Netscapeの復帰に対する複雑な思い

2002/4/12
April 3, 2002 InternetWeek, By Richard Karpinski

 世界にブラウザは2つもいらない。1つの「標準」Web環境がある方がはるかに良い。ところが、米ネットスケープのオープンソースブラウザのリリース準備がついに整い(米AOLはどうもこれを同社のオンラインサービスでInternet Explorerの代わりに採用するつもりのようだ)、「ブラウザ戦争」が再燃しそうな気配を帯びてきた。だが、それだけではない。開発者は、IEやNetscapeだけでなく、Opera、ワイヤレス対応ブラウザ、そして今後登場するであろう各種プラットフォームに対応するWeb標準と構造化ドキュメントデザインにも集中する必要があるのだ。

インターネットの真相

 この戦争はかなり長い間続いており、今回の再燃が実際に何を意味するのかは何とも言えない。今のWeb市場はNetscape Navigatorが支配していた頃とは状況が違うのだ。

 現在、「Mozilla」という同ブラウザ待望のオープンソースバージョンは重要な節目を迎えている。Mozilla.orgのサイトでは同ブラウザの0.9.9リリースを3月初旬にリリースした。そして、その数週間後には同プロジェクトのソースコードツリーが非公開となり、1.0リリースまでは新機能が一切追加されないことになっている。

 最も興味をそそられるのが、米ネットスケープの親会社であるAOLが、どうもAOLとCompuServeの両オンラインサービスでNetscapeブラウザを採用しようとしていると思われる点だ。これが実現すれば、同レンダリングエンジンのマーケットシェアは、一夜にして数百万人規模になってしまう。AOLによると、同社はNetscapeのレンダリングエンジンである「Gecko」のテストを進めているというが、今秋投入されるAOL 8.0で、IEの代わりにNetscapeが採用するかどうかの最終判断はまだ下していない様子だ。

 同ブラウザのオープンソース版投入には3年以上というかなりの月日を要した。その一方で、マイクロソフトはWebブラウザのマーケットシェアを独占するようになり、登場間もないOperaもIEに取って代わるべく徐々にユーザー層を拡大してきた。

最終的な意味

 しかし、Netscapeの復帰(AOLのデフォルトブラウザとしての復帰)がマイクロソフトにとって大打撃となることは明確だ。確かに最近はブラウザの存在感が以前ほどではなくなったとはいえ、マイクロソフトがその膨大なマーケットシェア(場合によっては80%以上に達する)によるメリットを享受していることは明白だ。このマーケットシェアは、同社がMicrosoft Media Playerなどの各種関連ソフトウェアを投入するのに役立っている。

 さらに重要なことは、マイクロソフトが今後推し進める.Netツールやサーバの戦略を実行していくうえで、クライアント市場を制することは大きな意味を持つということだ。例えば、米ガートナーは先週、.Netアプリケーションの60%が、IEと.Net版Active Xとの密接なつながりを活用する「リッチクライアント」になるとの予想を明らかにした。普及したブラウザという支援がないと、この戦略をうまく成功させることはかなり難しいだろう。

 Web標準をより強力にサポートするNetscapeブラウザが、マイクロソフトによる標準サポートの強化につながるのではないかという期待を抱く人も出てくるなど、Netscapeの復帰に対して開発者は複雑な思いを抱いている。先日解散してしまった(だが近日中に再結成される模様の)Web Standards Projectも、ブラウザベンダによるCSSやXMLといったW3C標準のサポート促進の強制で一定の成果を上げている。だがこの団体は解散前に、問題はブラウザの実装が悪かったのではなく、適格なHTMLコードでサイトを構築する際、デザイナーがブラウザごとにレイアウトに複雑な細工をすることに慣れてしまった(そして時には、その方を好んだ)ことだ、との皮肉なメッセージを残していった。

 実際、開発者の多くは、大部分のユーザーをカバーしているという前提に基づきIEをデファクトと想定してサイトを構築している。IEで見栄えが良ければそれで十分というわけだ。

 これは限定的な戦略であり、Netscapeの復帰はその打破に役立つものと思われる。なぜならば、結局のところWebサイトはIEやNetscapeだけでなく、今後登場してくるワイヤレスブラウザ(今後登場するプラットフォームは言うまでもない)などでの見栄えも良くする必要があるからだ。

 ブラウザ戦争に新たな動きを引き起こすのではなく、強力なWebデザインのための本来の基本(Standards Projectいわく、見栄えではなくドキュメント構造、オープン標準のサポート、そして何よりWebドキュメントの長期的持続性を最優先する全体的な原理へのフォーカス)を開発者に忠実に守らせることができれば、Netscapeの復帰は成功だと考えられる。

[英文記事]
Mixed Feelings About Netscape's Return

[関連リンク]
Mozilla.org
AOL
Netscape
Web Standards Project
Opera

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