米同時多発テロ発生、被災したメリルリンチはPCを組み立てた

2003/2/22

特定非営利活動法人 危機管理対策機構の事務局長 細坪信二氏

 災害に遭った企業がどのようにデータを保護、復旧するのかというディザスタ・リカバリ・ソリューションが注目されている。しかし、大規模テロや震災など都市全体が破壊されるような大きな災害では対応にも限界がある。2001年9月の米国での同時多発テロに、米企業はどのように対応したのか。コンピュータ・アソシエイツが開催したイベント「CA BrightStorフォーラム」で、特定非営利活動法人 危機管理対策機構の事務局長 細坪信二氏が紹介した。

 細坪氏が説明したのは米メリルリンチの対応。ニューヨークで被害が出たワールドトレードセンター(WTC)近くに複数のオフィスを構えていたメリルリンチは、WTC北タワーに1機目の旅客機が激突した7分後に、総務系の災害対策本部を立ち上げた。その8分後にはWTC南タワーに2機目が激突。建物からの避難を開始するとともに、社内システムの復旧を目的とした災害対策本部「テクノロジーコマンドセンター」を立ち上げた。最初の激突から約1時間後だった。社員の安否確認を開始したのはそのあとだった。9月11日の夕刻には被害状況の報告が行われ、トップが対応方針を決定。全社員に発表された。

 メリルリンチには当時、被害地域に9000人の社員がいたが、9月18日までに8300人があらかじめ災害用に用意していた別の場所でバックアップデータを使い業務を再開した。避難した社員が最初に行ったのは、PCの組み立てだった。オフィスが災害地域に指定されたために立ち入りができなくなり、PCが不足したのだ。システム担当社員だけでなく社員総出で5500台のPCを組み立てたという。本来はこのような作業はベンダに任せるのだろうが、テロのような非常時は自らの手で行うしかない。

 細坪氏がディザスタ・リカバリで重視するのは、素早い対応をして一刻も早く業務を再開し、取引先企業やマーケットに対して自社が正常であることを印象付けることだ。重要なビジネス機能を中断させないことが大切で、「復旧と同時平行で、別の場所を用意してビジネスを継続させる。コアビジネスの入り口だけでも立ち上げる必要がある」と細坪氏は述べた。

 メリルリンチも場所を別に用意して、素早くビジネスを再開したことでテロの影響を最小限にすることができた。テロの被害で急落した同社の株価は、テロ後1カ月でほぼテロ前の水準に戻った。

 細坪氏によると、メリルリンチは全世界統一でビジネス継続計画の方針や手順、ツールを確立していた。社員1500人がビジネス継続のための訓練を受けていた。また、2000年問題対策で詳細な計画を策定していたのが役立ったという。

 細坪氏は同じくニューヨークで被災したドイツ銀行の例も紹介した。ドイツ銀行はニュージャージーに1400人が働くことができる倉庫を持っていて、テロ発生後はその倉庫を利用してビジネスを継続した。テロ発生後、2時間10分で業務を再開できたという。ドイツ銀行はテロを予想した訓練を行っていた。細坪氏によると「テロよりも、日ごろの復旧対応訓練の方が大変だった」と述べた社員もいたという。

 東京で大規模な災害が起きた場合、主要道路は通行禁止になり、ほとんど身動きができなくなる。データをバックアップしてあるiDCに向かおうとしても歩いていかなくてはならない。また、災害対策の担当社員が出社できないかもしれない。災害対策を成功させるために細坪氏が重視するのは、経営者の理解とともに、徹底した事前調査と分析に基づく計画作り。さらに計画にのっとった訓練だ。システムの復旧では、どの業務から復旧させるのかという振り分けが重要になる。だが、スムーズな災害復旧を行えば、それが企業の信頼性向上やイメージ向上につながる。細坪氏は「危機はビジネスチャンスになる」と述べた。

(垣内郁栄)

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コンピュータ・アソシエイツ
危機管理対策機構

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