[NetWorld+Interop 2003 Tokyo開催]
“電話機が消える日”を迎えるための課題とは

2003/7/4

VoIP推進協議会 相互接続ワーキンググループ 古井克典氏

 「LANベースでのVoIPの相互接続性はクリアされたが、実運用されているIPネットワークでの050番号の相互接続性は今後の課題である」。VoIP推進協議会の古井克典氏は、同協議会内の相互接続ワーキンググループで行った実証実験の成果を、Networld+Interlop 2003 Tokyoのカンファレンスで発表した。
 
 古井氏によると、今年2月に始まった実証実験にはシスコシステムズや沖電気工業、NECなど10社が参加。各ベンダの電話機とファクスなどネットワークデバイス11機種を用いて、H323パケットとSIP(Session Initiation Protocol)に基づく相互接続実験を実施した。VoIPを使った緊急時通報も含め、「概ね問題がない」との結果が得られたという。

 VoIP相互接続の実証実験は、LAN上で行われた。実験は2つのフェイズで実施。PC同士で音声通話を発信、着信させ、3分間にわたり安定した映像/音声通話が持続できるか、という疎通レベルの検証がフェイズ1。フェイズ2は発信者番号通知、保留・転送、グローバルアドレスでの通信に不可欠となるNAT越え、チケット予約や音声応答装置に使われるDTMF、ファクスなどサービス機能レベルの検証にあった。

 相互接続の実証実験は今後、実際に運用されているIPネットワークを使って、IP電話専用の050番号での相互接続試験に移る。IP電話や携帯電話の異なる事業者間の接続や、110番通報など緊急・重要ライフラインの通信、IPセントレックス機器とのIP-VPN接続の検証、IP-PBXなど大規模ゲートウェイとの接続などを行う予定。古井氏は、「通信事業者やプロバイダにご協力いただき、なるべく早い時期に実験を開始したい」と、参加を呼びかけた。

TAO(通信・放送機構)IPライフラインプロジェクトの野呂正明氏

 VoIPを使った緊急時通報の実証実験は、TAO(通信・放送機構)IPライフラインプロジェクトの野呂正明氏が説明。野呂氏によると、インターネットを使った緊急時の通報は米国ですでに先例があるという。国内でも技術的なレベルでは緊急通報(110番、119番)に必要な基盤技術が確立できたという。緊急連絡には、通報者の電話位置と本人確認が必要。実験では、TAO奈良リサーチセンターに位置情報管理サーバとユーザー情報管理サーバ、通報先情報管理サーバを設置し、実験した。

 野呂氏は、「IPネットワークを使っての実際の緊急時通報の利用では、ISPやIXを経由させるいろいろな方法が考えられる。そのため、サービス実現にかかわる組織が参加し、統合的に推し進めなくてはならない」と課題を挙げた。野呂氏がそのほかの課題として指摘したのは、モバイル対応や、ネットワークにおける優先制御、警察や消防のIPネットワークの整備、国際的な標準化、セキュリティである。

 古井氏と野呂氏のセッションの進行役を務めたVoIP推進協議会の大熊秀明氏は、「VoIPの実運用にはまだ課題は残る」と前置きしながらも、「『電話機が消える日』というセンセーショナルなセッション名も考えた。音声サービスが1つのアプリケーションとして付加価値をもたらすことは明らか」と語り、VoIPの実証実験の成果をアピールした。

(編集局 富嶋典子)

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