[Interview]
W3Cテクニカル・アーキテクチャ・グループの最新議論

2002/12/3

W3Cテクニカル・アーキテクチャ・グループのティム・ブレイ(Tim Bray)氏

 World Wide Webを発明したティム・バーナーズ・リー(Tim Berners-Lee)氏が率いるWorld Wide Web Consortium(W3C)は、HTMLやHTTP、XML、SOAPなど、Webを構成するさまざまな標準を進化させ続けている。そのW3Cの中で、Webのアーキテクチャそのものを担当しているのがテクニカル・アーキテクチャ・グループ(Technical Architecture Group、略称TAG)だ。メンバーの1人であるティム・ブレイ氏に、Web標準の進化と策定における問題点を聞いた。

――TAGのメンバー構成は?

ブレイ氏 メンバーは9人いて、その1人がティム(バーナーズリー)だ。残りの8人のうち、3人はティムが推薦したメンバー、5人がW3C内から投票で選ばれる。各メンバーは、BEAシステムズやHPやApache Software Foundationなど、さまざまな組織に所属している。

――TAGの役割とは?

ブレイ氏 Webのアーキテクチャを担当するとともに、XMLやHTML、XQueryなどのW3C内に存在するさまざまなグループが策定する仕様の整合性を調整することも行っている。

――Webのアーキテクチャとは、具体的には何を指すのか?

ブレイ氏 例えばURIやハイパーリンク、名前空間などがそれに当たる。これらについて議論し、ドキュメントにまとめることが主な役割だ。URIやハイパーリンクなどはWebを支える最も基本的な要素だが、Webの進化の過程でこれらを取り巻くさまざまな議論や問題が発生しており、それらを調整することも大事な仕事だ。

――W3C内のグループ間の調整とは、具体的にはどのように行っているのか。

ブレイ氏 徹底的に話し合っている。さまざまな面から問題を話し合い、解決策を見つけていく。例えば最近では、XHTML 2.0を策定中のグループが、XLinkの採用を拒否してHLinkの採用を決めようとした、という例があった(編注:XLinkはXMLの技術を利用したハイパーリンク技術で、次世代のハイパーリンクと考えられている)。これについてTAGを中心にどの仕様をXHTML 2.0のハイパーリンク機能として採用すべきか話し合っている。

――そのほかにTAGではどんな議論を抱えているのか?

ブレイ氏 SOAP 1.2の例もあった。SOAP 1.2ではHTTPのGETをサポートしないまま仕様が決められようとしていた。ご存じのように、Web上のすべてのリソースは、その所在を示すURIを持っており、URIがあることがWebであることの条件ともいえる。しかしGETをサポートしないと、SOAPで対象とするリソースにURIを割り当てることができない。URIがなければそれはWebの一部ではなく、従ってSOAPもWebテクノロジではない、ということになってしまい、大きな問題になるところだった。こうした点を話し合った結果、SOAP 1.2では最終的にGETをサポートするようになった。

――あなた自身でも、XQueryからXML Schemaを切り離すべきだ、といった主張をされていますね。

ブレイ氏 標準同士の依存関係はさまざまあり、すべての標準は整合性や統一性があって、協調して動作するようなるべきだろう。そのために多くの問題が話し合われている。しかし、W3Cのどのグループも基本的には非常に協力的で、協調して問題を解決しようとしている点は助かっている。

――W3Cでは、技術的な議論のほかにも、パテントポリシーについても長い間議論されていますね。

ブレイ氏 企業には多くの弁護士がついており、企業が特許を主張しなくなれば彼らは職を失ってしまうからね。しかし、Webの標準を使うときに企業の特許権を気にしなければならない、というのは望ましくないと思う。Web標準はロイヤリティフリーになるべきだろう。

(編集局 新野淳一)

更新履歴2002/12/20
XHTML 2.0におけるXLinkの扱いと、パテットポリシーについて事実と異なる記述がありましたので、訂正しました。

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W3C Technical Architecture Group

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