[Interview]
Mac OS v10がBSD系UNIXでなければならなかった理由

2003/3/1

米アップルコンピュータ Product Line Manager WW Software Product Marketing アーネスト・プラバカー(Ernest Prabhakar)氏
 「SUN SUPER TECH DAYS」(主催:サン・マイクロシステムズ)に合わせ、米アップルコンピュータ Product Line Manager WW Software Product Marketing アーネスト・プラバカー(Ernest Prabhakar)氏が来日した。「徹底的なオープンスタンダード準拠とオープンソース思想に基づく比類なきOS」とプラバカー氏が胸を張るMac OS v10.2の、開発環境としての側面およびJavaに対するアップルの姿勢を聞いた。

――開発環境として考えた場合のMac OS v10.2は、開発者にとってどのようなインパクトをもたらすと考えますか。そもそもOSだけで比較するなら、Windows、Linux、Solarisといった代表的なOSだけではなく、さまざまな環境が乱立している状況です。開発者があえてMac OS v10.2を選択する理由はあるのでしょうか。

プラバカー氏 結論から言えば、Mac OS v10.2はJava開発者にとってはベストな環境だということです。(UNIXベースのオープンソースコアである)Darwinを基盤とした堅牢なUNIXの環境であり、100%ともいえる完璧なJavaへの対応を常に行っています。加えて、Mac OS v10.2に最適化された開発ツールもすべてそろっています。とはいえ、個々の開発者はそれぞれ違うニーズを持っているものです。自分たちにとって最高の技術やツールを使うでしょうね。われわれは、そんな開発に従事する人々に選択の自由を与えることができるということです。アップルのツールをそのまま使ってもいいし、使いやすいようにカスタマイズしてもいい。Mac OS v10.2は完全にオープンソースです。結果的に、開発者にとってはMac OS v10.2が最高の環境であることを実感するのではないでしょうか。

――Mac OSはv10からUNIXベースへと変貌しました。Mac OSがUNIXにならなければいけなかった理由とは何なのでしょうか?

プラバカー氏 Mac OS v10の基本的な設計思想はインターネットに完全対応するOSを作り上げる、ということです。インターネットという技術は、オープンソース、オープンスタンダードを内在化した存在ですよね。オープンだからこそ、強力な堅牢性は絶対に確保しなければなりませんでした。そう考えていくと、UNIXをベースとするのが必然的な選択だったのです。特に、TCP/IPが実装され、いちはやくインターネット対応技術の蓄積を積んだBSD系にこだわる必要がありました。しかし、アップルがUNIXベースのOSを開発するのであれば、革新的なアイデアを実現させなければなりません。過去20年間、UNIX開発者は、開発の生産性をいかに向上させるかに知恵を絞ってきたのですが、明確な回答は得られませんでした。そんな問題をアップルは、UNIXをポータブルな環境で軽快に走らせるという解で答えました。つまり、Mac OS v10は、UNIXに受け継がれるオープン性を取り入れながら、アップル独自の技術が組み込まれた革新的なOSであると断言できます。v10.2はさらなる強化版といえます。

――デスクトップ・コンピューティングに対するこだわりは相当なものですね。

プラバカー氏 UNIXサーバの開発者の多くは、ノートPCを活用しています。大規模な開発でも同じことです。UNIXの開発環境を小さなノートPCで行えるわけです。しかも異なるプラットフォーム間との互換性を可能にするツールも完備しています。問題は何もありませんし、むしろ開発者にとっては利点の方が多いでしょう。

――なるほど。Java開発者にとって、Mac OS v10.2は完璧な環境に聞こえます。ですが、課題もあるのではないですか? 現時点で結構ですので、あなたが考えるMac OS v10.2の課題を教えてください。

プラバカー氏 ないですね。完璧です。と、言いたいところですが、われわれは現状に満足しているわけではありません。私が考える今後のMac OS v10.2の改良点をお話しましょう。

 1つ目は、異なるプラットフォームとのさらなるスムーズな連携機能の強化です。あくまで標準を順守しながら。標準技術は年々まったく新しいレベルで進化を続けています。Mac OSは常に標準技術に対応していかなくてはならないでしょう。また、古いプラットフォームから現行のMac OS環境への移行を支援するブリッジ技術にも磨きをかけていかなければなりません。

 2つ目は、デスクトップ環境の強化を挙げましょう。PCの歴史は浅く、向上の余地はまだまだあります。例えば「Rendezvous」という技術がありますが、これは業界標準のIPプロトコルを利用する新しいネットワークテクノロジで、コンピュータ、プリンタ、そのほかの周辺機器のネットワークを自動的に作成することが可能です。わざわざドライバソフトウェアなどを手動設定する必要は一切ありません。接続という観点からみれば今後のPCはさまざまな機器とのスムーズな連携が必要となってきます。このことは、開発のプロセスを現状よりもさらに効率よく、素早くする技術の開発にもつながってきます。開発者は仕事中、いったい何に時間を消費しているのでしょうか? 必ずしも時間をかけるべきではない作業に時間を取られている可能性は非常に大きい。コンパイル、エディット、デバッグ作業など効率的に行える余地があります。さらに、技術的なドキュメントの充実も課題です。新たな技術は続々と登場します。開発者が理解できるドキュメントを豊富に取りそろえておくことはとても重要です。

 3つ目は、オープンソース・コミュニティとのより密接なコミュニケーションの方法を模索することです。興味深いことに、Mac OS v10以降のユーザーにはオープンソース・ライターが非常に多いのです。

(編集局 谷古宇浩司)

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