コンポーネントベースの開発を実現するStructureBuilder

2002/2/21

米ウェブゲインJohn Cheesman氏 「CBDは サービスベースの開発を実現する」

 求められるアプリケーションが複雑かつ大規模になるにつれ、開発作業は困難さを増す。開発者の負担を何とか軽減しようと、いくつかの開発手法が登場したが、実際の現場でこれらの手法が生かしきれているかというと、そうでもない。開発ツールベンダのウェブゲインは、技術をJavaに絞り込んで、このテーマに取り組んだ。それが「WebGain StructureBuilder」(以下、StructureBuilder)だ。2月20日、米ウェブゲイン Director of TechnologyのJohn Cheesman氏が来日し、同製品で目指す、新たな開発アプローチについて語った。

 StructureBuilderは100%Pure Javaで設計された開発環境。J2EE、JSP、XML、XMI(XML Metadata Interchange )、CORBAなど各種標準技術をサポートしているが、中でも注目はUMLのサポートだ。同製品を用いることにより開発チームは、UML設計をベースとしたJavaアプリケーションの開発を実現できる。

 Cheesman氏はUMLの権威とも言われる人物で、コンポーネントベースのソフトウェアに関するスペックの策定プロセスに関する本『UML Components』(Addison-Wesley刊)を執筆している。米ウェブゲインには昨年10月加わった。

 同氏は、コンポーネントベースの開発手法として“CBD(Component-based Development)”を推奨する。そのメリットは、コンポーネントがもたらす柔軟性や統合性、再利用性といったもののほか、交換性、一元管理が可能といったものもあるという。

CBDの開発プロセス図 (赤字は対応するウェブゲインの製品名)

 CBDでの開発プロセスは、定義→設計→生産(構築、適用、統合、アウトソースなど)→(アセンブリ→)実装となる(左図参照)。このプロセスに沿えば、アプリケーション・チームとコンポーネント・チームに分かれての平行開発作業が実現する。つまり、コンポーネント・チームは“工場”のようにコンポーネントを生産し、様々なアプリケーションがそれらのコンポーネントを利用できる体制が整うわけだ。もちろん、ラショナルのRUP(Rational Unified Process)との併用も可能。

 CBDの重要な特徴である交換性は、コンポーネントのインターフェイスに関する2種類の仕様(「Interfaces Offered」「Interfaces Used」)により実現される。この2つを明確に記述することにより、「プラットフォームに依存することなくコンポーネントのプラグ&プレイが可能となる」(Cheesman氏)。

WebGain StructureBuilderは、このような特徴を持つCBDのためのUMLツール。UML1.3のサポートにより、クラス図とソースコードの自動的かつ動的な同期化機能を実現、開発の効率が向上するという。また、EJBコンポーネント作成支援機能により、検証も含めEJBコンポーネントの生成が自動的に行える(下の写真)。また作成したEJBコンポーネントをWebLogicなどアプリケーションサーバに配布できる「配布ビルダ」機能も備えた。

画面例:EJBコンポーネントを生成するところ (クリックで拡大)

 「モデリングとコードをいかに両立させるかは、最近のテーマ。OMGもこれに取り組み、新コンセプトMDA(モデル駆動型アーキテクチャ)を発表している。今回、StructureBuilderでは両方のツールを提供する。これにより、整合性が取れないといった不効率な開発作業から開発者を解放できるだろう」とCheesman氏。

 同氏は開発と生産性に関する例として、ヨーロッパでは米SI事業者のEDSが、生産性を高めるため、コードを再利用していることを取り上げた。「システム開発の60%はあらゆるシステムに共通した部分。開発の効率性を高めて競争力をつけるためには、無駄な作業を軽減するのは当然の流れ」とした。特に日本の開発現場では、システムの全体図を描き、開発レベルとは異なる視点でプロジェクトを統括する“開発アーキテクト”が不在といわれている。Cheesman氏の話を聞いていると、国際的な競争にさらされている現在、開発そのものを見直す段階に差し掛かったという印象を受けた。

(編集局 末岡洋子)

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ウェブゲイン StructureBuilder製品紹介のページ

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