「金融業界に力を入れる」、SAPのターゲットはすべての地銀

2002/10/18

 SAP ジャパンと富士総合研究所は、金融機関向けに四半期決算の開示を効率化させる会計ソリューション「金融業向けSAP R/3 会計テンプレート銀行版」を開発し、共同で販売すると発表した。

 2003年4月から開示が義務化される東証上場企業の四半期決算については、集計方法を変更したり、システムの新規開発が必要になり、膨大な開発コストや人的リソースが必要となる。そのため、大手都銀は行内でプロジェクトを立ち上げて取り組んでいるという。その中で、資金力が乏しい地方銀行は四半期決算の公表に合わせて、行内の会計システムを更新するのは難しいといわれている。SAP ジャパンと富士総研はこの点に着目。会計テンプレートの導入でシステム負担の軽減と、経営の効率化を実現できるとアピールして、地方銀行中心に営業をかける。

SAPの金融セクター 金融営業部 田村英則氏は「銀行の系列を超えて会計テンプレートの導入を進めていきたい」と述べた

 SAPと富士総研は年内に数行、来年には30行程度の顧客獲得を目指す。将来的には全国の地銀すべてに今回の会計テンプレートを導入したい考えだ。SAPの金融セクター 金融営業部 田村英則氏は「これまで金融業界ではERPに対する認知度が低かったが、ここ数年で変わってきた」と述べ、「SAPとして金融業界に力を入れていく」と新規開拓を目指す考えを述べた。

 会計テンプレートは銀行業務中でもバックオフィス系の銀行経理、資産管理を担当する。四半期決算用に決算業務を標準化し、官庁への提出書類の作成など銀行業特有の決算帳票も出力できる。銀行子会社との連結決算の業務もサポート。子会社の財務諸表を取り込んで、連結での決算に反映させることができる。さらに会計テンプレートには、銀行が独自に開発してきた勘定系システムとデータの受け渡しをできるようにするインターフェイスプログラムがあり、期末残高や期末平均残高など決算処理に必要なデータを取り込むことが可能となっている。

 SAPによると会計テンプレートの導入で、四半期決算を開示できるまでの期間は、従来の3分の2に短縮できるという。会計テンプレート自体の価格は500万円から。会計テンプレート導入による銀行側の総コストは、R/3のシステム導入やコンサルティング、ハードウェアなどを含めて最低5000万円。利用するライセンスなどによって最高で2億円になるという。SAPと富士総研は、銀行向け以外の業態にも会計ソリューションの提供を考えていて、今後、生損保版やノンバンク版の開発も予定している。

 SAPと富士総研は、すでに地銀に会計テンプレートを導入するプロジェクトを進行させている。最大手の都銀などにシステム評価を依頼し、高い評価も受けているという。販売、導入支援を担当する富士総研がみずほ銀行系のため、SAPはそのほかの銀行系システム会社とも協力する姿勢で、すでに三井住友銀行系のさくら情報システム、東京三菱銀行系のダイヤモンド富士ソフトと、販売、導入支援で協力することに合意している。販売ではハードウェアベンダとの提携も考えている。

 銀行の業務システムは、UFJ銀行が日立と合弁で設立したシステム会社「UFJ日立システムズ」に勘定系システムを移管するなど外部委託する動きが出てきている。金融は信頼性が最も求められ、システムダウンが許されない分野だが、SAPのように銀行子会社のシステム会社と組むことで、業務システムのアウトソーシングが促進されるかもしれない。

(垣内郁栄)

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