サンの次世代CPUは「プリフェッチも投機的実行も解決策ではない」

2003/4/18

米サン・マイクロシステムズでCPUとネットワーク製品部門の責任者 デビッド・エン氏

 サン・マイクロシステムズは、同社のハードウェア・プラットフォームに対する新しいビジョン「スループット・コンピューティング」の内容を明らかにした。その方向性は、マルチスレッド環境を徹底的に拡大する、というものだ。

 米サン・マイクロシステムズでCPUとネットワーク製品部門の責任者デビッド・エン(David Yen)氏は、インテルなどがCPU性能向上の手段としてこれまで追求してきたパイプラインの拡大や投機的実行、といった手段を「いま起こっている(CPU能力の向上を妨げている)問題の解決策としては、もはや役に立たない」と真っ向から否定した。

 エン氏は、次のようなプロセッサに関する4つの事象が同時に発生しているとした。

・インターネット・コンピューティングの拡大による、大規模トランザクションのサーバへの集中
・ムーアの法則で増大するトランジスタを使い切れない
・CPUに対して、メモリが遅すぎる
・CPUの設計の複雑さが拡大している

 これらを踏まえたスループット・コンピューティングのコンセプトは明快だ。サーバの処理性能を向上させることにフォーカスし、それをCPUのマルチコア化とプロセスのマルチスレッド化を拡大することで実現していく。エン氏は、「プリフェッチやパイプライン、投機的実行といった小手先のテクニックでは、これ以上大きなCPUの性能向上は見込めない。CPUのクロックを高めても、メモリのレーテンシの問題は解決しない。これらのトラディショナルな方法はもう通用しない」としたうえで「小手先のテクニックはすべてやめて、その分のトランジスタをCPUコアに回し、マルチコアにする。そのコア上でマルチスレッドを実現する」ことが唯一の解決策だとした。コアはシンプルなものを目指すという。

 この手法は、いい換えれば並列処理の度合いを高めることで時間当たりの処理性能を向上させることを意味している。この場合、メモリの帯域幅への要求が大きくなり、またデータの一貫性が重要なトランザクション処理が苦手、といったデメリットが発生するが、エン氏はいずれも「チャレンジングだが対応可能」だという。

 同社はすでに発表済みの「N1」アーキテクチャで、大量のサーバ、ストレージとそれを接続するネットワークを仮想化するとしている。N1はOSレベルで資源の仮想化を考えたアーキテクチャなのに対し、スループット・コンピューティングはハードウェアレベルでのアーキテクチャであり、両者のレイヤは異なっている。しかしいずれもサーバにおける大規模な処理能力を高めるという点では一致しており、今後両者は密接に連携してサンのサーバ戦略を形作っていくようになるはずだ。

(編集局 新野淳一)

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