モデラー拡大、業務モデルの共有化を目指すNPO

2003/5/20

東京国際大学 教授の堀内一氏

 「モデリング技術者育成」と「業務モデル共有促進」を目的とした非営利活動法人「UML モデリング推進協議会(UMTP/Japan)」が5月19日に設立された。発起人幹事には、東京国際大学 教授の堀内一氏、オージス総研 専務取締役の上野南海雄氏、日本アイ・ビー・エム 常務執行役員の堀田一芙氏の3氏が名を連ねる。彼らがUMTP/Japanの副会長職につき、NTTデータやNEC、富士通、日立製作所、日本オラクル、日本ラショナルソフトウェア、豆蔵、サントリーなどの発起人企業やオブザーバとしての経済産業省などと連携して、国内におけるモデリング技術者の育成や環境づくりを行っていく。なお、現段階では、会長は不在である。

 同協議会の活動は、大きく「UMLなどを前提とするモデリング技術の体系化と普及活動」「モデリング技能の認定とコンテンツの認定」「業種・業務ごとのベストプラクティス・モデルの共有支援」「国際連携(UMTP Asia)運営」の4つに分けられる。
 
 このうち、目的として最も重要なのは、「業種・業務ごとのベストプラクティス・モデルの共有支援だろう」と堀内氏は言う。「UMLを活用したモデリング技術者の数が拡大しても、各企業および業種・業態ごとに、バラバラなモデリング体系を確立していては、普及はおぼつかない」(堀内氏)。確かに、流通、製造、組み込みなど業種・業態ごとに「決め打ち」のモデリング・パターンが存在すれば、パターンを流通させることで、開発作業の効率性向上につながる。結果として、普及は加速し、モデリング技術者の数は拡大していくという相乗効果を生み出せる可能性は高い。

 同協議会のもくろみは、オージス総研が従来無償で行ってきたUML関連技術者認定資格試験を元にした「モデリング技能認定試験」を展開することで、国内におけるモデリング技術者のすそ野拡大を行いながら、UMTP/Japan独自のモデリング技術体系を構築し、業界の“標準”を確立させることだ。事実上の標準という地位を獲得するには、数を集める必要がある。「会員数が100社程度なければ、実質的には機能しない」と堀内氏が言うのも、うなずける。実際、企業が認定試験を受け入れなければ、資格試験そのものが形骸化(けいがいか)する危険性もあり、協議会そのものの存続すら危うくなる。事実、名前だけのNPOの存在は多く見られるのだ。

 UML関連の技術者認定資格試験では、OMGとユーエムエル教育研究所が2003年11月ごろを目処に開始するOMG認定UML技術者資格試験プログラムがある。堀内氏は、「OMGの認定資格はUMLにかかわる認定であり、モデリングというより広範な範囲にわたるUMTP/Japanとは位置付けが異なる」とその差別化点を解説する。UMTP/Japanが定義するモデリングの技能領域では、「UML技能」は最も“簡単な技能”とされ、その上のレベルとして、プラットフォーム依存モデル(例えば.NET、EJBパターンなど)実装技能やメタモデルとモデルの共有技能の修得者が位置し、最上位の技能者として、ドメイン別のモデリング技能修得者が位置する。
 
 結局、UMLはあくまで記法の1つにすぎず、モデリング技術のスキルアップおよび業界全体としてのモデル情報の共有化を実現しようとするならば、業界内での“団結”が必要ということか。今回のUMTP/Japanが国内のモデリング技術者育成にどこまで力を発揮するか、見守っていきたい。

(編集局 谷古宇浩司)

[関連リンク]
日本IBM
オージス総研
ビジネスオブジェクト推進協議会(CBOP)

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