編み出された。UMLは、各種の方法論を統合しようと立ちあがった技術者たちが、統合した方法論。そのUMLの開発ツール「Rationl Rose」を“伝導”するエバンジェリスト、米ラショナルソフトウェア テリー・クアトロニー(Terry Quatrani)氏にUML、オブジェクト指向技術全体の動向について伺った。

エバンジェリストとして世界中を飛び回るというクアトロニー氏。目標は“Rose Everywhere”、世界中の開発者がRoseを使うようになること

――UMLの歴史を簡単に教えてください

クアトロニー氏 UMLおよびモデリングの歴史は、1988年にさかのぼります。オブジェクト指向技術は当時、研究分野で用いられていました。ところが、その後3年ほどの間に、グラディー・ブーチ(Grady Booch)のものをはじめ、50種類以上ものメソドロジー(方法論)が誕生しました。メソドロジーによって表記法が異なるため、エンジニアの間には混乱が起こり始めました。そこで1994年、これらの乱立したメソドロジーを統合する必要を感じ、ブーチとジム・ランボー(James E. Rumbaugh)が統一化のイニシアティブをとったのです。まさに、“世界の混乱を終わらせよう”という感じで(笑)、ラショナルに同じ意志を持つ人が集まったのです。私がラショナルに加わったのもそのころでした。そして、「Unified Method .8」と呼ばれる最初のUMLが登場したのは1995年でした。これは、言語だけではなくプロセスも含む仕様でした。

 1995年に、ユースケースを用いるイヴァー・ヤコブソン(Ivar Jacobson)が加わり、その後2年間で、メソッドを定義し、言語とプロセスの分離を行いました。そして1997年9月にこの仕様をOMGに提出したのです。ラショナルは、統一化で果たした多大な影響から、強い存在感は持っているかもしれませんが、UMLを所有しているわけではありません。UMLはあくまで、コンソーシアムで策定されており、ラショナルはこの1社にすぎないのです。

 現在、UMLはバージョン1.4で、2002年中には2.0が発表される見通しです。

――エバンジェリストとしてどのような活動をされているのですか?

クアトロニー氏 世界中のエンジニアに、UMLとUML利用で得られる利点を伝えています。1995年に開始したのですが、当時まだ登場して間もないUMLを普及させるためには、UMLの素晴らしさを理解してもらう必要があると考えたからです。

 UML利用による利点は、2つあります。1つはコミュニケーション、もう1つがリスク軽減と品質の向上です。

――米国ではどのようにUMLが用いられているのでしょうか?

クアトロニー氏 産業や規模の大小は問わずに用いられています。COBOLに適用されるなど、非オブジェクト指向分野でも用いられ始めました。よく比較されるXP(エクストリーム・プログラミング)でも、RUP(Rational Unified Process)を用いるケースがあります。これは、UMLが産業に非依存で、あらゆるケースに対応できるということを実証していると言えるでしょう。

――日本は米国と比べ、オブジェクト指向技術を用いた開発は遅れていると思われますか?

クアトロニー氏 現在、米国でオブジェクト指向のモデリングを用いているのは全エンジニアの10%。オブジェクト指向への移行は、米国でも、いま起こり始めていることなのです。

 私個人の意見では、日本は決して特殊ではありません。エンジニアはソフトウェア開発に対し、世界共通の問題意識を持っていると思います。実際、前回来日した2年前と比較すると、日本はかなり進化しました。2年前は、「UMLとは何か」を説明することが多かったのですが、今回は、エンジニアから「UMLをどう使うのか、何ができるのか」と聞かれます。認知の段階は終わり、関心は高まっていることを感じます。

――エバンジェリストとして、普及を阻害する要因は何と感じていますか?

クアトロニー氏 よく、“モデリングがないことがコンペティタだ”と言っています。モデリングなしにコードを書くエンジニアが存在する、そのことがRoseのコンペティタなのです。ソフトウェア開発の問題は、コミュニケーション。ビルの建築工事と同じです。設計図がないのに、ビルが建てられるはずがありません。UMLはシステムの青写真という重要な役割を持つのです。

 普及に必要なことは、エンジニアの関心や熱意。いくら私がUMLの素晴らしさを伝えても、チームの中に“変えたい”と思う人がいないと私の言葉は届きません。

 現在の普及パターンとしては、社内のあるプロジェクトがUMLを用いて開発に成功したという事例を知って、他のプロジェクトへと導入が広まることが多い。このように、あるとき急に広まるものではなく、少しずつ広まるものだと思います。そういう点からも、エバンジェリストとして辛抱強く活動を行っています(笑)。米国では、大学でUMLを教え始めました。少しずつ活動は実を結び始めていると思っています。

――JavaやGUIベースの開発ツールの果たした役割をどう考えられますか?

クアトロニー氏 確かに、JavaやGUIベースの開発ツールの登場は大きな意味を持ちます。Javaはオブジェクト指向の言語です。オブジェクトをコードにマッピングしやすいというJavaの特徴は、オブジェクト指向の開発を後押ししていると言えるでしょう。将来、エンジニアのデスクトップには、GUIの開発ツール、開発ツール、そして モデリングツールの3つが必ず存在しており、手放せないものとなっていることで しょう。さらに、開発とモデリングの両ツールに関しては、統合が進むと思います。まさに、開発の“ワン・ストップ・ショッピング”ですね。こうなるためには、ツールが使いやすいものであることが前提ですが。

――最後に、日本のエンジニアにメッセージをお願いします

クアトロニー氏 エンジニアの使命は、より良いソフトウェアを早く開発すること。UMLとツール・セットのRoseを使って、その使命を実現させてください。

(宮下知起、編集局 末岡洋子)

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日本ラショナルソフトウェア

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