次世代戦闘機で試される大規模コード管理

2002/5/21
By Richard Karpinski, InternetWeek May 14, 2002(10:54 AM)

 2000億ドルが投じられる「Joint Strike Fighter(JSF:統合攻撃戦闘機)」プロジェクトは、市場最大規模の軍事関連契約だが、それと同時に世界で最も野心的な(そして分散した)eビジネスプロジェクトでもある。このプロジェクトを獲得すべく、ベンダ各社はインターネットを頼みの綱とした。そして、プロジェクトを落札した米ロッキード・マーチンを中心とした関係業者各社は、製品データ管理プラットフォームやサプライチェーンシステムなどのeビジネスツールの重要性を強調した。

 このプロジェクトが急ピッチで進み出したところで、同プロジェクトのもう1つの側面(開発プロセスやデザイン体系全体のコードを管理するインフラ)について、ロッキードの担当者に話を聞いた。

 ロッキードは今月、ソフトウェアの設定管理を行う米メラントや要件定義管理を行う米テレロジックなど、このプロジェクトを指揮する複数のベンダを指名した。統合攻撃戦闘機(JSF)チームのソフトウェアエンジニアリング担当シニアマネージャ、George Wirtz氏によると、大規模なプロジェクトを分散環境でスムーズに進めるためには、厳格なコード管理は必須といえるが、両社をはじめとする複数のベンダがこのような環境をサポートしているという。

 Wirtz氏によると、ロッキードは5年以上前から(政府の資金援助と指導を受けて)次世代ソフトウェア・エンジニアリング環境の構築を進めてきたという。その目的は、すべてのサプライヤにまったく同じツールの使用を強要することではなく、点在する開発作業をまとめられるように、システムやプロセスを導入することにある。

 ロッキードはJSFプロジェクトの一環として、開発設定管理ツール(メラント製)、要件定義管理ツール(テレロジック製)、自社製インターフェイス管理ツール、そしてマニュアル用のMicrosoft Officeからなる、新しい四面アーキテクチャも公開している。

 重要なポイントは、ロッキードのような軍需ベンダがソフトウェア・エンジニアリングの重要な部分に既製のソフトウェアを使用していることだ。Wirtz氏によると、これは同社がコストを抑制する必要性に迫られているということだけでなく、規模も最大で、かつ機密性も最高位のソフトウェア・プロジェクトをサポートできるツールがすでに市販されているという事実も示しているのだという。

 「軍事航空宇宙関連(ベンダ各社)のこれまでを振り返ると、常にベンダ各社が専用のツールを構築できる巨大な市場規模があった。だが、もうそのような状況ではない。われわれは、可能な限り主流の市販技術を使うよう、完全に方向転換したのだ」(Wirtz氏)

 比較的新しく、協調的な環境ではあるものの、従来の重要なソフトウェア・エンジニアリング作業は、Wirtz氏の新しいアーキテクチャに含まれる2つの市販ソフトが処理している。

 メラントの「PVCS Dimensions」プラットフォームは、プロジェクトの膨大なソフトウェア資産の管理を担当する。デベロッパは、同管理ツールを使うことでコードのチェックイン/チェックアウト、バージョン管理、コードの再利用が可能になるだけでなく、開発プロセス全体の「閉じた」スナップショットをチームに提示することも可能となる。Wirtz氏によると、プロジェクトのコードを最高の品質で予定どおり完成させるためには、(多数の貢献者のニーズを満たすために拡大や縮小の必要があっても)開発サイクルを厳密にコントロールすることが重要だという。

 一方のテレロジックのプラットフォームは、要件定義管理を処理することになる(今回のような大規模のソフトウェア・プロジェクトでは、大量の分析/サポート情報のサポートは必須だ)。

 メラントの製品管理ディレクター、Ashley Owen氏によると、このような自動化は、どのような規模の開発プロジェクトにとってもメリットになるという。

 Owen氏は、「ロッキードのJSFが厳密な(開発)プロセスを持っているからといって、これが主流のプロセスにも同様に当てはまるということはない」とし、開発チームが具体的なサービスレベル契約(SLA)を目指して作業を進める傾向を指摘する。このような中、デベロッパが変更を理解およびトラッキングする手助けとなる閉じたツールは、プロセスコントロールのレベルを引き上げてくれるという。

 「ソフトウェア・プロジェクト固有のリスクを削減することがロッキードにとってのカギ、そしてすべてのベンダにとってのカギである。プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、リスクも大きくなる。だが、効率と予測性を求めているのはどのプロジェクトも同じだ」(Owen氏)

 すべてのプロセスが軍事プロジェクトほど厳密である必要はない。Owen氏によると、現実には多くの企業は抑制されないワークフローによる自動化を望んでいるという。

 「ロッキードなどの防衛関連請負業者は非常に“重い”プロセスを持っているように思われがちだが、実際は、これらのプロセスも自動化すればWebプロジェクトと同じように迅速に進めることができる。反復可能なプロセスを定義し、実施すれば、そのメリットは計りしれない」(Owen氏)

 ロッキードは複雑なワークフローを単に管理するだけでなく、幅広く分散した環境でそれを行わなくてはならない。従って、同社のソフトウェア・エンジニアリング環境は当然のごとくファイアウォールの外にいるデベロッパなどとの協力体制を重視している。

 ロッキードのWirtz氏は、「このプロジェクトでは協調作業の側面が大きな課題だ」と認める。

 同氏によると、ロッキードが今回のJSFプロジェクトで試している新しいアプローチの1つが、データ共有を容易にすべく、主要なプロジェクトデータベースを各社のネットワークの外側にある共有の「仮想処理センター」に設置するというものだという。そして、その間に同社のソフトウェア管理環境がワークフローの維持管理を支援することになる。

 現在のところ、ロッキードと同社のパートナー各社はまだJSFプロジェクトのコーディングにおける要件定義フェイズの初期段階にあり、最初の戦闘機が組み立てラインを離れるのは2008年以降の予定となっている。同プロジェクトの厳密なソフトウェア・エンジニアリング環境は、このスケジュールを予定どおり進めることを目指している。

[英文記事]
Managing Code On A Massive Scale

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