Linuxを採用し、ザウルスは世界征服を狙う

2002/7/9

 シャープが「ザウルス」を初めて発表したのは、PDAというカテゴリが確立される前の1993年。その後、Palm、Windows CEやPocket PCなどのOSが登場し、海外勢力におされ気味となったシャープは、新たな決断に踏み切った。昨年末、それまでの独自OSから路線を変更し、Linuxを採用すると発表、世界征服に打って出たのだ。このLinux搭載のザウルスは昨年11月に米国で先行発売され、今年の3月には欧州でも販売を開始した。

「Zaurus SL-A300」

 そのLinux搭載ザウルス、日本では6月24日に「Zaurus SL-A300」として発表された。7月5日、同製品の発表を記念して開催されたセミナーで同社 通信システム事業本部 モバイルシステム事業部長の宇野祐史氏が基調講演を行い、Linuxザウルス戦略について語った。

 情報化社会では、情報の活用が個人でもビジネスでも課題となる。モバイルというと、PDA以外にもノートPC、携帯電話が含まれるが、PDAは携帯性と携帯電話より大きなスクリーンが強み。インターネットへアクセスするモバイル端末としては最適と分析した同社は、新しいザウルスの開発にあたり、“電子化された情報をモバイルで見る・活用する”を焦点とした。これを、生活(パーソナルとビジネス)と情報(閲覧と作成)の2つの軸を用いて検証し、情報の閲覧・ビジネス生活のサポート、という分野に絞り、“コンテンツ・ビューア”という位置付けにした。

 もう1つの焦点が、“世界のザウルスにする”という同社の野望だ。「世界のザウルスとは、世界のソフトウェアやハードウェアが使えるザウルス」(宇野氏)。そのために必要なのは、OSのオープン性と、資産を継続して使えるための自由度の高さ。その解として、Linuxが選ばれたというわけだ。

 宇野氏はLinuxを採用するメリットについて、「世界でLinuxを使用するソフトウェア開発者は250万人、自由にソフトウェアを開発してもらうことが重要となる」と語る。もちろん、これまで同社が培ってきた、日本語手書き認識機能やユーザーインターフェイス、移動体通信技術、低消費電力技術なども生かされる。「Linuxをベースにこれらの機能を融合させることが、今後のザウルス事業の基本的方針となる」という。

 オープンソースの思想を戦略として取り入れた同社は、開発サイトも設け、世界の開発者に技術情報などを提供している。現在、登録者数は3万人、開発されたJavaアプリケーションの本数は約330本という。開発環境は、Qt/Embedded、PersonalJava、ル・クローン。日本でも、開発者はもちろん、周辺ハードウェアベンダなどとの関係を密にし、共同プロモーションなども展開していくという。「世界のザウルスとなったことで、ケタ違いのビジネス展開が可能となる」と宇野氏は自信を見せる。

「ザウルスショット」では、ボタン1つでデータの取り込みが可能。地下鉄の乗換え案内のWebページを瞬時に取り込んだところ
(クリックで拡大)

 シンプル、スムーズ、スモールを開発コンセプトとした新製品SL-A300の大きな特徴は、「ザウルスショット」と「ザウルスドライブ」の2つの機能。ザウルスショットは、PC上のWebサイトや表などの画面をイメージとしてそのまま取り込む機能(上写真)。対象となるウィンドウにカーソルを合わせプリントスクリーンキーを押すだけで、ザウルス上に表示される。取り込みにかかる時間はわずか1〜2秒。ファイル形式もさまざまなものをサポートする。ザウルスドライブでは、USBケーブルでPCと接続し、ザウルスを外付けハードウェアと認識させることで、PCにあるファイルをドラッグ&ドロップで保存できる。また、スモールという点では、世界最小・最軽量を実現し、本体の薄さは12.5mm、重さは120g。

 海外ではすでに2万5000台が出荷され、評判も上々という。日本では7月12日に店頭に並ぶ(価格はオープン)。

(編集局 末岡洋子)

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シャープの発表資料

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