[Interview]
CMMよりもPPAが日本のビジネスに最適、NTTソフト

2001/12/21

 NTTソフトが現在力を入れているビジネスの1つに、今年(2001年)から開始したソフトウェアの開発プロセスを評価するコンサルティングサービスがある(「ソフトの開発プロセス評価がビジネスに」参照)。このソフトウェア開発プロセスは、経済産業省が国などのソフトウェア発注の条件として取り上げたこともあり、現在大きな注目を集めている。そのビジネスを立ち上げ、陣頭指揮をとっている同社カスタマーソリューションコンサルティングセンター センター長 田中僚史氏に、なぜ現在ソフトウェアの開発プロセスが注目を集めているのか、同社のコンサルティングサービスの取り組みについて話を聞いた。


NTTソフト ソリューションコンサルティングセンター センター長 田中 僚史氏

――CMMとPPAの違いなどを教えてほしい。

田中氏 CMM(Capability Maturity Model)はもともと、米国防総省がソフトウェアを購入する際に評価するために作られたソフトウェアの開発プロセスの成熟度モデルだ。レベルは1から5までの5段階で、米国防総省の調達は、レベル3以上の会社からでないとできない。レベル2は、組織のプロジェクトごとの成熟度を評価し、レベル3は、組織がどれだけ成熟しているかを見ている。

 それに対してPPA(Process Professional Assessment)は、英国で作られ、欧州で使われている成熟度モデルで、レベルは0から5までの6段階。PPAはどちらかというと、組織内部のプロセス改善のためのモデルといえる。

――ソフトウェアの開発プロセスの改善のコンサルティングを、現在注目を集めているCMMではなく、PPA中心にするのはなぜか?

田中氏 CMMは確かに注目されているが、ほかの企業も同じようなサービスを提供するため、ライバルも多いだろう。しかし、最大の理由は、ISO/IEC TR 15504(PPAが準拠したプロセス改善モデル)が2003年に正式に標準化される予定だからだ。国際標準になれば、ISO 9000などもそうだが、日本でも普及すると見ている。そのため、日本で初のリードアセッサ2名とアセッサ2名を養成した。

 また、PPAは導入しやすいという特徴がある。CMMは各レベルと各プロセスのすべてを企業が適合させなければならない。これはCMMもともとが国防総省が調達するソフトウェアだったため、すべてがガチガチに枠をはめられている。しかし、PPAは、その企業にあったプロセスだけを選択して、その部分だけを評価する、といったこともできるので、企業が利用しやすいと考えている。

 そうはいっても、2002年は全体のうちCMMのコンサルティングが7〜8割を占めるだろう。しかし、2003年にはPPAのコンサルティングが半分近く、できれば5割を超えるぐらいにしたい。

――なぜ現在、ソフトウェアの開発プロセスの改善が注目を集めていると思うか? 注目を集めるほど、日本のソフトウェア業界の生産性は低いのか?

田中氏は、常に人と人とがかかわりあうところでビジネスをやっていきたいという

田中氏 ソフトウェアを取り巻く環境が複雑になったためだ。汎用機ではハードとOSも同じベンダが提供していた。こうした時代は、人ががんばれば製品ができた。1人のスーパーSEがいれば、帳尻が合ったのは事実だろう。しかし、現在ではさまざまなハード、OS、アプリケーションが同じマシンが動作している。さらに、開発期間が短くなっている。こうした環境では、もう一部の人間だけで管理できなくなっている。

 ソフトに関しては、生産性が低いのは事実だろう。特に組み込みソフトでは低いと思う。また、品質も高いとはいえないのではないか。開発の方法論、管理方法、見積もりなどは、すべて汎用機時代の文化を引きずったままで、現状にそぐわなくなっている。そういった意味で、企業組織の標準ルールというのは、事実上破たんしているといえる。エンジニアは、どうやって開発を行えばいいのか、現在の状況に合った方法論を探し求めて途方に暮れていた。そこに、CMMやPPAなどの手法が現れたため、注目を集めているのではないか。

――開発手法としてのXPやUMLは、CMMやPPAなどの開発プロセスの改善手法とは矛盾することはないのか?

田中氏 基本的には問題ない。確かに、細かい点を見ると矛盾はある。しかし、開発プロセスの改善モデルに書いてあることを、マニュアルどおりそのまま当てはめればいいわけではない。だから別に矛盾があるからといって問題になるわけではない。確かにISO 9000系では、すべてを杓子定規に当てはめようとした。しかし、一番重要なのは現場の声だ。

 しかし、PPAでは必要なプロセスを選べばいいので、問題があっても柔軟に対応できる。また、CMMは、将来2モデル(段階的な成熟度モデルとISO/IEC TR 15504に準拠したプロセスごとに選択できる成熟度モデル)から選択できるようになるので、問題になることはないだろう。

(編集局 大内隆良)

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